キャリアアップコラム vol.263
元人事採用責任者が考える「良い転職エージェントの選び方」

私は前職で人事の採用責任者を担当していたことがあり、多数の転職エージェントと取引してきました。その数は恐らく100社以上で、良い思い出も、苦い思い出も多々あります。その経験から「どのような転職エージェントと付き合うとよいか」をお話しします。

転職エージェントによって、知っている企業情報の密度や粒度は異なる

企業は採用活動において、多い企業では50~100社の転職エージェントと取引・契約し、求人の依頼や情報連携に日々かなりの工数を割いています。

採用担当の業務には「エージェントリレーション」という仕事があるほどです。人事の方々にとってはエージェントとのやり取りが自社採用活動における重要な戦術であり、いかに効率的かつ戦略的に付き合うかが肝です。

1人でも多くの応募を集めたい(人材を紹介してほしい)と思いながらも、リソースを考えると取引に優先順位をつけざるをえない状況です。

そのため、信頼できる転職エージェントに対するコミュニケーションの密度は濃くなり、そうでないエージェントに対しては情報の密度や粒度を調整しているのが現実です。つまり、候補者の方が転職相談をした転職エージェントが、必ずしも良い情報を持っているとは限りません。

信頼できる転職エージェントかを知るためのチェックポイント

人事として求人をオーダーしていたとき、「転職希望者はエージェントをとにかく慎重に選んだ方がいい」と感じていました。転職エージェントの見極め方は諸説ありますが、すぐにできる2点を紹介します。

1つめは、転職エージェントのWebサイトにあるコンサルタントの紹介ページが充実しているか。コンサルタントの離職が多いエージェントは紹介ページを頻繁に更新する必要があるため、コンサルタントの紹介を載せていないこともあります。

逆に、コンサルタントの経歴や写真をしっかり載せているエージェントはコンサルタントが長期間働いている傾向があり、経験が豊富で信頼できるエージェントである可能性が高いです。

2つめは、Webサイトに取引先企業とのインタビュー記事が掲載されているかです。決定実績がないと企業に記事の取材を依頼することはできません。

企業側は忙しい中、活躍している社員の時間を割くわけですから、本当に取材を受けるべきかを真剣に考えます。どうせ取材を受けるなら、そのエージェントとの取引を深めて、また良い紹介をして欲しいと考えるため、企業のインタビュー記事がWebサイトに掲載されているかはとても重要なポイントです。

更新頻度やコンテンツの量なども確認しておきましょう。

企業から信頼を得ているエージェントは、経営層(役員やCXO)とのパイプがある

私が人事をしていた頃、エージェントの担当者に社長や役員と会う機会を作るときは、とても慎重に考えて対応していました。経営層にエージェントとの打ち合わせに出てもらっても、期待通りの紹介が得られなければ、経営陣の時給を考えるとコスパが合いません。

それに、経営者から評価を得られないことは避けたいと考えるのが当然です。つまり、Webサイトに経営者や役員のインタビューが多数載っているエージェントは、カウンターパートの人事から一定の評価を受けていて、「このエージェントなら経営陣と会ってもらった方が良い」と思われているのです。

そこまで関係性ができていれば、一つひとつの求人に対して、人事は惜しみなく情報を提供してくれます。その結果、転職希望者にも充実した情報提供ができる。

こんな方程式が成立するのです。日々、甘い言葉でスカウトメールを多数受け取っている候補者の方は、初めて登録する転職エージェントとの面談を組む前にチェックしておくのはいかがでしょうか。

(2024年2月20日)

今回の教訓&アドバイス

同じ求人を扱っていても、転職エージェントによって持っている情報量は異なる

スカウトの文面だけで判断せず、信頼できるエージェントかどうかWebサイトをチェックする

経営者とパイプがあるエージェントは信頼できる可能性が高い

このコラムを書いたコンサルタント
コンサルタント
菱沼 史宙
スタートアップおよび、SaaS、Fintech領域や小売り・リテール関連業種のハイレイヤーポジション。メガベンチャー人事責任者として、多くの採用の意思決定の場面や、キャリアの節目に数多く関わった経験を活かしミドル・エグゼクティブの方の転職支援を得意としています。
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