後悔しないためにも、自分に合ったスタートアップ企業を選び出そう
「スタートアップ企業に転職したい」とのご相談を私たちは頻繁に受ける機会がありますが、一口にスタートアップ企業といっても本当に千差万別です。成長フェーズも違えばビジネスモデルも違う、給与水準も違う――。
何から何まで違うので、スタートアップ企業への転職で後悔や失敗をしないためには「自分に合ったスタートアップ企業を選びましょう」という結論になります。では、自分に合うスタートアップ企業か否かはどう判断すればよいのか。
自分が興味を持てるビジネスや業務内容か、毎日ワクワクしながら働けそうか、不安を持たずに仕事をできるかといったさまざまな観点について、私たちのようなスタートアップ転職市場に詳しい第三者と対話をしながら自分の志向や適性を知り、相性がよさそうなスタートアップ企業を選んでいくのがよいと思います。
私たちは候補者の方がどんなスタートアップ企業との相性がよいかを見るためのポイントを、これまでの経験から6つの項目に整理しています。かなりボリュームがあるので全2回に分けて、解説していきましょう。
(1)どの成長フェーズのスタートアップ企業なのか?
スタートアップ企業は成長段階によっていくつかのフェーズに分けられます。創業したばかりで従業員数が1ケタ程度のシード期、最初の資金調達を実施し「このプロダクトで勝負する」との方針が明確化された段階のシリーズA、マーケティング投資等を積極的に行い売上の拡大を図るフェーズのシリーズB、IPOやM&Aなどのイグジットが見えてきた段階のシリーズC、そしてIPOを果たした上場ベンチャー。
さらに、スタートアップ企業ではありませんが、転職先の候補としてはリクルートやDeNAといったメガベンチャー、大手IT企業もあげられます。
これらの分類に定まった定義があるわけではありませんが、アーリーフェーズにいくほどハイリスクハイリターンになり、大手IT企業に近付くほど安定性が高まります。
シード期のスタートアップ企業に転職すると、実力次第で上位のポジションを獲得でき、場合によってはストックオプションの分配率も多めに配分されるかもしれません。
ただしアーリーフェーズになるほど組織が固まっておらず、変化のスピードも速い。業務は一人何役もこなさなければなりませんし、事業そのものが失敗に終わるリスクもあります。
それに対しメガベンチャーでは組織の規律やガバナンスがしっかりしていて、業績も安定的ですが、既に規模が大きくなっているので成長の度合いや変化のスピードはシード期と比べ小さくなります。
社内での競争もあり、アーリーフェーズと比べると、いきなり上位のポジションに行くのは難しいでしょう。
このようにアーリーフェーズに近付くほどハイリスクハイリターンなので、自分がどの程度のリスクを取れるのか、そしてどのくらいリターンが欲しいのかを考える必要があります。
加えて、転職を検討している企業の成長フェーズとともに、現職の環境との変化率を見る必要があります。
極端な例でいえば、日本最大の企業であるトヨタ自動車に勤務している人が、いきなり3人でやっているシード期のスタートアップ企業に転職すると変化率が大きすぎて、強いカルチャーショックを受けるのは必然的です。
しかしトヨタからリクルートのような企業への転職であれば、テックカンパニー以外から入社した転職者を受け入れて活用するノウハウもあるので、かなり環境は変わりますが変化率としては許容範囲に収まる可能性が高いでしょう。
もちろんグローバルな巨大企業からアーリーフェーズのスタートアップ企業にいきなり行って、大活躍できないとは限りません。
とくにダイレクトに活かせるスキルや経験がある場合はそうでしょう。しかしキャリア上の安全性を考えればソフトランディングできるように一度、従業員1000名程度の上場ベンチャー企業を経験したほうがよいと思います。
そうすれば大企業とは異なるベンチャー企業のスピード感やカルチャー、仕事の進め方等々を、一定のガバナンスが効いた環境のなかで経験できます。
そして3年くらい経験を積んだら、もっとアーリーフェーズのスタートアップ企業にチャレンジしてもよいと思います。要は段階を踏んでいくわけです。
(2)経営者・経営陣(経営チーム)はどんな人たちか?
大企業の場合、社長は数年の任期がくると別の人物に交代します。しかしスタートアップ企業では、あまり社長は交代しません。
もちろん交代するケースもありますが、多くのスタートアップ企業は創業者が社長かつ大株主で、会社を売却してエグジットするといったことがない限り、社長であり続けます。
そして会社の成長に創業社長が及ぼす影響力は多大です。したがってスタートアップ企業への転職では、社長の見極めが非常に重要です。
とくに従業員数100人~1000人規模くらいのフェーズは社長次第で会社のポテンシャルが決まるところが大きいので、社長がどんな経歴と実績をもって起業し、どんなビジョンでいま経営に取り組んでいるのかはきちんと見ておくべきです。
経営者としての優秀さやポテンシャルはもちろんのこと、ポジションが上になればなるほどスタートアップ企業では社長と密接にかかわる場面が増えるので、この人についていきたいか、トップとして担ぎたいと思えるか。
あるいは掲げているミッションやビジョンに共感できるかがとても大事になります。 経営チームもチェックすべきポイントです。メンバーの経歴はどうか。経営チームがどのように機能して会社運営を行っているか。
メンバーは頻繁に入れ替わっていないか。たとえば社長以外は全員、今年からジョインしているとしたら、あまりよい兆候ではありません。
成長フェーズに応じた経営チームの入れ替えは必要ですが、「いつの間にかあの役員、いなくなっている」ということが頻繁に起こっているスタートアップ企業は何か問題があることが多いので、注意しておいたほうがよいのです。
さて、ここまで、スタートアップ企業への転職で後悔しないための見極めポイントを2つご紹介しました。残りのポイントについては次回になります。お楽しみに。
担当コンサルタント:入江 祥之・工藤 直亮・山本 航
(2024年4月22日)
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