転職のご相談に乗っていると、よくあるお話として知人のお誘い、先輩のお誘い、前職での同僚などから誘いを受けて転職をされているケースに出会います。その方々がおっしゃることには共通点があります。 「ちょっと悩んでいる時に先輩が移った立ち上げの会社に誘われて・・・」「それならうちにこいよ、話をきいてみないか?」的なお誘いです。そこで候補者は、なんとなく良いような気持ちになりご転職されるケースです。 ここでの共通点は、 (1)なんとなく今の会社や仕事に行き詰まりなり、悩みを抱えていた (2)人の話を聞いたり、他人の仕事、会社が良く見えすぐに前向き検討 (3)結局他の転職活動をせずに、その1社で決定する。 です。
でもちょっと待ってください。このようなケースで転職された候補者の方は、この新しい会社をとても高い確率で2年以内に辞めています。そもそも「なんとなく今の会社に行き詰まりなり悩みを抱えている」を整理できていない状況なのです。
・問題は何なのか?
・何が今の会社で解決できればハッピーなのか?
・自分の力ではどうしようもないのか?
これを整理した上で、今度はどういう職場や仕事が自分にとって良いことなのかを考えた方は転職に成功しています。または自分にあるエンジン(底力的なもの)に自信のある方は良いでしょうね。
Aさん(仮名)は35歳。これまたなんとなく自分で「区切り・節目」を感じて少し情報収集をしていました。(実際、なんで区切りなんでしょうね、30歳とか・・・?)そんなとき知り合いから「マネージャー」のポジションで一緒にやろうよとのお誘い。分野は少し知っているが、やったことのない職務の上、規模も違う、でもAさんはものすごくエキサイティングでした。
入社後、経験の無い分野、経験の無い職務、更に転職したことによりまだ会社にも慣れていなくて、右往左往していました。そのためか企業側からもマネージャー職ではなくひとつ下からの職務を勧められ、焦燥感とストレスにより会社を辞める運びとなりました。
Bさんは38歳。ちょうど大きな仕事のPJが終わり少しルーティンな仕事内容がちょっとつまらなくなってきていました。そんなとき以前の職場の先輩の誘いで「よーし、やるぞー」と燃えて転職しました。でも今まである程度社長に任されていた責任者だったのに、今度入社した企業は、社長との間に先輩がいる。自分の登っていくキャリアにその先輩が邪魔・・・・。最初は仲が良かったけれど、仕事の考え方でぶつかってから一気に気まずくなりました。お知り合い経由でいくとなんとなく仕事のチームワークや裁量が多くなるような気がしますが、実際こじれると非常に後まで人間関係が気まずくなっているケースが多いです。
お知り合い経由が全て悪いわけでなく、自分の人生の選択の決定プロセスが良くないというわけです。そのまま転職のときに関わらなければその誘ってくれた方は大きな自分の人脈や友人関係だったはずです。また、そのようなお誘いは人生の中で多々あります。誘われれば悪い気はしないし、なんだか自分がすごく貴重な人材かと錯覚さえも起こるでしょう。でも何をしにその会社に行きますか?ここで実績を出さなければ、先はないんだというような覚悟をして入って欲しいと思います。
AさんもBさんも口をそろえて言います。「思いたくはないけど、あの転職はやっぱり失敗だと思います。あまり考えずに動いてしまいました。」と。AさんもBさんもこの失敗を機にその後の転職は、弊社でお手伝いをさせていただき、今までの問題の解決にあたるような職場をご紹介できました。今はすっかりご活躍されています。ご自分の価値は、成功体験を積み、がむしゃらに実績を出して初めて価値が上がるんですよね。転職によって価値が上がるわけではないということです。また、私見ですが、いつかは知人の紹介で転職するときが来ると思います。40代以降にとっておきたい予感です・・。
(2012年4月10日)
今回の教訓&アドバイス
知人の紹介や誘いを簡単に受けてはいけない
今一度なぜ転職したいのか?次では何を実現するのかを明確にする
知人経由の転職は「リスクはつきもの」と割り切り、成功体験を積むまで辞めない
身に憶えのある方は失敗を教訓に慎重になってください

岡田 麗
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