株式会社三井住友フィナンシャルグループ

金融の枠を超えてお客様に価値をもたらす、 SMBCグループのDXとは

株式会社三井住友フィナンシャルグループ 執行役員 デジタル戦略部長 白石直樹 氏

DXレポート

2022 Dec 23

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近年、DXを積極的に繰り広げているSMBCグループ。デジタル領域においては金融の枠にとどまることなく、非金融にもビジネスを拡大し、さまざまなデジタル子会社の設立や新たなデジタルサービスの創造によって、総合的なソリューションプロバイダーに変容しつつあります。この動きの中で中心的役割を担うデジタルソリューション本部デジタル戦略部の白石直樹氏を弊社の社内勉強会にお招きし、お話しいただいた内容をレポートします。(以下の内容は、2022年10月の勉強会実施当時の内容になります。)

Profile

株式会社三井住友フィナンシャルグループ 執行役員 デジタル戦略部長
白石直樹 氏

1993年に東京大学経済学部卒業後、株式会社さくら銀行に入行。ホールセール事業部門の企画や営業部署等を経て、2020年より法人デジタルソリューション部長。2021年より現任の三井住友フィナンシャルグループ 執行役員 デジタル戦略部長。SMBCグループのDX(デジタルトランスフォーメーション)や新規デジタル関連事業開発を推進する。

Contents
お客様のペインポイントを起点にビジネスを構築。デジタルはその手段。
非金融の領域へ。電子契約書サービスや生体認証サービスなどを続々と開発。
「カラを、破ろう」がモットー。デジタル系の社内ベンチャーでは30代の社長が誕生。
SMBCグループのリソースを存分に活用して、デジタルビジネスを創る醍醐味。
勉強会を終えて/クライス&カンパニー神田(コンサルタント)

1. お客様のペインポイントを起点にビジネスを構築。デジタルはその手段。

――企業によってDXへの取り組みはさまざまですが、御社はDXをどう捉えているのかお聞かせください。

白石 CEOの太田(純氏)やCDIOの谷崎(勝教氏)も常々言っているのですが、そもそもSMBCグループに「デジタル戦略」なるものは存在しないんですね。所属する部署名にデジタル戦略というワードは入っているものの、デジタルありきで新しいビジネスを創ろうとしているわけではない。デジタルというのは手段に過ぎず、SMBCグループが取り組んでいるのはお客様のペインポイントの解決であり、その方法がたまたまデジタルだというのが我々の認識です。

特にいまの時代は、企業のビジネスにデジタルが密接に結びついており、お客様のペインポイントを起点にビジネスを構築しようとすると、デジタルの領域にふさわしい解があるケースが多い。ですから、我々の企業活動においてDXはもはや必然であると考えています。

――いま「お客様のペインポイントを解決する」というお話がありましたが、もう少し具体的にどのようなお客様のどのような課題解決を図ろうとされているのでしょうか。

白石 まずは法人マーケットからお話ししますと、いまやどの企業のお客様もビジネスを継続するにあたって、日々進展するデジタルの世界に対応していかなければなりません。

BtoCのビジネスを展開する企業のお客様であれば、消費者ニーズの変化に応じてデジタルサービスを創らなければならない。サービスの裏側に必ず決済などの金融機能が求められ、それを我々がサポートしています。その際、SMBCグループの金融サービスだけではなく、グループ各社の顧客基盤、たとえば三井住友銀行は2500万をゆうに超える普通預金口座を有していますし、三井住友カードは5000万人以上もの会員を抱えており、場合によってはこのカスタマーベースも活用して法人のお客様をサポートできることも我々の強みです。

個人のお客様に向けては、我々のサービスをデジタル化してお届けすることでペインポイントの解決を図っています。わかりやすいところで言えば、インターネットバンキングである「SMBCダイレクト」をさらに進化させ、従来は紙の書類でやりとりしていた住宅ローンの契約をオンラインで完結させることもその一例。お客様を煩わしい作業から解放するとともに、契約までのスピードがアップされてお客様のペインの解消につながっています。

