INTERVIEW

INTERVIEW 031

2024 Apr 25

“エンタープライズ×SaaS×生成AI”の領域で、
社会課題を解決するプロダクトを生み出していく。

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PROFILE

株式会社エクサウィザーズ
常務取締役 Exa Enterprise AI 代表取締役 大植 択真 氏
Exa Enterprise AI 新規プロダクト企画開発部 部長 祖父江 雄介 氏
エクサウィザーズ HR Tech事業部 プロダクト企画部 部長 上峠 隆行 氏

Profile詳細

大植 択真氏
京都大学工学研究科修了。2013年、ボストンコンサルティンググループに入社。事業成長戦略、事業変革、DX推進、新規事業立ち上げなどの多数のプロジェクトに従事した後に2018年、エクサウィザーズ入社。2019年4月より、AI事業管掌執行役員として年間数百件のAI導入・DX実現を担当。企業の経営層や管理職向けDX研修の講師実績が多数ある。2020年6月に取締役、2023年6月に常務取締役就任。同年10月より新会社「株式会社Exa Enterprise AI」の代表取締役社長に就任。

祖父江 雄介氏
グリー株式会社にて業界団体の設立・運営、コンテンツ企画運営に携わる。株式会社KINTOにて新規事業の立ち上げ。2021年株式会社エクサウィザーズにPdMとして入社。exaBase FAQの事業責任者、exaBase IRアシスタントの立ち上げおよび事業責任者を経て現在は新規プロダクトの立ち上げを推進中。

上峠 隆行氏
慶応義塾大学にて経済学を専攻。アクセンチュアにて新規事業戦略立案、事業計画策定、実行計画立案・推進を実施。 2社目のリクルートでは、中・長期事業計画から構造優位戦略の策定/新規事業企画立案などのプロジェクトをリード。 現在はエクサウィザーズにてPdM兼コンサルタントとして、プロダクト企画戦略・開発ディレクションだけにとどまらず、大手企業のコンサル、営業戦略・推進、事業提携+新規事業創出にかかるMVP開発に至るまで幅広く業務に従事 。

生成AIをどうプロダクトに組み込んでいくかが、いまの大きな課題

及川

まずは、エクサウィザーズでみなさんが担われている業務についてご説明いただけますか。

大植

現在、エクサウィザーズ本体の取締役として主に事業を担当するとともに、昨年設立されたグループ会社のExa Enterprise AIの代表を務めています。Exa Enterprise AIは、昨今非常に高まっている生成AIへのニーズに応え、この領域で新たなサービスを企画・開発・提供するために起ち上げた企業です。

祖父江

いま大植より話のあったExa Enterprise AIに私は在籍しています。“exaBase IRアシスタント”という企業のIR向けSaaSアプリケーションのプロダクトマネージャー(PdM)を担いつつ、このたび新規のプロダクトを開発する部署が社内で発足し、そちらの部長とPdMを兼務しています。

上峠

私はエクサウィザーズが提供する“exaBase DXアセスメント&ラーニング”のプロダクトマネージャーを包含する企画系組織の部長を担っています。こちらは、すでに15万人以上にご活用いただいているDX人材育成のプラットフォームであり、アセスメントと生成AIによるあるべき像設計を強みとした人材育成プラットフォームを起点に、タレントマネジメント領域にもサービスを拡大しているところです。

及川

いまみなさんからのお話の中にもありましたが、あらためてエクサウィザーズという企業についてご紹介いただけますでしょうか。

大植

我々エクサウィザーズは、大きくAI プラットフォーム事業とAIプロダクト事業の二つのビジネスを展開しています。AIプラットフォーム事業は、主にエンタープライズの大企業のお客様に向けて、個社の経営課題をAIで解決していくサービスを提供しており、前段のコンサルティングからAIの企画・開発・導入、さらにその運用まで一気通貫で手がけています。こちらの事業は年間で300を超えるプロジェクトを実施しており、そこで築いたAIのアセットをexaBaseというプラットフォームの中にストックする形をとっています。ですから、プロジェクトをデリバリーすればするほど、過去のアセットを再利用できるので生産性が上がっていく特徴的なモデルとなっています。そして、このAIプラットフォーム事業を推進するなかで見えてきた汎用的な課題や共通のニーズに対して、exaBase上でAIサービスを開発しているのがAIプロダクト事業です。こうして大企業向けのAI開発を手がけつつ、そのプロジェクトで得た知見を汎用化してSaaSにするという、非常にユニークなビジネスモデルを展開しています。特に最近は生成AIへのニーズが急速に高まっていて、さまざまなプロダクトの中に生成AIを組み込んでいくことにチャレンジしています。本日同席しているPdMの祖父江と上峠も、生成AIをどうプロダクトに活用していくかに知恵を絞り、日々奮闘しています。

