ログラスは、プロダクトで世界を変えるという本来の醍醐味が味わえる場。
及川
まずはログラスという企業についてご紹介いただけますか。
斉藤
ログラスは「良い景気を作ろう。」というミッションを掲げ、企業のお客様に向けてクラウド経営管理システムを提供している会社です。要は経営者のみなさんが、然るべきデータをもとに意思決定できる世界を作りたいと。データに基づいて経営判断を行うのは、当たり前と言えば当たり前のことなのですが、これがみなさん意外と苦労されているんですね。ある上場企業では100人規模のエクセル部隊が管理会計のためだけに存在し、毎月2~3週間かけてガチャガチャと分析して資料を作っていたりと、もの凄いコストをかけているケースもある。逆に、そんなにコストはかけられないので、もうデータドリブンは無理だと諦めてしまい、それでも業績は伸びているので良しとしている企業もいらっしゃる。しかし、変化の激しいこの時代においては、未来を見通して現在位置をきちんと把握した上で、迅速かつ的確な経営判断を行っていくことが非常に重要になっており、簡単な設定でそれをかなえるSaaSのプロダクトを開発提供しています。
及川
設立されてもうどのぐらい経っているのでしょうか。また、現在の事業規模についても公開できる範囲で教えてください。
斉藤
設立されたのは2019年で、現時点で7年目に入っています。社員数は250名を超える規模にまで拡大し、ユーザーのお客様も大手から中堅中小まで数百社に及んでいます。また、資金調達においては2024年7月にシリーズBで70億円のファイナンスを実施し、成長を加速させているところです。
及川
続いて、斎藤さんご自身の経歴をご紹介いただけますか。
斉藤
私は大学時代にAIの研究に取り組み、なかでもディープラーニングを究めようとしていました。在学中の2012年にImageNetを用いた画像認識のコンテストである“ILSVRC”に研究室の面々と出場し、世界2位になったことも。ちなみにその時の1位が、AI研究の第一人者で、2024年にノーベル物理学賞も受賞したジェフリー・ヒントン博士が参画していたチームで、とんでもないイノベーションを生み出して世界を騒がせたんですね。それに触発されてディープラーニングにいっそう傾倒し、画像から動画へと対象を拡張して、野鳥の動画から種類を識別するAI研究に没頭。とても面白かったのですが、このシステムが世の中に与えるインパクトがあまりイメージできず、ちょっと悶々としていた頃、スマートフォンの可能性のほうに惹かれ始めたんですね。当時、スマホのアプリゲームが盛り上がっていて、これからは教育にもICTが活用できるのではと考え、友人と一緒に英語学習アプリのmikanを開発する会社を起業したのが社会人生活のスタートです。
及川
mikanは私もかつて利用したことがあります。UIに非常に優れたアプリだという印象でしたが、斉藤さんが開発されたのですね。
斉藤
うれしいことにmikanは現在も多くのユーザーの方々に利用いただいています。マネタイズするのは大変でしたが、何とか目途がついたタイミングで私は離脱し、Fringe81というベンチャーに参画。そちらでUniposというHR系のSaaSをゼロから立ち上げて子会社化し、その代表を務めました。Uniposはピアボーナスという、従業員同士が感謝や称賛のメッセージとともに少額のインセンティブを送り合う仕組みを実装したプラットフォームで、これを通して感謝・称賛の文化を築くことで人と組織をより良く変えていくことを目指していましたが、最終的に大きな事業の柱となり、Uniposに経営資源を集中する形でFringe81と統合。以降のオーナーシップはFringe81の創業者の田中(弦氏)に委ね、私はまた新たな機会を求めて2023年にログラスにジョインし、現在はCPOとしてプロダクト開発を統括しています。
及川
斎藤さんはまだお若いにもかかわらず、これまでのキャリアをうかがうと本当に密度の濃い人生を送られていて、少し失礼な言い方をさせていただければ、生き急いでいるようにもお見受けします。何が斉藤さんをそこまで駆り立てているのでしょうか。
斉藤
これまでいろいろなことに挑戦してきましたが、私はまだ何者でもありませんし、まだ何も成し遂げていないという気持ちしかありません。かつて私が衝撃を受けたのが、スティーブ・ジョブズのiPhone発表時のプレゼンでした。電話と携帯音楽プレーヤーとインターネット端末がひとつになる世界が示され、まだ学生だった私はとても胸が躍りましたし、そしてiPhoneは実際に私たちの生活を一気にアップデートしました。そんな人々の暮らしを変えるようなプロダクトに自分が関われたら、どんなにカッコいい人生だろうと夢想するようになり、それがいまの私につながっています。そして、社会に出てからも面白いプロダクトを作ることに打ち込んできましたが、mikanにせよUniposにせよ、自分が掲げたビジョンやミッションに共感してくださるユーザーが現れ、このプロダクトのおかげで人生が豊かになったという声もたびたびいただいたんですね。こんなに素敵な仕事はないと思っていますし、そんな体験をもっともっと得たいといま人生を送っている感じです。
及川
その感覚はプロダクトマネージャー(PdM)としてとても大切なことだと思います。何か新しいプロダクトを世の中に送り出し、ユーザー一人一人が喜んで使ってくれて日々の暮らしがアップデートされ、それが積み重なることで世界は変わっていく。それを夢見ることがPdMの最も大きな原動力ではないかと私も考えており、いまの斉藤さんのお話にはとても共感します。
斉藤
これほど面白い仕事はないと思うんですね。こんな世界を創りたいと自分が描いた絵を実現できる可能性にあふれているのがPdMであり、さまざまな壁を突破して理想をかなえていくことに、この仕事の本懐があると思っています。