ハイクラス転職のクライス&カンパニー

「やらない」理由は、時間が経てば増えていく。「やりたい」と思った瞬間に、行動を起こすべき。

公開日:2017.10.17

日本の農業の抱えるさまざまな課題を、IT技術を用いて解決を図っていくことをミッションに掲げ、2016年11月にビビッドガーデンを創業した秋元里奈氏。現在、オーガニック農作物を栽培している生産者と消費者をダイレクトに結ぶ「食べチョク」のサービスが好評を博している。秋元氏はなぜ「農業」の分野で起業を決意したのか。そのターニングポイントを振り返っていただいた。
秋元里奈氏のプロフィール写真

秋元 里奈 氏プロフィール

株式会社ビビッドガーデン / 代表取締役社長

神奈川県相模原市の農家に生まれる。慶應義塾大学理工学部を卒業した後、株式会社ディー・エヌ・エーへ入社。webサービスのディレクター、営業チームリーダー、新規事業の立ち上げを経験した後、スマートフォンアプリの宣伝プロデューサーに就任。2016年11月にvivid gardenを創業。

Message

志あるハイクラス転職を、クライスと クライス&カンパニー

Interview

内向的、でも負けず嫌い。そんな自分に大学時代、大きな転機が訪れた。

――
秋元さんは、どのような幼少期をお過ごしになられたのですか。
秋元

幼い頃は病弱で、内向的な性格でした。人とコミュニケーションを取るのがあまり好きではなく、とにかく漫画が好きで、小学生の時は教室でずっと漫画を描いていました。一人でコツコツと物事に取り組むことが好きでしたが、でも負けず嫌いなところがあって、自分が周囲と比べて劣っていると思うと必死になって挽回しようとするタイプでしたね。いま思うと、自分より優れた人がいると「私も負けてられない!」と奮い立って自分を成長させるのに喜びを感じていたんでしょうね。あと実家が農業を営んでいたので、食べ物に関してはうるさく躾けられました。

――
生来「負けず嫌い」でいらっしゃるのですね。
秋元

中学に入学した時も、病弱な自分を変えたい、身体を鍛えたいと思って、それまでまったく縁がなかったスポーツを始めました。身長が低かったにもかかわらず、敢えてバスケットボール部に入部して……おかげで身長が伸びました(笑)。

――
秋元さんはご自身がやりたいと思うことに対して、思いきり振り切るタイプなんですね(笑)。高校や大学もご自身の意思でお決めになられたのですか。
秋元

ええ。私の親はどちらかと言えば放任主義で、「自分で考えて好きなことをやればいい」というスタンスでした。高校受験は比較的偏差値の高い学校にチャレンジしてギリギリで入学しましたが、勉強でも「他人に負けたくないという」という気持ちが湧いてきて、とにかく必死に勉強をし、最終的にはなんとか学年で上位になるところまでいきました。その頃から将来についても意識しはじめ、実家が農地などの不動産を保有していましたので、そうした資産を活用する知見をつけたいと金融系の仕事を志すようになりました。

――
秋元さんは高校卒業後、慶應義塾大学の理工学部に進学されています。金融を専攻するなら経済学部に進むのが一般的だと思うのですが、こちらを選ばれたのはどうしてですか。
秋元

高校時代はとにかく成績順位をひとつでも上げることに一生懸命でしたので(笑)、自分が得意だった物理の科目が履修できる理系のコースを選びました。そのうえ経済学部は理系だと勘違いしていて、いざ受験となると経済学部の試験科目に物理がないことが判明して……それで先生に相談したところ、慶應の理工学部なら金融工学が学べるところがあり、そこはいわば「理系の経済学部」だとうかがって志望したのです。