2. 非金融の領域へ。電子契約書サービスや生体認証サービスなどを続々と開発。

――昨今、フィンテック企業の出現などで銀行ビジネスを取り巻く環境が大きく変化しています。それも御社がDXに注力される大きな理由なのでしょうか。

白石 フィンテック企業によって銀行はディスラプトされていくとも言われていますが、我々は必ずしもそうではないと考えています。技術的な要素だけでいえば、フィンテック企業はそれほど難しいことをやっているわけではありませんし、金融機関としての信用と豊富なカスタマーベースを有する我々だからこそ提供できる価値がある。それを実現する上で、すべて自力でやる必要はなく、適切な事業者とパートナリングしながら対応していくことが大事だと考えています。

たとえば、2019年に「SMBCクラウドサイン」という電子契約書のサービスを提供する企業を新たに立ち上げましたが、これは弁護士ドットコムとのJVであり、我々のカスタマーベースを活用しながらサービスを拡大しています。フィンテックによって非金融企業が金融領域に参入するケースが増えていますが、こうして我々は逆に非金融の領域に果敢に進出していこうとしています。

――御社が推進されているDXの具体例をいくつかご紹介いただけますか。

白石 ひとつは金融サービスそのもののDX化です。リテール部門のSMBCダイレクトなどで我々とお取引のある個人のお客様へ直接アプローチするだけではなく、企業のお客様のペインポイント解決を通じて銀行機能を非金融事業者のサービスに組み込み、広く社会に提供しようとしています。

これはエンベデッド・ファイナンス(埋込型金融)と呼ばれるもので、身近な事例を挙げると、ユニクロが展開しているキャッシュレス決済サービスの「UNIQLO Pay(ユニクロペイ)」の裏側の決済ソリューションは我々が提供し、サービス構築を支援しています。すなわち、ユニクロでのショッピングを介して我々のサービスを使っていただくお客様が増えているのです。これはBtoCの領域ですが、BtoBにおいても電子帳簿保存法の改正などによって請求と決済がつながることになり、そこに我々が果たせる役割は大きいと考えています。DXによって本業である金融サービスの提供の仕方がこれから大きく変わっていくことになるでしょう。

――先ほどお話のあった「非金融への進出」については、どのような取り組みをされているのでしょうか。

白石 非金融の領域については、比較的我々のビジネスと親和性の高い分野をまずターゲットにしています。たとえば先に触れた「SMBCクラウドサイン」ですが、我々は契約書のやりとりは日常茶飯事で、また金融機関として培ってきた信用もあります。この電子契約書サービスは本業と親和性の高いもので、弁護士ドットコムとの協業で市場が急速に拡大しています。

また、2017年に社内ベンチャーでPolarifyという企業を立ち上げましたが、ここではオンライン本人確認・生体認証サービスを提供しています。銀行で口座を開く時は必ず本人確認する必要があり、その知見をeKYC(electronic Know Your Customer)に展開して新たな認証サービスを開発しました。我々の銀行サービスはもちろん、他の金融機関や決済事業者が本人確認する場合にもPolarifyを採用いただいており、年間利用件数はすでに1300万件に達しています。

将来、Web3でメタバースがもたらされた時、その世界に入る上では本人確認が非常に重要であり、この認証サービスはそこでも価値を発揮できる可能性が大いにあると考えています。

「カラを、破ろう」がモットー。デジタル系の社内ベンチャーでは30代の社長が誕生。 画像

3. 「カラを、破ろう」がモットー。デジタル系の社内ベンチャーでは30代の社長が誕生。

――SMBCグループがDXを推進する上での要諦は何だとお考えですか。

白石 ひとつは先ほど申し上げたように、我々は技術ドリブンではなく、お客様のペインポイントからビジネスを考えており、その姿勢は徹底して貫くことを大切にしています。もちろん技術の探求も怠っておらず、シリコンバレーにサテライトオフィスを設けて最先端の情報の収集に努めています。その際も、シリコンバレーに対して「いまお客様がこうしたペインを抱えているので、それを解決できる技術を持った企業はないか」とアプローチし、新技術がどのようなシーンで活用できるのかを意識してリサーチしています。

そしてもうひとつは、「カラを、破ろう」ということです。これは太田CEOが折に触れて発言していることですが、長く金融機関に勤めていると過去の成功体験をなかなか振り払えないのが実情。私自身もそうなのですが、それでは駄目だとトップが強く訴えています。従来の金融機関の概念を打ち破ろうとしており、たとえば電子契約書サービスを手がけるSMBCクラウドサインは、中途入社の社員が37歳の時に社内起業で設立したベンチャーであり、彼が社長の座に就いています。

