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INTERVIEW

INTERVIEW 023

2022 Sep 05

枠にとらわれず、ビジネス・開発・ユーザーのすべてに深く関わり、
日本の巨大な不動産市場を変えるプロダクトを創り出す。

株式会社estie
取締役CTO 岩成 達哉氏
プロダクトマネージャー 中村 優文氏

PROFILE

株式会社estie
取締役CTO 岩成 達哉氏
プロダクトマネージャー 中村 優文氏

CTO 岩成 達哉氏(右)
松江工業高等専門学校で情報工学を学び、高専在籍時に開発したプログラミング教育教材をもとに東京大学工学部在学中に起業。修士課程修了後Indeed Japanに入社し、ウェブ上の求人募集情報を集めて提供するデータパイプラインの開発に従事。2020年10月にestieへVP of Productsとして参画し、2021年8月にCTOへ就任。開発部門を統括してプロダクト連携の設計や、新規プロダクト開発を行う。

Product Manager 中村 優文氏(左)
早稲田大学大学院在学中に、経済産業省所管の情報処理推進機構が主催し実施している未踏事業で「文字を手書きで美しく書くためのソフトウェア」を開発、スーパークリエータに認定。大学院卒業後、三菱地所に入社し物流施設事業部にて物流施設の開発・売却を担当。2019年6月よりestieに入社しプロダクトマネージャーとして主力事業「estie pro」のプロダクト開発に従事。現在はプロダクトマネージャーとして新規事業のプロダクト開発を推進。

INTERVIEWER

及川卓也 プロフィール

及川卓也 プロフィール

MicrosoftにてWindowsおよびその関連製品の開発を担当した後、Googleに転職し、ウェブ検索やGoogleニュースのプロダクトマネジメントやGoogle Chromeのエンジニアリングマネジメントに従事。その後、Qiitaの運営元であるIncrementsに転職。独立後、プロダクト戦略やエンジニアリング組織作りなどで企業への支援を行うTably株式会社を創業。2017年よりクライス&カンパニー顧問。

及川卓也について READ MORE

日本のオフィス不動産市場に大きな可能性を見出し、三菱地所出身者が創業。

及川

まずはestieが手がけている事業についてご紹介いただけますか。

中村

estieは不動産テック領域でサービスを展開している企業です。不動産業とITをかけ合わせることで、業界全体の価値向上を図ろうとしています。なかでもオフィス不動産に特化しているのが特徴であり、この市場が抱える課題に着目して事業を営んでいます。

オフィス不動産に関わるプレイヤーは大きく分けて、ビルのオーナー、入居されるテナント、仲介会社と3者存在しているのですが、従来のマーケットは情報の非対称性があり、業界が持つ本来の力を発揮できない要因の1つではないかという仮説を立てて、プレイヤー間の情報流通が滑らかになるような事業を行っています。

その一環として現在主力となっているのが「estie pro(エスティプロ)」というプロダクトです。

このプロダクトでは主にオーナー側の目線に立ち、彼らが本当に求めている競合他社や市場の情報を我々が収集し、最適に可視化して提供することでオーナーサイドの課題解決を図っています。

及川

オフィス不動産にサービスを特化したのはどうしてですか。

中村

米国ではオフィス不動産投資に必要な情報が容易に入手できるサービスが整備されており、サービスにアクセスすると東京にいても現地の状況がすぐに分かる状況になっております。一方、日本にはそうしたサービスがまだ存在せず、不動産投資の市場に課題を感じていました。それを解決することに大きなビジネスチャンスを見出して、オフィス不動産に特化したestieの起ち上げに至りました。

及川

お二人のご経歴を教えていただけますか。

岩成

私はestieで現在、取締役CTOを務めています。以前はIndeed Japanに勤務し、エンジニアとして求人関連情報の検索サイトの開発に携わっていました。インターネット上にある求人情報を取集し、インデックス化してユーザーに届ける仕組みを作っていましたが、estieもオフィスの募集情報を毎日集めてユーザーに届けるプロダクトを手がけており、ターゲットが求人情報からオフィス情報に変わったという感じです。

