ハイクラス転職のクライス&カンパニー

ターニングポイントはいまこの瞬間にも訪れている。自分の好きなことを逃さず、シンプルにアプローチすべき。

公開日:2015.07.03

並木裕太氏のプロフィール写真

並木 裕太 氏プロフィール

株式会社フィールドマネージメント / 代表取締役

慶応義塾大学経済学部卒。ペンシルバニア大学ウォートン校でMBAを取得。2000年、マッキンゼー・アンド・カンパニー入社、09年に独立、フィールドマネージメントを設立。エレクトロニクス、航空、インターネット、自動車などの日本を代表する企業の経営コンサルタントを務める。スポーツの分野では、野球において、プロ野球オーナー会議へ参加、パ・リーグのリーグ・ビジネス、ファイターズやイーグルスなど多数のチームビジネスをキーマンとともにつくり上げており、サッカーでは、Jリーグのリーグ・ビジネス、ヴィッセルやベルマーレなどのチームビジネスのサポートを続けている。日本一の社会人野球クラブチーム「東京バンバータ」の球団社長兼GMでもある。

Message

志あるハイクラス転職を、クライスと クライス&カンパニー

Interview

アメリカから送った一本のメールで、新球団立ち上げに関わることに。

――
並木さんは、スポーツビジネスの分野でも名前が知られていて、「日本プロ野球改造論」などの著書も出されています。プロ野球界に関わることになられたのは、どういう経緯だったのですか。
並木

契機となったのは、2004年に起こった球界再編騒動でした。その頃、私はMBA取得のためにアメリカに留学していたのですが、日本のネットニュースを見ていたら、どうやらプロ野球界が大変なことになっている。近鉄が親会社の経営難からオリックスと合併することになり、球団がひとつ減ることになって、そこにライブドアの堀江さんが新規参入をぶち上げた。でもそれは失敗に終わって、その後、楽天の三木谷さんが名乗りを上げて承認されて、新球団が生まれることになった。当時の私はコンサルタントとして自信があったわけではないのですが、それでも問題を分析して解決する力は、普通の人に比べれば少しはついてきたのかなという感覚もあって、役に立てることもあるんじゃないかと楽天にメールしたんです。もともと野球漬けの人間でしたし、心の中では「いつかは野球に関わりたい」という思いもありました。でもどこにアプローチすればいいのかわからず、とりあえず楽天のECサイトのお客様窓口に自分の考えをまとめてメールを送ったんですけど(笑)。

――
留学先から送ったメールがきっかけだったんですね。楽天の球団関係者に特にコネクションがあったというわけでもなく……。
並木

ええ、完全な飛び込みです(笑)。でもすぐに初代の球団社長の島田亨さんから『一緒に球団を創りましょう。早く仙台に来てください』と返信が来て、そこから楽天イーグルスとのおつきあいが始まりました。その時、「新球団が創設される」というニュースを見た人は日本中にたくさんいたと思うんですが、そこで私は敢えてメールを送るというアクションを起こした。球界再編を、自分の好きな野球に関われるチャンスだと捉えて、いわばターニングポイントを自分から掴みに行ったわけです。

好きなことを素直にアピールできる人間は、周りから魅力的に映る。

好きなことを素直にアピールできる人間は、周りから魅力的に映る。

――
楽天イーグルスとのお仕事はいかがでしたか。
並木

面白かったですよ。当時の球団社長の島田さんとも議論しながら、まず球場の座席シートのプライシングをかなり大胆に変革したんですね。従来、シートの価格はバックネット裏、内野席、ファール席、外野席の4つの分け方しかなかったんですが、球場を観察してみると、自軍のダックアウト上の内野席に座りたがる人が多くて、特定のエリアに観客が偏っていたんですね。それで、入場者のお客様にアンケートを取って満足度調査を実施してシートごとの価値を算出しました。それを相対化すると、マウンドとバッターボックスの中間地点から円を描くようにバリューは減り、そして自軍のダックアウトがある側の内野席のほうが価値は高いなどという傾向が見えてきた。それで楽天のスタジアムでは、シーズンチケットを世界で初めて左右非対称の価格設定を採用したんです。さらに、相手チームや天候などの要素に応じて価格が変動するダイナミックプライシングも導入。ホテルの客室や航空機の座席は、シーズンや残数に応じて価格が変わりますよね。あれを球場で展開するとどうなるかをシミュレーションして、結果、現在では40~50のパターンの価格帯を設定して運用しています。そのほか、ファンクラブやスクールの運営にも関わりましたし、何年もかけて楽天野球団のみなさんと一緒にゼロから新たな球団を作り上げていった感じです。

