あくまでも患者ファーストで体験を設計し、DXで実現していく。
及川
まずはLinc’wellについてご紹介いただけますか。
原
Linc’wellは2018年に創業したヘルスケア領域のスタートアップです。現在、「クリニックへのDX支援」「オンライン診療」「ヘルスケアEC」の大きく3つの事業を展開しています。
祖業はクリニックへのDX支援ですが、その後、コロナ禍でオンライン診療の初診解禁や規制緩和されたことを受けて、オンライン診療のプラットフォーム構築に注力しており、並行してヘルスケア関連製品のECも始めました。
及川
いまお話のあった「クリニックへのDX支援」とは、具体的にどのような取り組みでしょうか。
原
弊社は現在、全国で10院のクリニックを展開する「クリニックフォア」のDXを支援しています。クリニックフォアさんは、オンラインでの予約や事前問診が可能で、待ち時間ゼロで受診できる医療環境を実現するなど、患者体験の向上にフォーカスしているクリニックです。そちらでお使いいただいている各種のシステムを我々が開発提供しています。
及川
オンラインの予約・診療システムなど医療に関わるDXは、いま注目度の高い領域であり各社取り組んでいますが、そのなかでLinc’wellはどんな特徴をお持ちなのでしょうか。
原
患者さんファーストで体験設計を追求していることでしょうか。単なる業務効率化ではなく、患者体験を良くしたいというクリニックさんと一緒に、患者視点でいままでにないユーザー体験を創り出していることが我々の特徴だと思っています。
すでにオンライン予約を実施している医療機関もたくさんありますが、たとえば朝9時に予約しても実際の受診まで15分か20分待たされたりするケースも多く、実はストレスを感じている患者さんも多い。我々は、そうしたことが起きないように業務設計から関わり、医師のシフト管理などをプロダクト上で最適化し、9時に予約すれば確実に9時から診療を受けられる体制を実現しています。
及川
現在はクリニックフォアさんと連携して新たな患者体験を創出されているとのことですが、このプロダクトを横展開することは可能なのでしょうか。
原
可能ですが、けっしてそれを優先しているわけではありません。我々としては、より多くの医療機関に使っていただきたいという想いはあるものの、患者さんファーストの体験を提供するにはオペレーションの変革が必要であり、一般的なSaaSではそこまで踏み込みにくい。
ですから、まずは我々のコンセプトに賛同いただける医療機関さんと理想の体験を机上で描くだけではなく、実際に世の中に提供していくことにこだわっています。
及川
先ほどご説明いただいた3つの事業のうちで「ヘルスケアEC」は、新たな患者体験を提供するという方向性から少し外れているように映ります。この事業はどのようなお考えのもとで取り組まれているのでしょうか。
原
「ヘルスケアEC」では、医師の問診が必要なクリニック専売商品やOTC医薬品などを扱っています。おっしゃる通り、他の二つとは少し方向性が異なりますが、これもLinc’wellのミッション・ビジョンに通じるもの。我々は「テクノロジーを通じて、医療を一歩前へ」というミッションと、「全ての人々に最高の医療体験の提供」というビジョンを掲げています。
このミッション・ビジョンの実現を通して目指しているのは、すべての方が自身の心身を最善の状態に能動的にコントロールできる世の中。弊社が提供するプラットフォームのアカウントを持っていれば、病める時も健やかなる時も、ご自身に必要なモノやサービスや情報が手に入るという、そんな状態にすることがあるべき姿だと捉えています。
対面診療やオンライン診療は、治療のニーズが顕在化しているフェーズで必要とされるものですが、未病や予防のフェーズでは価値を提供しづらい。そこに価値を提供するための事業が「ヘルスケアEC」であり、ポートフォリオのひとつとして必要だと考えています。