当初、プロダクト開発の責任者として参画しましたが、estieのテクノロジー全体を指揮するミッションを託され、2021年にCTOに就任しました。

私は学生時代からずっと情報工学を究めており、大学在籍時に子供向けのプログラミング教材を開発して学生起業をした経験もあります。しかし、ハードウェアを取り扱っていたこともあり収益がなかなか上がらず、事業として軌道に乗せることはできませんでした。卒業後はIndeedに入社して引き続きプロダクト開発に携わりましたが、そこで得た知見をさらに深めてestieの事業成功に貢献できればと思っています。

中村

私はプロダクトマネージャー(PdM)を務めています。なかでも新事業の起ち上げを担い、新規のプロダクト開発をリードしています。前職は、代表の平井と同じく三菱地所に勤務し、業界の当事者として不動産事業の内側に携わっていました。そこで私もこの事業が抱える問題を認識するようになり、代表に誘われて第一号の社員として入社したのです。

実は学生時代は物理を専攻し、研究活動の中で自分でコードを書いて画像処理をしていました。その技術をもとに大学院在学中、IPA(情報処理推進機構)の未踏IT人材発掘・育成事業に応募して採択され、小さい頃から嗜んでいた書道の知見を活かして「誰でも字が上手になるアプリ」を開発したことがあります。そこで、ITと何かをかけ合わせることに大いに面白味を感じ、その舞台として不動産業界を就職先に選びましたが、estieならばITと不動産をかけ合わせることでより大きな価値を創り出せそうだと当社に参画しました。

顧客と密に接し、新たな課題が発掘されれば、それがそのまま新事業につながる。

及川

では、estieのプロダクトマネジメントについて具体的にお聞きしたいのですが、現在、御社にPdMは何名いらっしゃるのでしょうか。

中村

私を含めて2名います。弊社ではプロダクトによって事業を分けており、それぞれPdMがアサインされています。

及川

御社におけるPdMの仕事の内容を教えてください。

中村

ひとことで言えば、プロダクト開発の方向性を各ステークホルダーと合意形成し、決定したことをドライブするのがPdMの仕事です。弊社は目標管理にKPI /KGIのフレームワークを使っているので それに基づいて達成に向けてのロジックを作り、ロードマップ等によって経営陣や開発チームと合意しています。

開発のドライブにおいては、弊社はスクラム開発を採用しているので、そのプロダクトオーナーとなりチケットの起票やバックログの優先度の管理などを行います。我々のプロダクトはドメインに特化しており、なかには不動産業界への理解がまだ浅いエンジニアもいるので、ユーザーの課題感がチーム全体の共有値になるような仕組みを心掛けています。実務としてはPRD(製品要求仕様書)の作成が多いでしょうか。社内で定めたフォーマットに則ってドキュメントを書いていく方式をとっています。

及川

さきほど、中村さんが新規事業を担当し、新たなプロダクトの開発をリードされているとのお話でしたが、御社ではどのようなプロセスで新規事業を起ち上げているのでしょうか。

中村

既存のプロダクトを開発していくなかで、既存プロダクトだと解決できない課題が見えてくると、それが新規事業を起こすきっかけとなります。いま我々が提供している既存のプロダクトは、あくまで市場の情報を知るもので、ユーザーはその情報と自らの状況を比較して意思決定していくことになります。

一方で、市場の情報が手に入っても、自分たちの情報が整理されていなければ正しく意思決定できない課題が見えてきました。既存プロダクトのユーザーと関わるなかで、そうした課題が明らかになり、我々がユーザーの情報整理まで支援すべきではないかと判断して、新たなプロダクトの開発に乗り出したのです。

そこから、ヒアリングを重ねて作るべきプロダクトを明確にし、いまはビジネス側のメンバーと一丸となってユーザーへの仮説検証をすすめております。MVPを定義し、ユーザーに使っていただきながら検証を重ねてプロダクトを成長させていく方針です。

