東急株式会社

リアル×デジタルで 新たな顧客体験を 実現する東急のDXとは

東急株式会社 デジタルプラットフォーム VPoE 宮澤秀右 氏

DXレポート

2022 May 20

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鉄道を中心に生活に密着したさまざまな事業を展開する東急は、人々の暮らしと直結する「街づくりDX」の実現に向けて2021年7月に新組織「デジタルプラットフォーム準備プロジェクト」(Urban Hacks)を起ち上げました。このプロジェクトでは、東急グループを横断して、幅広いリアルなサービスをデジタルの体験と融合させ、生活や仕事、エンターテインメントなど各事業間を横断するサービスの提供を図っています。プロジェクトを率いる宮澤氏を社内勉強会にお招きし、東急がこれから展開するDX戦略をお伺いしました。ここでは弊社の視点でその全容をレポートさせていただきます。(以下の内容は、2022年3月の勉強会実施当時の内容になります。)

Profile

東急株式会社 デジタルプラットフォーム VPoE
宮澤秀右 氏

2015年までソニーグループの各社で勤務。最後の5年間は、スウェーデンのソニーモバイルで、ウェアラブルやIoTプロダクトのUXデザイン/企画統括を務める。日本に帰国後、IoT化による自動車業界の革新を予想し、その年に日産自動車に入社。 2016年から、ルノー日産アライアンスのコネクテッドカーサービスデザインを統括しながらデジタル内製化組織の立ち上げを実行し、2019年から日産のコネクテッドカーSW&UX開発を統括。 2021年4月に、デジタルをフル活用したまちづくりの実現を目指し東急に入社。

Contents
東急におけるDXとは
東急のDX施策
東急のDX推進における要諦

1. 東急におけるDXとは

  • 東急が目指しているDXは、明文化すると「顧客に新たなライフスタイルと体験価値を提供し、そこから得られるデータを活用して、グループを横断する次世代のビジネスモデルを構築する」こと。
    冒頭に「顧客に新たなライフスタイルと体験価値を提供」と掲げたのは、その起点が何よりも重要であることを強調するためとのこと。
  • DXの第一歩は、各事業のサービスを繋いでいくこと。たとえば、電車を降りたお客様が駅構内の東急ストアを利用される際、改札から店舗までのわずか数十メートルが断絶しており、一人のお客様として認識されていないのが現状の課題とのこと。それを繋ぐようなサービスを提供することで、お客様に新しい体験価値をもたらすことを考えている。現在、東急は鉄道・バス・生活サービス・ホテルなど都市に必要な機能を提供する事業会社がそれぞれバリューチェーンを構築し、リアルなビジネスを繰り広げている。東急沿線に暮らす方は500万人を超え、鉄道は年間11億人ものお客様に利用されている。これだけの膨大な数のお客様に利用されていても、各事業のサービスがつながっていないことで、新たな価値提供に結びついていないのが実情とのこと。お客様に新たなライフスタイルと体験価値を提供する上で、東急は大いにポテンシャルを秘めた企業。
東急のDX施策 画像

2. 東急のDX施策

【「点」から「線」、「線」から「面」へ】
「点」とは、各事業におけるデジタル化。
東急はまだ各事業がデジタルを活用しきれていないのが現状とのこと。それを内製化して的確に運用していくことで、お客様の属性や利用状況、位置情報などのデータを活用しながら、お客様とともに提供するサービスの体験価値を向上していく。そこがまずスタートであり、現在はまだこの「点」を描いている段階。

こうして各事業でデジタル化が進み「点」が確立されれば、他事業との連携も進んでいく。それが「線」のフェーズ。
たとえば、お客様が東急線を下車した後にどのような行動をとるのかを探ることで、カスタマージャーニーベースで新サービスの発想も生まれてくる。お客様が電車に乗っている時、属性や位置情報をもとに、例えば東急ストアのクーポンや映画館の割引チケットをスマホ上に発行して集客を図るなど、データをどう活用すれば新しい体験価値に繋がるのかを各事業ごとに考え実行する体制を築いているところ。

さらに、その「線」が互いに結ばれて「面」となり、沿線に生活する人々にとって必要不可欠なプラットフォームを創り上げていく。沿線で暮らすすべてのお客様が、毎日どこかのタッチポイントで、東急のデジタルサービスを使っていただける状況を目指している。

【社内における意識のギャップ解消】
DXを推進するためには、リアル側とデジタル側の意識のギャップを埋めることが肝要。東急が従来営んできたビジネスはリアルな装置産業があり、鉄道を敷き、不動産を開発し、そこから回収を図っていく超先行投資型。一方で、同社のプロジェクトが進めるデジタルビジネスは、作りながら考え、継続改善して構築していくスタイル。成り立ちの違う組織が一つの目標に向かっていく上では当然、ギャップが生じる。そのギャップをなくして、全員が同じ意識で同じ方を向くことで、DXによる事業や文化の変革を実現していこうとしている。

ギャップをなくすために行っていることは、研修や言葉での説明ではなく、実際にデジタルビジネスに携わってみて理解してもらうこと。そこで現在、各事業部の現場からデジタルビジネスに興味を持つ人材をプロジェクトに募り、協業しながらDXを進めている。そこで経験を積んだ人たちが将来、事業部に戻ってDXの勘所を自分の言葉で周囲に説いてもらうことで、デジタルを使いこなす文化が醸成され、強力な経営基盤が築かれていくとのこと。

3. 東急のDX推進における要諦

東急のDX推進の要諦はシンプルで、顧客接点を徹底して磨き上げること。東急は各事業で膨大な顧客接点を持っており、それが同社でDXに関わる醍醐味でもある。各事業がアプリを通してさまざまなサービスを提供しているものの、それがユーザーに届いていないことが課題。リアルのユーザーにまずデジタルを使ってもらい、そのためには徹底的に使いやすいものにする。その上で、リアルとデジタルのフィードバックループを作りたいと考えており、それが実現できれば東急のDXの成功が見えてくる。

東急はリアルの世界で優良な資産を豊富に有しており、デジタルとかけ合わせることで大いに勝算がある。そこに携わる社員も、お客様に新しい価値を提供できるという確信があるからこそ、デジタルをぜひ武器にしたいという意欲を持って取り組んでいる
今後、共通基盤構築などの重いテーマも控えており、足長のプロジェクトになっていく。 “リアル×デジタル”で街づくりのDXを実現していくというのは、いままで誰も手がけたことのないチャレンジであり、それを東急が実現していくだろう。

(こちらのレポート内容は、2022年3月勉強会実施当時の内容になります。)

構成:山下和彦

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