株式会社カインズ

成長を続けるカインズが 実現したDXとは

株式会社カインズ デジタル戦略本部長 池照 直樹 氏

DXレポート

2021 Jul 7

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1989年の設立から日本型ホームセンターの業態を確立させ、SPA化を通じて31年間着実な成長を遂げてきたカインズ社は、現在業界首位に。更なる成長に向けて「IT小売業の実現」という目標を掲げ、売場や社内でのデジタル活用を急速に推進しています。そのDX化を牽引し実現させているデジタル戦略本部長の池照氏に弊社の社内勉強会にお越しいただきました。そこでお話いただいた同社のDXの全容を弊社の視点でレポートさせていただきます。
(以下の内容は、2021年1月勉強会実施当時の内容になります。)

Profile

株式会社カインズ デジタル戦略本部長
池照 直樹 氏

2016年よりカインズ株式会社顧問。日本コカ・コーラ、日本オラクルを経て、ケイ・ピー・アイ・ファクトリーを設立、Dynamics CRMのISVベンダーとしてソリューションを提供。
マイクロソフトのグローバルチームでDynamics CRMの新機能の企画・ロールアウト、大型案件のプロジェクト実行。エノテカ株式会社において最新のテクノロジーを利用しOne-to-Oneマーケティングを実践。ゆこゆこHD代表取締役社長を経て、カインズに入社。

Contents
カインズのDXとは
カインズのDX施策
カインズのDX推進における要諦

1. カインズのDXとは

土屋裕雅会長が2018年に打ち出した「IT小売企業宣言」は、「チェーンストア・実店舗の強み」×「テクノロジー」で顧客体験を進化させ、デジタル時代でも選ばれるIT小売企業を目指したものである。その実現に向けた戦略が以下の4点。

1.SBU戦略

そもそもモノが良くなければ、デジタル戦略をどれだけ良いものにしてもほぼ意味は無い。新たな顧客価値を創造する商品構成を再編する。

2.デジタル戦略

モノやサービス提供においてお客様に煩わしさを感じさせないように、自動化やサポート機能を持たせることでEmotionalな体験を創造していく。

3.空間戦略

店舗空間でのCAINZブランドの演出とエンジニアリング。自分達でつくりデザインした商品をお客様が買いやすいように店舗に陳列し売ることで、他のディスカウントストアとの差別化を図る。

4.メンバーへのKindness 誇りに思える、働きたい会社へ

上記3つの戦略の土台を支えるのがメンバーへのKindness。労働時間や待遇面等、働きやすい環境を整備し「誇りに思える働きたい会社」という好循環をつくることが戦略の骨子。

カインズのDX施策 画像

2. カインズのDX施策

上記戦略を実現するための具体的なデジタル施策としては、以下の4点が挙げられる。

1.Stress free

店舗空間とデジタル空間の間に垣根のない体験を創り、買物の煩わしさを解消。

2.Personalize

デジタル技術を用いてお客様一人ひとりの今欲しいものに寄り添った提案を。

3.Emotional

お客様の日々のくらしをちょっと楽しく便利に。発見やアイデア溢れる体験を。

4.Community

お客様に必要なのはモノだけではない。くらしを繋ぎ、街をつくるサポートを。

顧客戦略と具体的な打ち手

1.非会員からの顧客獲得
  • 商圏別のマーケティング(近隣・広域)
    オムニチャネル領域では、店舗と居住地の距離が重要。チラシを配布できないエリアでは特にデジタルを活用し効率的に集客へ繋げ、デジタル会員には低コストで効果の高い手法でアプローチ。
  • オウンドメディアによる認知拡大
    「となりのカインズさん」メディアの立ち上げ→サービス開始から半年で約120万PV。
  • 店舗サービスを中心とした来店動機醸成
    取り置きサービス・木材カット事前加工サービス・事前決済等によって、遠方から来店してくれたお客様にとっては最悪の「モノがなくて買えない」「待たせる」顧客体験を防ぐ。
2.ポイントカード会員からデジタル会員へ
  • アプリ会員キャンペーン
    会員を増やすべく、「スマートフォンにアプリを導入したら200ポイントプレゼント」という店頭キャンペーンを展開。2カ月で50万人のダウンロード、会員売上が2倍に。
  • アプリ機能の利便性
    商品マップ機能により広い店舗内でも欲しい商品を見つけやすく、取り置き機能で確実に欲しい商品が手に入れられるように。面倒なのは嫌という、お客様の基本ニーズを満たした。
3.低頻度から高頻度への顧客育成
  • 統合化された顧客情報
    社内の顧客情報をすべて1カ所に集約。新しい仕組みの導入時には、投資額の回収見通しを分かりやすいストーリーで明示し、マネジメントが判断できるようにすることが重要。
  • パーソナライズされたマーケティング
    お客様の行動履歴から予測、自動的にマーケティングが始まる仕掛け。
  • 休眠防止シナリオ
    年間複数回来店していたが直近来店しなくなった会員に再来店してもらうためのシナリオ。
  • 再来店促進シナリオ
    会員登録した1回の購入以降、来店履歴のないお客様に再来店を促すシナリオ。購入商品も少ないため、ポイントや代表商品、サービスといった魅力あるものを伝えることで来店してもらう。
  • 定期購買促進シナリオ
    定期購入に向いている商品(消耗品や生活必需品等)を個々の平均購入感覚から割り出した日数経過をトリガーに自動配信。家庭内在庫チェックを促すと共に再来店のきっかけを作る。

顧客戦略と具体的な打ち手

  • デジタル戦略本部組織は、新規採用と社内IT部門の統合化で現在130名の組織へ
  • 新会社カインズテクノロジーズを設立。従来型リテール組織の枠組みを超えた制度設計
  • エンジニアやデザイナーが自由でオープンな環境の中でアジャイル開発を進め、デジタルイノベーションを推進する戦略拠点を東京(表参道)に開設

3. カインズのDX推進における要諦

  • 戦略は組織に落とし込めるように、考え抜いた上でシンプルなチャートを作る。戦略に伴った文化や言葉が定着していくと、皆の考え方が整理されて同じ方向を向けるようになる。
  • 実行は人員配置の充実度に合わせて徐々に高度化していく。短期的視点が求められる店舗(アナログ)と、長期的視点の本部(デジタル)が融合して全社的な風土を創り上げていく。
  • システムにできて、人にできないことは極めて少ない。お客様ごとに営業担当がいて個別対応するのがベストだが、1000万人のお客様には現実的に不可能なので、One to Oneマーケティングで一人ひとりのお客様に対応していこうというのがデジタルの力。
  • 事業戦略自体は人がつくりあげるもの。戦略なきDXは無駄遣い。事業戦略をデジタル文脈で分解し、長期の投資戦略と短期の収益戦略をバランス良く両軸で進めること。
  • 全社を巻き込む大きな計画が必要。
  • 千里の道も一歩から。きちんとチームをつくるということ。多様性を受け容れる。
  • トップマネジメントがリスクを取る。
  • お客様に見せられるものをまずつくる。非連続な成長には歪みはつきものなので、怖れずにどんどん歪みを出して直していく。
  • マネジメントにとってルールは作るもの。事業戦略に合わせてルールを作り変えていく。
  • DXリーダーに必要なのは、戦略性(ストーリーの構成能力)・忍耐力(底力と馬力)・コミュニケーション能力(カタカナで煙に巻かない。デジタル施策の本質的な理解。笑顔を絶やさない)。

(こちらのレポート内容は、2021年1月勉強会実施当時の内容になります。)

構成:神田 昭子

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