企業があなたをジャッジする場面は、実際の面接だけでしょうか?選考が進んでいく中で、企業と接触する機会は面接だけではないですよね。あなたが企業を見る(判断する)時に、いろいろな角度から研究されると思いますが、それと同様に、企業もあなたをあらゆる観点からジャッジしています。
商社で営業一筋のキャリアをお持ちのAさんは32歳。出張などで毎日とても多忙な方でした。そのため最初のコンタクトからご面談まで1ヶ月もかかりましたが、その間のやり取りがしっかりされていたので、私はお会いするのがとても楽しみでした。実際にお会いしても想像通りの方で、話が具体的でわかりやすく、仕事にも前向きに取り組まれ、さらに好感が持てました。
Aさんの希望は、今までの営業から事業企画へのキャリアチェンジ。実績も出しており評価が高いものの、それゆえに今の事業部から離れることができないとのこと。前々からイチから事業を立ち上げてみたいという想いがあり、年齢的にも焦りを感じて転職を決意したようです。確かに30歳を超えてのキャリアチェンジは厳しいのですが、Aさんの強い意思とお人柄に打たれ、できる限りのサポートをお約束しました。
面談終了後、懇意にしているB社でAさんの希望に近いポジションがあったことを思い出し、早速Aさんに。Aさんも興味を持たれたので、急いでB社へ話をしてみたところ、開口一番「年齢的に難しいですね。」の一言。想像はしていたものの、このまま引き下がれませんので、「人物面は私が担保します!ですので是非一度お会いいただけませんか?」と強くお願いしたところ、私の熱意が通じて(?)か、何とか面接の機会をいただくことに成功しました。その後は双方ともに興味を持たれ、選考も順調に進みました
私との面談同様、多忙な中での面接セットということもあり、調整は容易ではありませんでした。ただ、都度Aさんからも早急且つ正確なレスポンスや状況説明をいただけ、企業側も極力Aさんのスケジュールに合うような配慮をしてもらえました。その甲斐あって、無事に全プロセスを終了。
早速、企業側に感触を確認すると、
「面接での対応や考え方は問題ないです。仕事に対しても責任を持って、積極的に取り組んでいますね。何よりもスケジュール調整のやり取りを見ていると今までの仕事っぷりがわかります。きっとAさんはしっかり優先順位をつけ、調整をしていたのでしょう。」優先順位をつけるには、決断しなくてはなりません。その決断の仕方や、決断後の調整力が先方の評価をさらに高めた様子です。
「今回のポジションは、突発的に起こる問題への対応や社内外の調整が重要。キャリアチェンジなので年齢面で慎重にはなりますが、面接と今までのやり取りを見ていると対応できるのではないかと考えています。」
数日後、条件提示のため再度B社を訪問したAさんから
「実は他にも数社最終面接まで進んでいたのですが、B社での仕事内容がもともとやりたいことだったので、給与は現職よりも下がりますがその場でお返事しました。」
と内定を承諾した旨の連絡がありました。
続けてB社からも連絡が入り、
「Aさんですが、入社を承諾されました。キャリアチェンジですから給与も下がるので悩まれるかと思ったのですが、その場で回答いただけました。Aさん、気持ちいいですね。一事が万事。あの決断を見て、弊社の判断も間違っていないと確信しました。」
思い返すと、当初私がAさんと会うのを楽しみにしたのも事前のやり取りからでした。直接会った印象はもちろんですが、その前後のやり取りから本当にその方がわかるのかもしれません。質問に対してのレスポンス(速さ、内容など)や提案に対する決断、返答など。応募書類の書き方、事前の企業研究、面接対策など事前の準備はいろいろありますが、こういった基本的な対応からその方の本気度はもちろん、人間性を感じ取るのでしょう。当たり前と言えばそれまでですが、改めてこの“基本”の重要さを認識したケースでした。
(2012年4月15日)
今回の教訓&アドバイス
面接だけでなく選考プロセス全体を通して企業は評価、判断している
基本的なことが人間性、仕事っぷりを反映することも
当たり前のことを当たり前にやることが大切

半藤 剛
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