日本のオフィス不動産市場に大きな可能性を見出し、三菱地所出身者が創業。
及川
まずはestieが手がけている事業についてご紹介いただけますか。
中村
estieは不動産テック領域でサービスを展開している企業です。不動産業とITをかけ合わせることで、業界全体の価値向上を図ろうとしています。なかでもオフィス不動産に特化しているのが特徴であり、この市場が抱える課題に着目して事業を営んでいます。
オフィス不動産に関わるプレイヤーは大きく分けて、ビルのオーナー、入居されるテナント、仲介会社と3者存在しているのですが、従来のマーケットは情報の非対称性があり、業界が持つ本来の力を発揮できない要因の1つではないかという仮説を立てて、プレイヤー間の情報流通が滑らかになるような事業を行っています。
その一環として現在主力となっているのが「estie pro(エスティプロ)」というプロダクトです。
このプロダクトでは主にオーナー側の目線に立ち、彼らが本当に求めている競合他社や市場の情報を我々が収集し、最適に可視化して提供することでオーナーサイドの課題解決を図っています。
及川
オフィス不動産にサービスを特化したのはどうしてですか。
中村
米国ではオフィス不動産投資に必要な情報が容易に入手できるサービスが整備されており、サービスにアクセスすると東京にいても現地の状況がすぐに分かる状況になっております。一方、日本にはそうしたサービスがまだ存在せず、不動産投資の市場に課題を感じていました。それを解決することに大きなビジネスチャンスを見出して、オフィス不動産に特化したestieの起ち上げに至りました。
及川
お二人のご経歴を教えていただけますか。
岩成
私はestieで現在、取締役CTOを務めています。以前はIndeed Japanに勤務し、エンジニアとして求人関連情報の検索サイトの開発に携わっていました。インターネット上にある求人情報を取集し、インデックス化してユーザーに届ける仕組みを作っていましたが、estieもオフィスの募集情報を毎日集めてユーザーに届けるプロダクトを手がけており、ターゲットが求人情報からオフィス情報に変わったという感じです。
当初、プロダクト開発の責任者として参画しましたが、estieのテクノロジー全体を指揮するミッションを託され、2021年にCTOに就任しました。
私は学生時代からずっと情報工学を究めており、大学在籍時に子供向けのプログラミング教材を開発して学生起業をした経験もあります。しかし、ハードウェアを取り扱っていたこともあり収益がなかなか上がらず、事業として軌道に乗せることはできませんでした。卒業後はIndeedに入社して引き続きプロダクト開発に携わりましたが、そこで得た知見をさらに深めてestieの事業成功に貢献できればと思っています。
中村
私はプロダクトマネージャー(PdM)を務めています。なかでも新事業の起ち上げを担い、新規のプロダクト開発をリードしています。前職は、代表の平井と同じく三菱地所に勤務し、業界の当事者として不動産事業の内側に携わっていました。そこで私もこの事業が抱える問題を認識するようになり、代表に誘われて第一号の社員として入社したのです。
実は学生時代は物理を専攻し、研究活動の中で自分でコードを書いて画像処理をしていました。その技術をもとに大学院在学中、IPA(情報処理推進機構)の未踏IT人材発掘・育成事業に応募して採択され、小さい頃から嗜んでいた書道の知見を活かして「誰でも字が上手になるアプリ」を開発したことがあります。そこで、ITと何かをかけ合わせることに大いに面白味を感じ、その舞台として不動産業界を就職先に選びましたが、estieならばITと不動産をかけ合わせることでより大きな価値を創り出せそうだと当社に参画しました。