――
大学時代はどのように過ごされたのでしょう。
秋元

金融工学の研究に取り組みながら、学園祭の実行委員会に興味を覚えて参加したのですが、それが私にとって大きな転機になりました。それまで私はあまり人の前に出るのが好きではなかったのですが、同期のメンバーがみな委員会に来なくなってしまって、私がリーダーを務めざるを得ない事態になりました……本当に嫌で不安しかなかったのですが、自分がやるしかない状況に追い込まれたことで腹を括り、「どうせやるなら、これまでの学園祭よりも面白いことを企画してやろう」と決心しました。そこで、自分発信で企画を実現していく面白さを存分に味わって、その経験から自分の将来を見つめ直すようになったのです。

――
内向的な性格だった秋元さんが、学園祭実行委員のリーダーを務められたことに驚きですが、その経験が将来を見つめ直すきっかけになられらたのですね。
秋元

はい。社会に出てからも、自分のアイデアを自分で形にする醍醐味を堪能したいと強く思うようになりました。それは必ずしも「金融」でなくてもいい。よく就活の面接で「5年後どうなっていたいか」という質問を受けますよね。でも、5年後の自分なんてわからない。事実、大学時代の自分と5年前の高校時代の自分を比べると、性格や思想などまるで変わっていますし……ですから、金融のように特定の分野にとらわれず、将来自分がやりたいと思ったことを自分でできる力をまず身につけたいと思ったのです。

ベンチャーでの刺激的な日々。でも本当に「やりたいこと」ではなかった。

ベンチャーでの刺激的な日々。でも本当に「やりたいこと」ではなかった。

――
秋元さんは新卒でDeNAに入社されていますが、こちらを就職先に選んだのはどうしてですか。
秋元

将来、自分がやりたいと思ったことをできる力を身につけるには、自分が主体的に動けるようになるまで時間のかかる大企業ではなく、早いうちから責任をもって仕事ができるベンチャーのほうがふさわしいと考えました。なかでもDeNAを選んだのは、会社説明会でお会いした創業者の南場(智子)さんの話にとても惹かれたからです。南場さんはマッキンゼー出身で、コンサルタント時代に経営者のすぐそばで戦略立案などの経験を積んだものの、いざ自分が起業して経営に携わると、最初はうまくいかないことが多かったとのこと。「ただ見ているだけではダメで、自分で経験しないと本当の意味でスキルを身につけることはできない」とおっしゃられていて、まったくその通りだと非常に触発されたんですね。若いうちに厳しい環境、成長できる環境に身を置かないと、きっと5年後に大きく差がつくと思い、南場さんへの憧れもあってDeNAを志望しました。

――
DeNAには3年半ほど在籍されていたとのことですが、当時を振り返っていかがですか。
秋元

想像以上に成長できたと感じています。DeNAは社員に対して「成功確率50%の仕事を委ねる」と聞いていたのですが、まったくその通りで、常にチャレンジングな仕事の連続でまったく飽きることがありませんでした。3年半で4つの部署を経験しましたが、なかでも印象に残っているのが、3部署目に配属された新規事業を手がけるセクション。マネタイズで苦しんでいる状況で異動し、そのサービスの営業・事業企画を任されました。そもそもマネタイズするための機能の企画から着手し、サービスのディレクション、テレアポ、広告提案…と、とにかく多岐に渡る経験を積みました。サービスを存続させるためにプライドも何もかもかなぐり捨て、がむしゃらに仕事に取り組んだこの時期は、一番成長実感がありました。

――
学園祭やDeNAでの経験を通して得られた、最も大きな気付きはどのようなものでしょうか?
秋元

ビジョンや思いの強さがもつ力、でしょうか。私はあまり駆け引きが上手な方ではないので、仕事を進めていく上ではとにかく自分の思いを一生懸命伝えようと努めてきました。そうしていくうちに、損得ではなく、思いに共感してくれる人のほうが、長期的にパートナーとしていい関係が築けると気づいたのです。大学時代の学園祭の企画運営もそうでした。私の能力を超えたタスクにボロボロになりながら取り組んでいたのですが、それでも「学園祭をこうしたい」という思いを訴えて続けていると、まわりが見かねて助けてくれたんです(笑)。ですから起業してからも、ビジョンの力を信じ、思いを強く周囲に発信し続けることにしています。結果的に、少しずつですが共感してくれる人が集まってきてくれました。

