♯01 コンサルタントとして活躍するために必要な3つの資質とは?
識者に聞く、コンサルタントへの転職成功のポイント
株式会社クライス&カンパニー アドバイザー 安間裕 氏
DXインタビュー
2024 Nov 6
コンサルティングファームに転身し、大きくキャリアアップするためにはどうすればよいのか?過去、ITコンサルティングファームの経営に携わって業界で名を馳せ、現在、クライス&カンパニーのアドバイザーを務める安間裕氏に、コンサルタントへの転職成功のポイントを伺いました。
Profile
アバナードに入社する前は、国内ITコンサルティングファームの経営に従事し、その前にはアクセンチュアにおいてアウトソーシング、BPO (ビジネス プロセス アウトソーシング) の責任者を務める。また、アクセンチュアテクノロジーソリューションズ株式会社の設立に携わり、同社代表取締役を7年間務める。2014年5月からアバナード株式会社の代表取締役を務めた後、同社会長に就任。2023年退任。明治大学文学部文学科フランス文学専攻卒。
- Contents
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「ビジネスオペレーター」「バリュークリエイター」
「ピープルデベロッパー」の三角形を基本的に意識すべき -
「バリュークリエイター」として100点であれば、
他の2つの資質が0点でも受け入れられる時代に -
時代が変化しようとも、懸命に勉強し続けることが
コンサルタントとしての存在価値を担保する
「ビジネスオペレーター」「バリュークリエイター」
「ピープルデベロッパー」の三角形を基本的に意識すべき
―コンサルティングファームで成功するためには、安間さんはどのような資質が必要だとお考えでしょうか。
コンサルティングファームにおける評価は、企業によって呼び方は違いますが、大きく3つの軸で行っていると言っていいと思います。
あるファームではその3つを「ビジネスオペレーター」「バリュークリエイター」「ピープルデベロッパー」と呼んでいます。
コンサルタントでもマネージャーでもMD(マネージング・ディレクター)でも、基本的にはこの3軸で大きな正三角形の能力チャートを描ける人材を求めています。
コンサルティングファームに転職する際には、この正三角形を意識することが大切だと思います。
―コンサルタントに求められる「ビジネスオペレーター」「バリュークリエイター」「ピープルデベロッパー」の資質について、それぞれ詳しくご説明いただけますか。
「ビジネスオペレーター」というのは、端的に言えば、ビジネスを成功させることの出来る人材です。
コンサルティングビジネスも営利目的なので、「いくらお金を稼いでくれるか」は当然重要です。
ポジションが高くなればなるほど、扱わなければならない金額は大きくなりますが、ビジネスをきちんとオペレーションして収益をもたらす力が求められる。特にマネージャー以上になれば、先ほどお話しした正三角形において「ビジネスオペレーター」は欠かざるべき資質となります。
「バリュークリエイター」は、文字通り、自分がどのような価値を提供できるかということ。
私も、かつてITコンサルティングファームの社長を務めていた時でも、専門分野であるインフラに関することなら自信がありましたし、たとえば製造系のサプライチェーンなどは、それなりに語れたのではと自負をしています。
どのような立場になっても自分が提供できる価値を築いておくことが重要。ただ、ポジションが上がると、自分よりも周りの価値を高めることでチームとしてのバリューを発揮することが求められるので、正三角形の「バリュークリエイター」の尖りは少し丸くなるかもしれません。
一方でポジションが上がるほど重要になるのが、「ピープルデベロッパー」。
メンバーを育成し、チームビルディングできる力を持つ人材です。
「ビジネスオペレーター」としてどれだけ収益を上げることができるか、「バリュークリエイター」としてどれだけ自分の価値を提供できるか、そして「ピープルデベロッパー」としてどれだけ周囲の仲間を幸せにし、集団の力を最大化できるかという、この3つがコンサルティングファームでは常に問われます。
―コンサルタントに「ビジネスオペレーター」と「バリュークリエイター」としての資質が必要なのは納得できますが、加えて「ピープルデベロッパー」としての能力も重要なのですね。
ええ。特に社内でMDへ昇格する時には重視されますね。おそらくどこのコンサルティングファームでも役職者には360度評価を実施し、MD候補となるシニアマネージャーにも同様の評価を行っていると思いますが、そこでもし配下のメンバーからネガティブな評判があれば、MD昇格者を決める経営会議で認められることはない。どんなに「ビジネスオペレーター」や「バリュークリエイター」として優れていても、また、推してくれる経営会議のメンバーがいたとしても、「ピープルデベロッパー」として不十分であれば、まず否決されるのが実情。コンサルティングファームにおいて実はものすごく重要な要素であり、入社時にもその資質が問われますね。
