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Turning Point 転機をチャンスに変えた瞬間~ビジネスの現場から~

ものがあふれている世界で新しいものをつくる意味を問う 真・善・美を追求して ものがあふれている世界で新しいものをつくる意味を問う真・善・美を追求して : ビーサイズ株式会社 代表取締役社長 八木 啓太氏

一人で最終製品のものづくりに挑み、最小の構造で最高の光をもたらすデスクライト「STROKE」が国内外のデザイン賞を受賞し、一躍注目を集めたのがビーサイズ社長の八木啓太さんである。新しい価値と美しいデザインを提示するものづくりを斬新なやり方で成功させた背景には、どんな転機と決断があったのだろうか。
ビーサイズ株式会社 代表取締役社長 八木 啓太氏

八木 啓太氏

1983年生まれ。大阪大学工学部電子工学科卒。同大学院電子工学専攻修了。大学時代から独学でデザインを会得しコンテストで受賞を重ねる。大学院修了後の2007年4月富士フイルムへ入社し、医療機器の機械設計に従事。2011年1月末に同社を退社。同年9月ビーサイズ株式会社を設立し、代表取締役社長に就任。 同年12月に最初の製品であるLEDデスクライト「STROKE」を発売し、経済産業省のグッドデザイン賞、世界的に権威ある独red dot design awardを受賞する。

「格好いいもの」をつくるには何が必要か?

「ひとり家電メーカー」として注目を集めている八木さんですが、子供のころからものをつくるのが好きだったのですか。
工作がものすごく好きでした。いつも外を駆けずり回っている子供だったのですが、雨の日は家の中で工作するのが好きで、つくったものを家族や友人に見せると「これ、どうやってつくったの?」「とても面白いね!」と喜んでくれました。それがまた嬉しくて、もしかすると何かものをつくって誰かが喜んでくれるという成功体験が潜在的にあったことが、自ずといまの道を選ばせたのかもしれません。
ものづくりを志すようになったきっかけは何でしたか。
現在のような製品開発をやりたいと思いはじめたきっかけは、初代iMacです。スティーブ・ジョブスがアップルに復帰して最初に出した、スケルトンボディのパソコン。当時高校生だった私は強い衝撃を受けて、「自分もこんな格好いい製品をつくりたい」と思ったのがものづくりを志す出発点になりました。それでいろいろ調べていくとダイソンの掃除機やバング&オルフセンのオーディオ機器など、世の中には格好いいプロダクトがあることがわかりました。では、どうすれば自分がそうした製品をつくれるようになるのか。何を学べばいいのか図書館に行って調べると、どうやら電子工学と機械工学、デザインの三領域が必要だと。でも、電子は電子、機械は機械、デザインは芸大と分かれていて、三つを同時に学べる大学や学部はないんです。
ものづくりに目覚めたのが、ちょうど大学進学の時期だったのですね。
そうです。仕方がないので一つずつ学ぼうということで、大学では電子工学を専攻することにしました。一方でデザインは独学することにして、雑誌や美術館で世の中でどんなデザインが評価されているのかを勉強したり、インターネットでデザインコンテストを調べてCGで描いたスケッチを応募したりして、自分なりのデザイン感を磨いていきました。
残るは機械工学ですね。
大学と大学院で六年間電子工学を勉強したので、就職した会社で機械工学をやろうと思いました。それで、普通なら専攻した電子工学で企業の新卒採用に応募するのですが、私は機械工学で就職活動をしたんです。ところが「機械工学をやらせてください」といっても、やらせてくれる会社は全然見つかりませんでした。学生時代の同級生はどんどん就職先が決まっていくなかで、自分はまったくうまくいかなかった。難しい選択をしたので取り残されちゃったんですね。そこであきらめて、六年間勉強してきた電子工学で応募すれば簡単に就職は決まったと思うのですが、どうしても自分が考えるものづくりへのチャレンジをあきらめることはできませんでした。下手をすればフリーターになるかもしれない。そんなリスクもありましたが、最後までやれるだけやってみよう。そう思って就職活動を続けたら、本当にたくさん落とされるなか、たまたま富士フイルムという会社が「そんなに機械をやりたいなら頑張ってみなさい」ということで入社させてくれました。
とにかく機械をやりたいという意思を通したと。
そうです。ジャンルはなんでもいいからとにかく機械をやりたいといったら、入社させてくれたんです。私の人生のなかで非常に大きな決断があったとすれば、この就職活動と起業がそれにあたると思います。あきらめて電子工学で就職するか、機械志望を貫くのか。精神的には紙一重で折れるかどうかというところだったのですが、なんとかこらえたことが現在の道につながりました。