また2年ほど前、中小企業のデジタル化を支援するプラリタウンという社内ベンチャーを起ち上げましたが、こちらは新卒入社の社員が企画したもので、彼も30代後半で社長を務めています。どちらも、おそらく従来の銀行ではありえなかった人事であり、さらに将来的にはこれらの社内ベンチャーのIPOも視野に入れており、こうしたチャレンジはまさに「カラを、破ろう」と象徴するものです。

――金融は規制産業であり、新しいことにチャレンジする難しさもあると思いますが、どう乗り越えているのでしょうか。

白石 昔に比べると、銀行法自体が改正されて少しずつ従来のビジネスの外側に踏み出していけるようになっています。銀行ビジネスの高度化等に資するものであれば、金融庁と折衝して子会社を設けて実現できるチャンスは広がっている。先ほどご説明した生体認証サービスもそうですし、SMBCデジタルマーケティングという広告会社も起ち上げています。銀行業の枠を超えた非金融領域への進出は、業界内でも我々が先んじていると自負しています。

今後も世の中のメガトレンドを捉えて、たとえば気候変動に対応するグリーンビジネスにも進出していきたい。手始めに企業の温室効果ガス排出量を計測するサービスを開発してリリースしており、広く世の中に提供できればと考えています。温室効果ガス排出が可視化されれば、削減へ向けての投資も加速するでしょうし、そのための資金のファイナンスなどで我々の本業拡大にもつながっていくと思います。

4. SMBCグループのリソースを存分に活用して、デジタルビジネスを創る醍醐味。

――SMBCグループは他のメガバンクに比べて、トライ&エラーを重ねながらDXに果敢に挑まれているようにお見受けします。なぜ、御社はこうしたチャレンジが可能なのでしょうか。

白石 先ほど申し上げた通り、やはりトップのリーダーシップが強く影響していると思います。CEOの太田は初代のCDIOであり、DXへの理解があり、旧来の銀行ビジネスを変えていかなければという想いが非常に強い。いまCDIOを務めている谷崎も同じ想いを受け継いでおり、経営会議のメンバーも新しい変革に前向きです。DXの投資枠も十分に設けており、月次でCDIOミーティングが開催され、グループ各社から上がってくるデジタル系の投資案件が協議され、認められればCDIO権限ですぐに予算が付く。こうしたスピード感も我々の強みだと思います。

――では最後に、SMBCグループならではのDXの面白味ややりがいについて教えてください。

白石 我々はDXによって金融から非金融へと意図的にサービスを拡げており、それは他の金融機関と異なる点だと思います。そして非金融領域へは、SMBCグループが有している決済やファイナンスの機能、さらに巨大なカスタマーベースを活用しながら出ていこうとしており、強力な武器を携えてDXを推進できるのも我々ならではの醍醐味だと思います。お金と人を十分に投じることができ、通常のスタートアップよりもはるかに早くビジネスを起ち上げられますし、またグループ全体で強力な営業部隊を擁しているので、優れたサービスをローンチすれば彼らが市場を開拓してすぐにスケールできる。

何より、SMBCグループとしてこれまで積み上げてきた信用も、サービスを選んでもらうための強力な武器の一つです。また、従来の銀行のカルチャーとは一線を画し、ドレスコードフリーやリモートワーク等の制度も導入しています。自由度が非常に高く、個々がクリエイティビティを存分に発揮できる。ダイナミックにビジネスに臨める環境なので、デジタルで変革を起こしたいと望む方には絶好の場だと思いますね。

5. 勉強会を終えて/クライス&カンパニー神田(コンサルタント)

「SMBCにおけるDXとは?」という我々の問いに対して、白石様が「デジタル戦略ありきではなく、お客様のペインポイントを解消するための手段としてテクノロジーを活用する」というお話をされていた点が強く印象に残った。また、経営トップが自ら「カラを、破ろう。」という姿勢を貫き、従来の銀行では前例の無いような新しいことに取り組んでおられるお話も非常にワクワクするものがあり、変化を恐れずチャレンジを求めるデジプロ人材にはとても挑戦し甲斐のある環境だと感じた。

(こちらのレポートの内容は、2022年10月の勉強会実施当時の内容になります。)

構成:山下和彦

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