及川

少し抽象的な質問になりますが、AIプロダクトの企画開発は、通常のプロダクトを比較してどのような点が異なっているのでしょうか。

大植

当社が提供するプロダクトは“エンタープライズ×アプリケーション(SaaS)×AI”であり、大企業のユーザーに対する理解が求められることはもちろん、AIが絡んでくるのでデータ戦略も重要です。お客様に使っていただくことで蓄積されるデータをAIでさらに回していくという、このSaaS とAIの掛け合わせが非常に難しいのですが、だからこそチャレンジングで面白いプロダクトだと思います。また、こうしたプロダクトを開発するにあたっては、SaaSの開発するのが得意なソフトウェアエンジニアの力も必要ですし、機械学習が得意なマシンラーニングエンジニアの力も必要。専門性がまったく異なる人材をうまくマネジメントし、多様なメンバーが集うチームを統率し、一つのプロダクトを作り上げていくことも、当社のPdMの醍醐味だと思いますね。

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前例のないプロダクト開発を、スピード感をもって成し遂げていく

及川

祖父江さん上峠さんは、AIプロダクトを開発する難しさや面白さを、どのように感じていらっしゃいますか。

祖父江

我々はChatGPTが登場した際、いち早く生成AIを活用したアプリケーションの開発に取り組んだのですが、ChatGPTのAPIを組み込んだ前例がなく、まったく手探りでのスタートでした。従来のアプリケーション開発の知見だけではカバーできず、生成AIを扱うのはいつもゼロから試行錯誤する難しさを味わっています。さらに、モックを作った段階でエンジニアのローカル環境ではうまく動いても、アプリケーションにすると再現性がとれないことがたびたびある。それも生成AIのアプリケーションならではだと思いますが、それをクリアしていくことに逆に面白さを感じています。

上峠

私の場合、生成AIは技術の進化のスピードが非常に早いので、それを楽しみながら開発に取り組んでいます。以前、GPT-4ベースで企業の採用業務を効率化するプロダクトを作ったのですが、目的のアウトプットを生成するのにかなりの時間を要し、これを突破するにはアーキテクチャを考え直さなければと議論していたところ、GPT-4 Turboが登場して一気に問題が解決した。そのスピード感は非常に刺激的で、絶えずテクノロジーの進化をキャッチアップしなければならない大変さはありますが、これまで人の手を介してコンサルティングしなければ解決しなかった課題も、プロダクト化していける世界が訪れていることに、とても楽しさを感じています。

及川

それでは、御社のPdMは具体的にどんな役割を担い、どのようにプロダクト開発を進めているのか教えていただけますか。

上峠

私が関わる“exaBase DXアセスメント&ラーニング”でいえば、すでに大企業をはじめとした多くの企業様に利用いただき、市場としても、競合他社が現れるフェーズに入っています。ですから、プロダクトの中長期的なロードマップを描き、市場における競合の動向も見ながらスコープを定めて開発をコントロールする役割を私は担っています。そしてプロダクトの機能をいくつかの塊に分け、それぞれを担当するPdMを配下に抱えています。彼らがロードマップに沿って取り組むべきことの優先度を決め、要件を定めてエンジニアとタッグを組み、プロダクトをごりごりと作り込んでいます。

及川

先ほど、生成AIを使った新たなプロダクトの開発に取り組まれているというお話がありましたが、それは誰がどんな形で発案されているのでしょうか。

祖父江

私が手がけた“exaBase IRアシスタント”を例にお話をさせていただくと、このプロダクトが生まれたのは社内のIR部が抱えていたペインを解消するためでした。当社のIR部は小所帯で投資家対応の煩雑な業務を担っており、大きな負荷がかかっていたんですね。かつ、企業のIRというのはテクノロジーの活用が遅れていた分野であり、そこに機会を見出して開発に着手。IR部長に徹底的にヒアリングし、どんな機能が必要なのか、どんな体験が望ましいのかを探索してプロダクトを作っていきました。そして、このプロダクトで実現できることを外部の企業のお客様に提示し、コミュニケーションを重ねて新たなユーザーペインを見出し、改善を図っていった感じです。まだ0→1のフェーズでしたので、この一連のプロセスをPdMの私がほぼ一人で担いました。