――
まさにそれは、フィールドマネージメントで並木さんが掲げていらっしゃる“STEP ZERO”からのコンサルティングですね。この楽天イーグルスとのお仕事では、当初からそれを意識されていらっしゃったのでしょうか。
並木

この案件に関わるまで、自分自身にかなり迷いがあったんです。実は私、野球をやっていた時はかなり傲慢な性格でして(笑)、審判の判定に舌打ちとか平気でやっていましたし……でも、マッキンゼーに入社してみると、かつて学生時代に自分が見下していたようなガリ勉君たちにまったくかなわない。真っ直ぐで勝負しても全部打ち返されるような有様で、マッキンゼーのルールのもとではまったくパフォーマンスが出せなかった。それでスタイルを変えなければと思ったものの、何を自分の軸にすればいいのかよくわからない。だからアメリカに留学するまでずっとモヤモヤしていたのですが、楽天の球団立ち上げに関わって気づきがあったんです。楽天野球団の創設メンバーには百戦錬磨の起業家たちが揃っていて、そしてみなさん高い志をもって臨まれていました。そうした方々とおつきあいしていくうちに、コンサルファームとして正義だと考えていることと、クライアントが望んでいることの間に時にギャップがあることを感じたのです。そして、相手が望んでいることに向かって真っ直ぐ接していると、ロジックだけではない形で、もっとエモーショナルに役に立てることがある。この仕事でそう実感してから、自分のスタンスが明確になりました。クライアントが何を大切にされているのかを、一番理解できる人間になろうと。

――
この仕事を経験して、ご自身が抱えていた迷いが吹っ切れたと?
並木

そうですね。論理だけでなく感情でもおすスタンスを作ってからは逆に目立ちました。たとえるなら、剛速球ピッチャーばかり揃っているところに、一人だけチェンジアップで三振を取れるようなタイプが現れたから、クライアントから面白がられて「並木君にもう一回頼もう」と仕事の輪が広がってきた感じです。

――
並木さんはイーグルスのほかにも、ファイターズをはじめ多くの球団の球団運営のコンサルティングも関わっていらっしゃいますよね。さらにオーナー会議にも招待されて、メジャーリーグと比較して日本のプロ野球の未来について提言されたとのことで、たいへんなご活躍ぶりです。
並木

アメリカから送った一本のメールで、12球団のオーナーの前で自分の考えを発表できるまでに至ったわけですから、我ながら驚きますよね(笑)。でも結局、「私はこれが好きです」と素直に言える人が強いんだと思うんです。私は野球を含めてスポーツが大好きだったから、それを素直にアピールした。すると、プロ野球界と関わることができ、プロ野球でやっていることはJリーグでも活かせるだろうと声がかかって、ヴィッセル神戸や湘南ベルマーレの運営にも携わり、Jリーグのチェアマンにもお会いできた。『あいつ、なんだかんだ言ってスポーツ好きだから』っていうのが、スポーツ界のいろんな方がおつきあいしてくださる一番の理由なんじゃないかと思いますね。

ターニングポイントは自分で創り出す。いつも「決勝戦」のつもりで。

ターニングポイントは自分で創り出す。いつも「決勝戦」のつもりで。

――
並木さんのお話をうかがっていると、「夢や欲求に素直に生きる」ことがすべての起点になっているようにお見受けします。
並木

おっしゃる通りです。エイベックスの仕事を手がけることになったきっかけもそうですね。エイベックスの知り合いの方から、毎年夏に開催している野外ライブイベントのa-nationに招待していただいて、関係者席で観ていたんです。でも、ビジネス上のつきあいでそうした席に招待される人って、普通少し顔を出したら帰るんですよ。でも私はとても楽しくて、結局最後まで観ちゃって……本当に感動したんですね。終わってからもそのまましばらく席に残って、「これだけ大勢の人を集めて歓喜させられるエイベックスはやはり凄いな」などと感慨に浸っていたら、気がつけば観客もほとんど掃けてしまって、スタジアムの照明もすっかり元に戻っていた。そんな私の姿を見かけたエイベックスの役員の方が「アイツは本当にライブが好きなんだな」と。後から聞いた話なんですが、その方が「偉そうなコンサルに頼むよりも、アイツと仕事をしたほうがきっと本気でエイベックスのことを考えてくれるはずだ」って、それで私を指名してくれたんです。