「バリュークリエイター」として100点であれば、
他の2つの資質が0点でも受け入れられる時代に
―いまお話しいただいた、コンサルタントに求められる3要素をどれだけアピールできるかが、コンサルティングファームへの転職の鍵を握るというわけですね。
そうです。「ビジネスオペレーター」の観点から言えば、たとえば前職でご自身が仕掛けた提案によって大規模な案件を獲得した実績があるとか、あるいは「バリュークリエイター」として、この分野に関しては誰にも負けないような自分の売りがあるとか、また「ピープルデベロッパー」としてチームのメンバーをどのぐらいの期間で何人育て上げたとか、転職にあたっては自問自答してアピールポイントを言語化しておくことが大切だと思います。
―この3要素をすべて備え、かつ大きな正三角形である人材が、やはりコンサルティングファームでは求められているのでしょうか。
おっしゃる通り、これまでコンサルティングファームはできるだけ正三角形に近い人材を採用し続けてきました。かつては相対評価で下位数%の人員をカウンセリングアウトし、新しい血に入れ替えなければ組織は活性化しないという考え方がまかり通り、大胆な人事によって正三角形を持つ人材の純度を高めてきたのですが、昨今は、人手不足もあり、そうした組織運営が困難になってきた。
また、テクノロジーが急速に進化し、解決すべき課題も高度になり、専門の領域を究めた人材が以前よりも必要とされているんですね。特に「バリュークリエイター」にその傾向が顕著であり、極言すれば「バリュークリエイター」として100点満点であれば、他の2つの要素が0点でもいいと。
人と接するのが苦手でコミュニケーション恐怖症のような方でも、AIに非常に詳しかったり、あるいはプログラマーとして超一流のスキルを持っている人であれば、積極的に採用しようという姿勢に変わっています。
ですから、コンサルティングファームへの転職を志す方は、その準備として「ビジネスオペレーター」と「バリュークリエイター」「ピープルデベロッパー」の三角形を大きくするか、あるいは、自分は専門性を極めたい、その方が向いているという方は「バリュークリエイター」としての能力をとことん磨いてそれを訴えることも1つの方法だと思います。
時代が変化しようとも、懸命に勉強し続けることが
コンサルタントとしての存在価値を担保する
―いま安間さんから、コンサルティングファームに転身するには「バリュークリエイター」を究めるのも有力だというお話がありましたが、提供すべき「バリュー」というのは時代に応じて変化しています。それをどう捉えて自分の武器にしていくかが重要ですね。
その通りで、社会に必要とされる「バリュー」は大きく変化しています。少し前までは、あと10年ほどでシンギュラリティが訪れるなどと言われていましたが、すでにAIが人間を超えようとしていて、かつて想定していた未来がまさに現実になろうとしている。
たとえばインフラの専門家として豊富な知見を蓄えていたとしても、セキュリティ監査のコンサルティングなどはAIがあっという間にセキュリティホールを探し出してくれる。そんななかで「バリュークリエイター」としてどう価値を発揮すればいいのか、確かに難しい時代になっていると思います。ただ、AIプロンプターのようなAIの専門家はいま非常に必要とされていて、どこでも引っ張りだこだと思いますね。
―これからコンサルタントを目指す方は、自分が発揮できる価値を常に意識しなければならないというわけですね。
AIの台頭によって、コンサルタントの存在価値も問われるようになっています。
たとえばこれまでのコンサルティングは、改善のターゲットとなるお客様のビジネスに対して、業務機能全体を一覧化し、詳細な業務フローチャートを作成、そこからあるべきプロセスを構築し、デジタルで全体最適を図るという取り組みを行ってきたわけですね。その能力はコンサルタントならではだと思いますが、ごく近い将来、AIができるようになるかもしれない。
ではコンサルタントだから発揮できる価値は何かといえば、やはりお客様が持ちえていない知見を提供できること。
コンサルタントは、案件を通じて他社事例などの情報を吸収する機会が格段に多く、問題解決のためのナレッジも豊富に有している。お客様から、たとえば「当社のプロセスはパッチワークでつぎはぎだらけになっていて、パフォーマンスが落ちているので何とかしたい」などという相談をいただいた時、こんな解決方法がありますとすぐに提示できれば大いに信頼を獲得できる。
そのためには、事前に懸命に勉強しておかなければならず、実際に経験をしてみることはもちろん、書籍やネットからの情報でも追体験でもいいので、ある程度の知識を蓄えて、良い意味で頭でっかちになっておくことも重要だと思っています。
構成:山下 和彦
撮影:波多野 匠
※インタビュー内容、企業情報等はすべて取材当時のものです。
この記事を書いたのは・・・
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