――
素晴らしい支援者、仲間を引き寄せる重要なカギは思いを発信し続けることだったということですね。そんな秋元さんが起業を決心されたきっかけを教えていただけますか。
秋元

DeNAでの毎日はとても充実していましたが、3年ほど経った頃、周囲で転職して新しいチャレンジをする人も増えてきて、私もふと自分を振り返ることがあったんですね。就活の時、「やりたいことができる力をつけたい」と思ってDeNAに入社したわけですが、ではその「やりたいこと」って何なのだろう?と。DeNAでは4つの事業を経験したものの、どれも夢中になれたのは仕事が面白く、また一緒に頑張れる仲間がいたからで、その事業領域だけに一生を捧げられるかといえば、そこまでの確信は持てていませんでした。もっと自分の世界を広げたいと、社外に目を向けて異業種交流会などにも参加するうち、「農業」という軸が自分の中に現れてきたのです。実はそれまで農業をビジネスとして捉えたことはありませんでした。実家は農家だったものの、親からは「農業は儲からないから継ぐな」とずっと言われていて、まったく意識したことがなかったのです。

未知なるものが怖いだけで、自分が思うほどリスクはない、と気づいた。

未知なるものが怖いだけで、自分が思うほどリスクはない、と気づいた。

――
秋元さんが、親御様から継ぐなと言われていた「農業」をあらためて志すようになられたのは、どのようなお考えからですか。
秋元

異業種交流会で知り合った方から「農地を持っているのなら、それでビジネスをやってみれば」とアドバイスいただいたんですね。都会で暮らす普通の人は農地などを持っていないわけで、それは大きな差別化要因になると。なるほど、と思って農業のことをあらためて深く調べていくと、この業界自体に非常に興味を覚えました。生産や流通などいろいろと課題を抱えているのですが、それが逆に面白そうだと。何十年も前から同じような問題が指摘されていて、課題は明確なのにまだ誰も解決していない。もちろん、問題の原因が複雑に絡み合っていて、そう簡単に解決できるものではないのですが、ハードルが高いからこそチャレンジしがいがあると感じ、この産業を究めたいという思いが湧いてきたのです。

――
起業を決断し、DeNAを退職するのに迷いはありませんでしたか。
秋元

迷いはありました。最初はDeNAでキャリアを重ねながら週末起業も考えたのですが、私は器用なほうではないので、二つのことを並行してやるのは頭が切り換えられず、やっぱり無理だなと。それで、すでに起業している知人に相談したらあっさり「辞めちゃえばいいじゃない」と……そうはいっても会社を辞めるのは抵抗がありますし、ネガティブな反応をしていたら、その方が「周りの人に迷惑をかけるとか、今やるタイミングじゃないとか、秋元さんはいろいろと『やらない理由』を並べてるけど、『やらない理由』はこれからもっともっと増えていくよ。いまやらなかったら、いつやるの?」とおっしゃられて、確かにそうだなと。その方とは1時間ほど話をしましたが、最後には「退職して起業をしよう」という気持ちに傾いていました。そして一週間気持ちが変わらなかったら辞めようと思い、本当に変わらなかったので決意した次第です。

――
やはり人はどうしてもリスクを先に考えがちです。その知人の経営者の方と話をされたことで、秋元さんの心境に変化があったのですね。
秋元

私も当初は「自分に経営なんてできない、そういうタイプじゃない」と思っていました。でも、その方と話をするうちに、起業することは自分が考えているよりも難しいことではないのかもしれない。未知のものが怖いだけで、単純に知らないだけではないかと思ったんですね。たとえば「失敗したらどうする?」とか「収入はどうなる?」とか、不安に思っていることはたくさんあったのですが、実際に起業された方に何人かお会いして話をうかがうと、事前にきちんとケアしておけばリスクは最小限に抑えられることがわかりました。経験していないから漠然とした不安があるわけで、経験者からすればどんなリスクも想定さえしておけばゼロには出来ないが、限りなく小さくすることは出来る、と。それが判って心が軽くなりました。あと、最終的に背中を押してくれたのは、DeNAの先輩からの「失敗しても死ぬわけじゃないから。やりたいことを思いっきりやった方が良い。」という言葉。そういった助言を受け、「どんな状況に陥っても、最低限生きていくことだけ意識すれば、まあなんとかなるだろう」と思うようになりました。やらずに後悔するよりもまずやってみようと、このビビッドガーデンを立ち上げたのです。