及川

この“exaBase IRアシスタント”は、どのような機能を持つプロダクトなのでしょうか。

祖父江

“exaBase IRアシスタント”は、生成AIを使って企業のIR業務を支援するものであり、株主総会や決算説明会での想定問答集を自動生成する機能から始まり、そこで蓄積されたデータをもとにChatGPTが投資家とのコミュニケーションを担うまでに進化しています。

及川

生成AIは、アウトプットのクオリティが必ずしも100%保証されるものではないという課題がありますが、そこに対してはどのような工夫をされているのでしょうか。

祖父江

ヒューマン・イン・ザ・ループという考え方をアプリケーションの中に組み込んでいます。AIに仕事を完全に任せるのではなく、人間とAIが協働できる枠組みでアプリケーションを開発しています。たとえば、AIが想定問答集を生成するにあたって、AIが回答を生成する過程を可視化できるようにしており、人間がとるようなアクションをアプリケーション上に再現しているので、ユーザーの方々も是非を判断しやすい仕掛けになっています。我々が向き合っているお客様全員がテクノロジーに精通しているわけではなく、むしろAIに対して不安や恐怖を抱かれる方々も多いので、AIというテクノロジーを使うことのハードルを下げる体験を提供するように意識しています。

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コンサルティングで得た汎用的な知見を、プロダクト化していく

及川

冒頭、エクサウィザーズの事業はAIプラットフォームとAIプロダクトの二つがあり、前者のAIプラットフォーム事業は個社対応のコンサルティングから手がけているというお話がありましたが、そのコンサルティングとプロダクト開発はどのように関連しているのでしょうか。

上峠

当社の特徴として、コンサルティング部隊とプロダクト開発部隊が密に連携しており、それが他のSaaSプロダクトを手がける企業とは大きく異なる点だと思います。先ほど私がPdMを務めるプロダクトは、タレントマネジメントの領域にサービスを拡大しているとお話ししましたが、その前段として、ある企業において求められる人材の能力やスキル、経験を明確にする人材要件定義のコンサルティングを長らく実施していました。当社が提供する個社対応のコンサルティングは、それだけで相当の報酬をいただく案件なのですが、ここで策定した人材要件の大部分は他の企業にも当てはまるものであり、その最大公約数的なところを取り出して、コンサルタントと一緒に生成AIを使ってプロダクト化したんですね。コンサルティングを通して個社の課題を解決していくという営みを、プロダクトに載せて展開していくことで、より多くのお客様に価値を提供することができる。こうした動き方ができるのが、エクサウィザーズならではの稀有な魅力だと思っています。そしてプロダクト化した後は、今度はカスタマーサクセスと連携してお客様に使っていただくための活動も担い、その過程で発覚した新たなニーズを吸収し、優先順位をつけてどんどん改善しています。

及川

いまお話があったように、コンサルティングで得た知見をプロダクト化することが御社の大きな特徴であり、理にかなった事業展開だと思いますが、同様のビジネスモデルを持つ企業はあまり見受けられません。それはなぜなのでしょうか。

大植

そもそも大企業に新たなSaaSプロダクトを導入ししっかり活用いただくということが、実は難易度の高いチャレンジだと思います。当社がそれを果たせるのは、エンタープライズを理解することに長けたコンサルタント人材と、それを汎用化することに長けたプロダクト人材が共存する組織になっていて、大企業の業務を理解した上でプロダクト化することをチームで実行できる体制が整っているから。異なるカルチャーを持つ人材をマネジメントするのは非常に難しいのですが、我々は敢えてそこに挑んでいます。

及川

おそらく、短期的にはコンサルティング事業のほうが収益を上げられるので、そのうま味に抗えずにリソースを集中しがちな企業も多いなか、御社は長期的な視点を持ち、かつプロダクト事業をしっかりと育てていくことを会社の軸としているので、こうした体制を維持できているのではないかとお見受けします。

大植

おっしゃる通りで、我々は「AIを用いて社会課題解決を通じて幸せな社会を実現する」というミッションを掲げています。このミッションは、個社の課題を解決していくだけでは絶対にたどり着けない。社会課題を解決するにはプロダクトが必要だという思想であり、当初からプロダクトで事業をスケールさせていく戦略を推進しています。ただ、社会に大きな影響を与えている大企業のニーズを深く理解しておいたほうが、その後に汎用化して大きく展開できるという考えのもと、いわゆるマーケティングやR&D機能としてAIプラットフォーム事業をまず立ち上げたのです。当社においてコンサルティングはあくまで手段であり、そこから社会課題を解決するプロダクトをつくることが本来の使命なので、その主従が逆転しないようにしています。

