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福澤知浩氏 (SkyDrive)のターニングポイント 福澤知浩氏 (SkyDrive)のターニングポイント

航空機・ドローン・自動車エンジニアを中心に、2012年から活動している有志団体CARTIVATORのメンバーを中心に発足したSkyDrive。「空飛ぶクルマ」の開発・製造・販売を行うスタートアップ企業だ。都市部でのタクシーサービス、離島や山間部の新たな移動手段、災害時の救急搬送などにつながるモビリティ分野の新たな動きとして、実用化に向けた期待が高まっている。同社の代表取締役を務める福澤知浩氏に、これまでの人生の道程やキャリアにおける転機についてお話をうかがった。

福澤知浩氏プロフィール

株式会社SkyDrive / 代表取締役

東京大学工学部卒業後、トヨタ自動車株式会社にて自動車部品のグローバル調達に従事。同時に多くの現場でトヨタ生産方式を用いた改善活動を実施。2014年に『空飛ぶクルマ』の開発活動『CARTIVTOR』に参画し、現在、共同代表を務める。2017年に独立、製造業20社以上の経営コンサルティングを実施。2018年に株式会社SkyDriveを設立し、代表取締役に就任。

Message

Interview

「プロジェクトX」に憧れた子供時代。社会に出て初めて、サラリーマン以外の職業を知る。

丸山
はい。僕の父親もサラリーマンで楽しそうだったので、自分もサラリーマンになりたいなと思っていました。でも、そのうちサラリーマン以外の職種があることに気づき、大学4年生ぐらいからサラリーマン以外の人に会い始めました。昔はサラリーマン以外の職業と言えば、TVに出ている芸能人かスポーツ選手くらいしか知らなくて(笑)。そういうすごい人たちしかいないのかと思っていたら、起業家や個人事業主は意外と普通の人達がやっている。そういう世界があることを知って、社会人3~4年目の頃ちょうどCARTIVTORの事業化を考えていた時に色々な人たちと話していたら、40~50代になった時にサラリーマンをしているよりも投資家とか起業家の方が楽しそうだなと。しかもこの人たちは意外と普通だなと思った時に、「あれ?自分は何でこっちにいるんだっけ」と思って、独立しました。
福澤
子供の頃からモノづくりが好きだったんですよね。ミニ四駆をつくったり、家電の仕組みを調べたりとか。小学生の時にNHKの「プロジェクトX」を観ていて、いつか自分も出たいなと思っていました。ただ、自分がモノを作る側なのか、作るのを支える事務方に回るのか?は迷っていて。「プロジェクトX」に出てくる話は大体15年不遇の歴史があってようやく光明が差してくる感じで、完成までのリードタイムが長い。15年はさすがに無理でしょ、と(笑)。しかもやってきたことのうち99%は失敗して、成功した1%にフォーカスされる。とは言えモノづくりは好きなので、高校2年生の時に文理選択をどうするか迷いましたが、文系から理系に移るのは難しいけど、理系から文系へは行きやすいということで理系を選びました。大学4年生の時にロボット開発のテーマで卒論を書いたのですが、プログラムを書いた時に出るエラーの原因を突き止めるのが結構大変なんですよ。僕は飽きっぽいので、これはつらいなと。この頃、機械系の研究をやりつつ、同時にモノづくり経営ゼミに入ってイベントをやっていた中で、色々な人との交流の方が楽しいと感じて、就活で文転しました。文系でモノづくりが分かるのはプラスですよね。「日常のちょっとした幸せ」とか、「日常の彩りが変わるようなもの」をつくりたかったんです。
丸山
日常の彩りですか。良いですね。
福澤
例えば新しい家電が入ると毎日が盛り上がるじゃないですか。そういうのは大体家電とかクルマかなと思って、新卒でパナソニックも受けていたのですが、残念ながら選考で落ちてしまい(笑)、ご縁のあったトヨタに入社しました。パナソニックもトヨタもグローバルで大規模な生産をしていて、あちこちにハッピーを届けている。ソニーや本田技研は良いものをつくりたい、トヨタやパナソニックはハッピーを届けたいという異なるビジョンを持っていて、僕は後者の方に行ったという感じですね。
丸山
なるほど、そういうビジョンの違いがあるんですね。
福澤
はい。僕の父親もサラリーマンで楽しそうだったので、自分もサラリーマンになりたいなと思っていました。でも、そのうちサラリーマン以外の職種があることに気づき、大学4年生ぐらいからサラリーマン以外の人に会い始めました。昔はサラリーマン以外の職業と言えば、TVに出ている芸能人かスポーツ選手くらいしか知らなくて(笑)。そういうすごい人たちしかいないのかと思っていたら、起業家や個人事業主は意外と普通の人達がやっている。そういう世界があることを知って、社会人3~4年目の頃ちょうどCARTIVTORの事業化を考えていた時に色々な人たちと話していたら、40~50代になった時にサラリーマンをしているよりも投資家とか起業家の方が楽しそうだなと。しかもこの人たちは意外と普通だなと思った時に、「あれ?自分は何でこっちにいるんだっけ」と思って、独立しました。