――
実際に起業されてご自身の会社を率いているわけですが、いまどんなお気持ちですか。
秋元

起業してもうすぐ1年が経ちますが、あっという間でしたね。DeNAの3年半も濃密でしたが、それ以上に濃厚な毎日を過ごしています。当初は人も集まらず、右も左もわからなくて苦しい思いもしましたが、進むべき方向だけを見据えてがむしゃらに頑張り、ようやく「これなら走れる」と思えるようになってきました。やはり大切なのは、揺るがないビジョンを示し続けること。そこに共感した仲間が最近加わって、先の事業のことも考えられるようになりました。いま、日本の農業はあまりに生産者の負担が大きい構造になっており、それを変革して生産者がきちんと儲けられる仕組みを創っていきたい。いま展開している「食べチョク」のサービスを軸に、これからひとつひとつ課題を解決していきたい。何年、何十年かかっても、必ずやり遂げてみせます。

――
最後に、かつてのご自身のように「やりたいこと」にチャレンジしたいという思いをお持ちのみなさんにメッセージをお願いします。
秋元

起業する前の私がそうでしたが、何かチャレンジしたいことがあっても、人は無意識のうちに「やらない理由」を探しがちです。でも、それは時間が解決してくれることではない。むしろ時間が経てば経つほど「やらない理由」は増えていくと思っています。ですからぜひ「やる理由」を強く意識してみてほしい。「やらない理由」というのは実は固定概念だったりすることも多くて、たとえば起業を志向しているものの「まだ経営者になるには実力がともなっていない」などと思っていたら、きっといつまで経っても決断できない。私自身もまだ駆け出しで偉そうなことは言えないですが、経営力は特に、実際に経験しないと力はつかないと思います。「やりたい」と思った時が行動を起こすベストタイミングで、強い思いをもち、それを周囲に発信し続けながら一歩踏み出せば、必ず何とかなるものと私は信じています。

※インタビュー内容、企業情報等はすべて取材当時のものです。

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インタビューを終えて

「素直でピュアな負けず嫌い」。秋元さんから受ける印象は、世の中一般で言われる「負けず嫌い」という言葉からくる印象と大きく異なっています。自身の目標やビジョン、夢を常に周囲に発信する秋元さんは常に多くの支援者に囲まれていらっしゃいますが、人をそうさせるのは、秋元さんの素直さとピュアさなのではないかと感じます。目標のためなら、人の意見に耳を傾けられる、人の助言をフラットに聞くことが出来る、自分の考えを一旦横に置くことが出来る、そして常に笑顔。自称負けず嫌いでいらっしゃる秋元さんは、そんな方なのだなと何度かコミュニケーションをさせていただくなかで感じとることが出来ました。 また、今回のインタビューで大きな学びとなったのは「事前にきちんとケアしておけばリスクは最小限に抑えられる。ゼロには出来ないが、どんなリスクも想定さえしておけば限りなく小さくすることは出来る」という秋元さんの気付きでした。やりたいことなのにリスクがチラつくからやらない。ではなく、やりたいことは、やるという前提に立ち、リスクを小さくする方法を考える。そう考えるだけで秋元さんがおっしゃられるとおり心が軽くなる感じがしました。不確実で予測不能なこの現代においてリスクゼロの生き方はありません。であれば秋元さんが言われるように、「やりたい」と思った瞬間に行動を起こしていくことが後悔なく生きていくために大切なのだと、あらためて感じさせられるインタビューでした。ありがとうございました。

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