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生成AIを扱う醍醐味を堪能できるのは、いまこのフェーズしかない

及川

御社で活躍できるPdMの人材像について、お考えを聞かせていただけますか。

祖父江

生成AI関連のPdMに関して言えば、まず生成AIに興味があることが大前提ですが、世の中に溢れるさまざまなアプリケーションに触れるのが好きであることが大切だと思います。そうした体験を通して、その人なりのUIやUXの思想を持っていることが、新しい何かを作るにあたって非常に重要になる。あと、PdMというのは必ず周囲と協業する仕事なので、その人自身の魅力も大事だと思っています。一緒に働いていて楽しい、チャーミングな人に仲間になっていただきたいですね。

上峠

多くのPdMの働くモチベーションはお客様に満足いただくことに置いている方が多いと思います。私も新しいサービスや機能がお客様に活用され始める瞬間が一番うれしいです。そういった点を基本としながらも、加えて、市場に絶えず出現する競合の状況も考慮しながら、お客様の満足をきちんとマネタイズする視点が重要だと私は考えています。社会課題の解決は、世の中たくさんのユーザーにプロダクトを使ってもらいながら、事業の売上に繋がっていく中で継続的に実現していくものだと考えています。なので、PdMにも顧客視点はもちろんのこと、事業目線も備えた方、もしくはこれから備えたいと思っている方に参加してほしいと思っています。

大植

二人の話に補足させていただくと、私はマネジメントを「人を介して事を成す」ことだと思っていて、「事を成す」は事業による目的・目標を達成することであり、他方人間1人では何もできないので、「事を成す」には「人を介して」なさなければならない。そういった意味で、私が面接で重視しているのは、どれだけ本質的にコトに向き合えるか、そしてそのプロセスを楽しめるかということ。もうひとつ、「人を介して」の部分について、当社は国籍も含めて多様な人材が集っており、PdMは専門性や価値観の違うメンバーを束ねていかなければなりません。そこで重要なのは、先ほど祖父江が話したチャームにもつながりますが、「人間力」だと思っています。

及川

ありがとうございます。それでは最後に、エクサウィザーズに興味をお持ちのみなさんに、それぞれメッセージをいただければと思います。

大植

エクサウィザーズは、「AIを用いた社会課題解決を通して幸せな社会を実現する」というミッションの実現に本気で挑んでいます。そのためには、社会課題解決につながるプロダクトを次々と世の中に送り出し、多くの人に使っていただける世界をもたらさなければならない。これからさらに新たなプロダクトを作っていく方針であり、特に生成AIの領域で0→1、1→10、10→100を経験したいというPdMの方は、非常にスピード感ある面白いマーケットで仕事ができると思います。

上峠

我々がまず取り組んでいるDX人材育成のマーケットは日本において約5000億円ほどだと言われています。
人材育成マーケット自体は労働集約的な市場ですが、アセスメント設計×生成AI等を活用したプロダクト構築×コンサルティング力の3つの強みを持ったエクサウィザーズは市場で唯一無二の存在ですし、そういった強みがあるからこそ、マーケットを変革できると思っています。
さらに言うと、我々の価値が評価されて世界的なコンテンツプラットフォーマーの方ともいま密にアライアンスを組ませていただき、もはや無敵の状態になっている(笑)。こうして5000億円のマーケットを制した後、これから挑むタレントマネジメント市場は世界で数兆円規模であり、さらに拡大していくと目されているので、こうした巨大なステージで戦って勝ち抜いていきたい方に参加していただきたいですね。

祖父江

生成AIという未知の新しい技術を扱い、そのなかでまだ世の中で誰も気づいていないニーズを自分たちで創出し、それに応えるプロダクトを展開して正義にしていくような面白さは、いまこのフェーズでしか味わえないと思います。エクサウィザーズは、それこそ機械学習エンジニアもソフトウェアエンジニアもデザイナーもみな優秀で、多様なメンバーとともにチームで新しいものを作り上げていくことができる。それが当社で働く醍醐味であり、興味をお持ちの方はぜひご検討いただければと思っています。


構成:山下和彦
撮影:波多野 匠

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※インタビュー内容、企業情報等はすべて取材当時のものです。

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