経営コンサルをやってみて、「空飛ぶクルマ」が一番面白いと気づく。これをやるしかない。

丸山
CARTIVTORはどのような経緯で参画されたんですか?
福澤
中村翼さんというトヨタで僕の1年先輩にあたる方がスタートして、皆で何か面白い車をつくりたいよねという話になりまして。スマホなどはイノベーションがあるのに、車だとカイゼンはやるけどなかなかイノベーションが起こらない。だったら自分達でつくろうよという話になって、100くらいアイデアを出してその中で秀逸だった「空飛ぶクルマ」をやることになったんです。ちなみに中村さんとの出会いは、会社の中で少し浮いている人達が集まる非公式の飲み会があって(笑)、そこで知り合いました。そこから少しずつ人が集まっていったという流れです。
丸山
そういう飲み会があるんですね(笑)。100個のアイデアの中で、空飛ぶクルマと競り合うアイデアは他にどんなものがあったんですか?
福澤
突拍子もないもので言うと、地下を掘って潜っていく車、合体できる車、2階建てで住める車とか。「空飛ぶクルマ」と競ったものとしては、着せ替えできる車などがありました。その中で「空飛ぶクルマ」のアイデアが採用されて、まずは目標を決めようと。当時は2014年くらいだったので、6年後に東京オリンピックの年に飛ばす事を目指そうという話になりました。ブルーインパルスのイメージでスタートして、5分の1サイズでつくってみた後にフルサイズでつくり、実際に飛んだのが2017年です。その時点で、2020年まであと2年だけど間に合うのか?という話になりまして。
丸山
資金はそれまでどうやって工面していたんですか?
福澤
初めは皆1万ずつ出し合う感じでやっていました。その後、クラウドファンディングを企画して、2015年に250万集めて。ちょうどその頃、京都に空飛ぶクルマをつくっている方がいたのですが、その方は事故で車椅子生活になってしまったんですね。その方が提供してくださった機体とクラウドファンディングの資金が集まったところに、トヨタが資金を出してくれて、日経朝刊一面で「空飛ぶクルマ」を取り上げて頂きました。そしたら一気に反響があり、2億円まで資金調達できたんです。そこから事業化したらいいのでは?ということで人も集まり、SkyDriveがスタートしました。
丸山
では、資金が2億円集まった段階ではまだトヨタの社員だったのですか?
福澤
集めている途中で辞めましたね。自分の会社(福澤商店)を立ち上げて、経営コンサルをやっていました。僕はサラリーマン企業よりもオーナー企業の方が意思を持った経営をされていて楽しいと感じるので、面白い中小企業のオーナーと仕事をしていました。あとはハードウェアベンチャーに優秀な人がいないのでそのサポートをしようと思って、主にその2軸でやっていましたね。大学時代の師匠の教えとして、いかに少ない労力で付加価値を提供してきちんとカネを集めるかということを言われていたので、それが正義だと思って固定費ゼロでやろうと実践していたんです。
丸山
ということは、トヨタを辞めて独立したのは「空飛ぶクルマ」がやりたかったわけではなかった、と。
福澤
ええ。経営コンサルをやっていた経緯としては、トヨタで僕が担当していたのは現場でのカイゼンやとグローバルでの部品調達だったので、現場・数値・営業のシナジーを多く経験できました。ところが多くの会社で、交渉や営業などの動きとモノづくりが、実はあまりリンクしていない。そこに社長補佐として入っていくのはすごく意味があるなと思ったのです。ただ、1年くらい20件ほど案件をやってみた中で、一番面白いのは「空飛ぶクルマ」だと気づき、これを全力でやっていきたいと思ったのです。
丸山
トヨタから独立してコンサルをスタートした際、立ち上げはスムーズだったんですか?
福澤
ありがたい事にスムーズでした。元々土日に副業として布団屋さんやIoTベンチャーさんのカイゼンなどを無償でやっていたらどんどん成果が出ていたので、これはいけると思って。世の中の多くの人は効率化だけを求めてつまらない人生を送っているけれども、理想としては仕事をいかにシュッと効率よく終わらせて余暇のためにどれだけムダな時間を捻出できるかだと考えていて、そういうワークショップをよくやっていました。皆でうどん屋さんに集まって昼ご飯を食べながら、その店のオペレーションの改善提案をつくるとか。そういうことをやっていたら「うちもやってよ」と続々と引合いが来まして。これはもう趣味ですね。趣味が本業になった感覚です。
丸山
そういうネットワークからのスポンサーやメンバーもいらっしゃるんですね。CARTIVTORのメンバーもデザイナーや整備士など、かなり多彩ですごいなと。
福澤
こちらが色々やっていると、自然と色々な手段でメンバーが集まってきます。
丸山
SkyDrive一本でやろうと決めたときはどんな感じだったんですか?
福澤
福澤商店をやっていたときも、半分くらいはCARTIVTORをやっていました。クラウドファンディングと日経朝刊に載ったことから一気に資金調達して組織化したということが、CARTIVTORが飛躍的に伸びたポイントだったかなと思います。それが盛り上がってきていよいよ実際に飛ぶようになったので、これはもう法人を立ち上げるべきじゃないかと。現在のメンバー内訳としては、SkyDriveの社員が30名、CARTIVTORが70~80名ですね。