岩成

我々のプロダクトの根底には、estieが掲げる「産業の真価を、さらに拓く。」というパーパスがあります。我々は日本の伝統的な産業を否定するわけではなく、テクノロジーの力でその産業のポテンシャルをさらに引き出していきたいと考えています。estieが不動産業界で中長期的に実現したいのは、テナントとオフィスの最適なマッチングです。その入口としてオフィス探しのサービスからスタートしたわけですが、真にマッチングを果たすためにはサプライサイドを押さえておくことも必要で、そこから先ほど中村がお話しした新規のプロダクト開発が起ち上がったわけです。

最終的には最適なマッチングのために業界のバリューチェーン全体の中で必要な整理を行い、テナントとオフィスがスムーズに繋がる世界を実現していきます。まだまだ足りないプロダクトはたくさんあり、チャレンジすべきことが山積しています。

事業ごとにチーム型組織を構成。ビジネスとプロダクトの間に境はない。

及川

PdMの責任範囲についておうかがいします。プロダクトと事業は密接に絡んでいますが、PdMは事業に対してどのような責任を持つのでしょうか。

中村

estieは、ポジションに関係なくチーム全体で事業計画を達成しようという意識で動いています。事業ごとに構成されたチームの中で、プロダクトマネジメントトライアングルを最大化することを意識しており、PdMはそのバランスを見て、弱いところを引っ張っていくことが重要な役割となります。場面に応じて、ビジネス側に立つことも、開発側に立つことも、ユーザー側に立つこともあります。そのなかで、どのような課題をプロダクトで解決すれば事業計画を達成できるのか、その優先順位をつけて実行していくことがPdMのミッションです。

及川

岩成さんは開発部門を率いる立場ですが、estieのエンジニアはプロダクトに対してどのような姿勢で臨まれているのでしょうか。

岩成

いろいろなキャラクターのエンジニアがいますが、総じて技術力は高いと思います。いま中村と一緒に新規プロダクト開発に取り組んでいるのは「作って駄目なら壊せばいい」というスタンスのメンバーです。技術力があるので、負債が残らないように上手に開発を進めてくれています。

estieのエンジニアは、単にPdMから言われたことを形にするのではなく、最初の段階から関わって一緒に作り上げています。将来的にどのような価値提供を目指しているのかを理解しておかないと、その場しのぎの短期的なモノづくりでは負債になりかねない。エンジニアもユーザーの課題を把握し、解決のための仮説をPdMとともに立てて、確証を持ってプロダクトを実装しています。

及川

御社のようにエンタープライズ市場向けのSaaSプロダクトを手がける企業は、どうしてもセールスドリブンになる傾向があるように思います。その点について問題はありませんか。

中村

先ほどお話ししたように、estieでは事業ごとにチームを組んでおり、セールスとプロダクト開発がきわめて近い距離にあります。当社のセールスはユーザーと密な関係を構築しており、導入初期の段階からPdMをはじめエンジニアやデザイナーなど開発メンバーもユーザーとの定例会議に出席しています。セールスが不可能なレベルの期待値をユーザーと調整するようなことはなく、開発メンバーも含めてユーザーの課題を解決していく体制となっています。

及川

そのほか、プロダクト開発を成功させるうえで何か工夫されていることはありますか。

中村

estieでは、社内でVOC(Voice of Customer)の会を設け、それに則ってロードマップを作っています。このVOCの会は、セールスやクライアント・ソリューション(CS)が定例等で収集したユーザーの声を一つのバックログに蓄積し、週一回、それを全員で見るというものです。

その場で、たとえばエンジニアが「なぜユーザーがこんなことを言っているのか?」と疑問に思ったことがあれば、CSがユーザーに直接ヒアリングして回答するなど、常にユーザーの声を深掘りできる仕組みを作っています。その結果、ユーザーに取って価値のある機能になる確率を高めております。

