キャリアアップコラム vol.207
書類選考を通過する「職務経歴書」とは?

日々企業や候補者の方々のご支援をさせていただく中で、転職市場において履歴書や職務経歴書等の提出書類の扱いに「変化」が生じているように感じます。採用の入口となるこれらの書類について、どのような変化が起きているのかお伝えしたいと思います。

転職市場は活況、簡素な書類や提出なしで選考が進むケースも

この数年、特に企業側の採用ニーズが活況を呈する中、優秀な人材獲得に向けて企業はあらゆるノウハウや工夫のもと採用活動を行っています。例えば、社員によるリファラル採用や媒体を介した直接スカウト、カジュアル面談の実施等。もちろん企業フェーズや採用ポリシー等によって異なりますが、特にこうしたケースの場合、簡素な内容の書類でも進むケースや面談前に書類の提出が求められないこともあります。

昨年出会った候補者のAさんもまさに上記の状況で、他社の選考が進む中ご縁をいただき、キャリア相談でお会いすることになりました。ご面談前に送っていただいた履歴書と職務経歴書を拝見すると、toB向けの提案営業について行動が列記された非常に簡素な内容でした。

実際にお会いしてお話をお聞きすると、年間3桁の新規企業への開拓アプローチ、それによる億単位の受注、6割以上のリピート実績、メンバーのマネジメントやそれによるメンバーの目標達成、営業職へのこだわり・想い等、書類からは読み取れないことが多くありました。

驚きのあまり「Aさん、もったいないですよ。今お話されたようなご経験やご自身の想いは書類に記載した方がいいですよ」と伝えたところ、「え、そうなんですか。ある企業のカジュアル面談を受けた際に特に指摘もなく進んだのでこれで良いと思っていました」とのこと。優秀な人材の確保が急務な中、「まずはお会いしたい」という企業側のニーズが高く、以前より書類に求める質は下がっているのかもしれません。とはいえ、こうした市場感の中でも書類を非常に重視している企業があることを忘れてはいけません。

書類では自分の仕事の価値観やストーリーを伝える

先日とある企業の経営者の方の書類選考に同席したところ、「行動レベルでは確かに優秀だと伝わってくるが、どのような意図で実行し、どのような想いで成果を出し続けられたのか、仕事の価値観やストーリーが伝わってこない」というコメントをいただきました。事前に候補者の方に大切にしている価値観やこれまでのご決断のエピソード等をお伺いしていたので、その点をフォローすることができ面接につながりましたが、その場に同席していなければ書類選考で不合格の可能性もありました。

また別の会社の書類選考では、「行動は分かったが、その人の強みやそれを裏付ける数字の実績が不明瞭」という理由で一旦お見送りとなったことがあります。候補者の強い想いもあり、修正するチャンスをもらい書類選考は通過。その後の面接で全力で挽回され結果としてオファーを獲得しましたが、応募前の段階で修正をご指摘出来ていたら、という私自身の反省もあります。

誰が(どの部門が)書類選考を行うか、どのような企業に応募するかによって書類に求める基準は異なりますが、共通して言えることは提出書類は自分の仕事の価値観やストーリーを伝える絶好の機会であり、それを生かさない手はない、ということです。

週末の時間を活用して改めてご自身と向き合いながら内容を書き直した前述のAさんの書類は修正前と比較すると全く伝わり方の違うものになりました。結果として第一志望の企業から無事内定を獲得。現在もその会社で実績を出してご活躍されています。

「たかが書類、されど書類」。面接では書類の内容に基づいてやりとりが進むことも多く、提出書類は選考の入り口であると同時に転職活動中もずっと候補者に伴走していくものだと感じます。書類に求められる質が変化している今だからこそ、これまでのご自身のキャリアに向き合いながらしっかりと書類を作成し、日々候補者の書類に触れている信頼できるキャリアコンサルタントから必ずフィードバックやアドバイスを受けることをお勧めします。

(2019年5月20日)

今回の教訓&アドバイス

提出書類では自身の仕事のストーリーを伝える

履歴書・職務経歴書が企業との素敵な出会い(面接)を生む

作成後は信頼できるコンサルタントからフィードバックをもらう

このコラムを書いたコンサルタント
コンサルタント
吉田 綾
医薬・人組織系、グローバルニッチトップ企業等。海外勤務経験を生かし、国を跨いだカルチャーフィット、海外で活躍したい方のご支援も得意としています。自身のコーチングのコーチ、コンサルタントとしての経験も強みの一つです。
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