SkyDriveでやると決めたのは、コップから水が溢れた感覚。直感で決断すれば、意外なところに行けるかもしれない。

丸山
改めて振り返ってみて、ここがターニングポイントだったなというのは?
福澤
「空飛ぶクルマ」のターニングポイントで言えば、1/5機体ができた、クラウドファンディングをやった、日経に載った、フルスケール機が安定して飛んだことですかね。その次が今年の夏のデモフライトで、皆の前で飛ぶこと。自身のターニングポイントは、CARTIVTORに入ったこと、会社を辞めたこと、SkyDriveでフルコミットしてやると決めたことです。これまで身軽にやってきたのに、借金や従業員などの固定費を抱えるという意味では、初めての事なので、大きなハードルはありました。では何で決意したかと言うと、例えるならコップに水が注がれる感じで、こっちかなというのは少しずつあったんですけど、最後はコップから水が溢れて決めた感覚です。何か自分の中でモヤモヤしていて、空飛ぶクルマの開発を加速するために法人化が必要だと気づいたんですね。
丸山
見方を変えると、そのすべてを解決する方法が見つかったということですか?やろうかやるまいかではなく、今まで首を突っ込んできたことについて真剣に考えてこられて、どうしたらそれらを一気に解決できるんだ、と。
福澤
そうですね。その時別件で合宿をしていたのですが、「これだ!」と気づいて走って家に帰ってしまいました(笑)。独立してから平日の半分以上でCARTIVTORのプロボノ活動をやるということも、どう考えても非効率なのですが、それも大きなディシジョンでしたね。
丸山
お話をお聞きしていると、パラダイム転換されてやっている感じですね。また、誰かの話を聞いていいなと思ったらすぐ自分の中に採り入れる、ベースの素直さがあるようにお見受けします。
福澤
はい、パラダイム転換は大事です。それは色々な人に言われたことでもあります。 また、身構えると疲れてしまうので、基本は素のままでいくようにしていますね。
丸山
一見、想いだけで突き進んできた理系社長のようにも見えますが、いわゆるベンチャー系のネットワークをつくってこられたんですね。
福澤
本当にご縁には恵まれてきたので。でも、ベンチャー経営者がピッチイベント等でプレゼンする時って皆白パンでやってますけど、俺は似合わないな、と(笑)。自分は理系社長でいこうと思っています。
丸山
今年夏のデモフライトで飛んだ後、2023年に事業化、2030年の本格普及に向けた準備も現在進んでいる状況ですか?
福澤
はい、そこが一番ですね。今まさに注力しているところです。航空機産業のブレークスルーを目指していければと思っています。
丸山
最後に、自分にとってのターニングポイントをどう捉えてどう行動すれば良いか、 読者の方々にアドバイスをいただけますか?
福澤
僕は直感を重視するタイプです。気持ちのままに行動するし、ディシジョンはすべて直感ですね。結局どこまで考えても決められないので。ハイタレントの人たちの多くはベースとして考えることに重点を置いているので、直感とフィーリングで決めたらいいと思いますね。そうすれば考えていたものとは全然違う方向に行って、意外なところに行けるかもしれない。僕自身も1年後にはどうなっているか分からないですし(笑)。

構成:神田昭子
撮影:櫻井健司

※インタビュー内容、企業情報等はすべて取材当時のものです。

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