写真
――
でも、自分の好きなことに素直に生きようと思っても、いろいろなものに縛られてなかなか踏み出せない人が多いのも事実です。
並木

それなりに名前の通った企業で活躍されている方であれば、会社を辞めて自分の好きなことを追求して、それがたとえ失敗したとしても、また同じような場所に戻れると思うんですよ。むしろ最近は、そうした失敗経験が積極的に買われて評価される傾向にあるので、きっとスカウトされてまた活躍できる場所は見つかるはず。特にリスクはないですよ。まあ、大企業に身を置くことでしか果たせないスケールのビジネスをやりたいのなら留まるべきだと思いますが、やりたいことができなくて悶々とするのは最悪です。 リスクをミニマイズして大企業で安定的にキャリアを積もうという考え方は、実は向こう20年30年で見た時のキャリアのリスクをマックスにしているんです。積極的に行動を起こしたほうが、長期的なリスクは下がる。

――
なるほど、ターニングポイントは自分で創り出していかなければならないんですね。突然、大きな転機が訪れるなどということはない、と。
並木

実は今日これから、あるファッションブランドの来期の展示会に招待されて出席するんです。有名なサーフブランドの“STUSSY”の創設者であるショーン・ステューシーが新たに立ち上げた“S/DOUBLE”というブランドなんですが、私は高校生の時にロスに住んでいて“STUSSY”が爆発的に流行っていたんですね。私もファンでした。でも、このブランドを創ったステューシーは93年に突如引退してしまった。というのも、あまりに事業が拡大してしまったために、世界中のバイヤーから、自分が作りたいものよりも、去年売れたものの焼き増しを求められるようになって、そんなクリエイティブの欠片もない仕事は御免だと。そんなステューシーに私が惹かれていて、それはブランドに思い入れがあるというのもそうですが、かつて雑誌のインタビューで彼が『好きなことをシンプルにとらえて、クリーンにアプローチしていれば、チャンスは必ず巡ってくる』と語っていて、それが私にとても響いたんですね。そのステューシーが20年ぶりぐらいに復活して、わざわざ日本でショップを開いているのです。東日本大震災からの復興を応援したいという気持ちもあったようですが、私のようにかつて“STUSSY”のファンであった大人が着られるような服を日本で創りたいと。私としては、ぜひ憧れのステューシーの力になりたい。そろそろ私自身も次のターニングポイントを創りたいと思っていたところなので、この展示会に「決勝戦」のような意気込みで臨み、ステューシーと会ってこようと思っています。

構成: 山下和彦
撮影: 上飯坂真

※インタビュー内容、企業情報等はすべて取材当時のものです。

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インタビューを終えて

並木さんは常に自然体で、一貫して「夢や欲求に素直な」生き方をされている方でした。またきっかけは小さな出来事であっても、そこに「常に決勝戦という緊張感と意気込みで臨み自らターニングポイントを創りだす」、という確固たるポリシーを持たれていらっしゃいました。 「積極的に行動を起こしたほうが長期的なキャリアリスクは下がるんですよ。」というお話もありましたが、並木さんはキャリアリスクを下げるために行動を起こしているのではなく、それはあくまで自分の気持ちに素直に、かつ相手が望むことに純粋に応えたいという想いの自然な現れでした。 しがらみ、制約等々色々なものに心を縛られ、悶々とした方々を目にしがちな現代にあって、少年のような純粋な眼差しで夢を追う並木さんの生き方に、とても清々しい刺激をいただきました。積極的なチャレンジはリスクを背負うものではなく、幸せを得るための自然な行動、という大切なスタンスを学ばせていただきました。ありがとうございました。

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