岩成

このVOCの会に象徴されるように、estieでは全員がユーザーに向き合い、全員がプロダクトづくりに関わってビジネスを動かしています。社内のポジションにとらわれず、たとえばビジネス側のメンバーがSQLを書いてデータ分析し、プロダクトのアイデアを出すなど、各々がレバレッジを効かせて仕事ができる。それがestieで働く大きな醍醐味だと思います。

勿論失敗することもあり、以前、機能レベルでのロードマップを策定したのですが、掘り下げてみると想定以上に大変で一部を実行できないことがありました。その反省として、いまは機能ではなく状態を目指す形に変更しています。つまり “How”ではなく“What”をロードマップに掲げ、“How”についてはチームに委ねるようにしました。これもプロダクト開発のスピードやクオリティの向上につながっています。

マルチプロダクトで新規事業を起ち上げる。PdMがそれをまるごと担う。

及川

さらなる成長に向けてPdMをこれから積極的に採用されるとのことですが、estie のPdMに必要なスキルは何でしょうか。

中村

PdMに期待することはジョブディスクリプションで言語化されており、大きく3つの軸があります。「プロダクト価値にどれだけコミットメントできるか」、「ロードマップで合意形成して周囲を巻き込みながら実行できるか」、そして「自分の中で蓄積された知見をいかに仕組み化してスケールできるか」ということです。

具体的なスキルとしては、ユーザーの課題を汲み取るために、質問を適切に設計してヒアリングする力が求められます。さらに、ユーザーから得た情報を自分だけの知見に留めず、チームに展開していくアウトプットの力も必要です。

岩成

当社では、二次選考でPRD(プロダクト要求仕様書)を一緒に作成するワークを課しています。このPRDは中村が設計したものですが、どんなデータをどう分析して課題解決につながる示唆を導き出すかという、estieのPdMに求められる素養や資質をその場で判断させてもらっています。

入社時に不動産の知識は要求していません。我々が手がけているような業界特化のバーティカルSaaSは、ユーザーのほうがドメイン知識を有していることもあります。ユーザーからいかに知識を引き出して貪欲に吸収できるかが重要です。この点についても、いまお話ししたワークの中で、どのぐらいのヒアリング能力があるのかを見させてもらっています。

及川

昨今、PdMに対する企業のニーズが高まっており、人材の争奪戦になっています。御社では、別職種で素養のある方を採用したり、あるいは社内で異動させて育成することも考えていらっしゃるのでしょうか。

岩成

中村のほかにもう一人いるPdMは、もともと事業開発に携わっていたメンバーです。プロダクトマネジメントトライアングルのいずれかを担った経験のある人材であれば、その強みをもとにPdMに育成していく考えです。ちなみに彼は開発面が弱かったのですが、しばらくは中村と一緒にスクラムに参加して開発の現場を理解し、3カ月ほどで独り立ちしました。

また、不動産業界未経験者の方でも問題ありません。私もこの業界はまったくの門外漢でしたが、セールスやCSにお願いしてユーザーのオフィスにお邪魔する機会を作っていただき、リアルな業務に触れて不動産ビジネスの解像度を上げていきました。これから参画される方にも、こうした機会を積極的に提供したいと考えています。

及川

では最後にestieでPdMを担う魅力について、お二人の考えを聞かせてください。

中村

やはりユーザーとの距離がきわめて近いので、ユーザーの生の声に触れて本質的な課題を見極め、その解決に直結するプロダクトを作り出せることだと考えます。estieでは新規事業を起ち上げ、マルチプロダクトを展開しております。事業ごとにチームが組まれ、一人目PdMとしてビジネス側にも開発側にもユーザー側にも多方面に染み出してプロダクトづくりに関われます。マルチプロダクト戦略を掲げる弊社ではまだまだPdMが不足しており、、ゼロからプロダクトを作り上げるチャンスに溢れています。

岩成

estieは技術力のあるエンジニアが揃っているので、プロダクトで実現できるレベルが非常に高く、PdMとして大いに価値を発揮していただける環境だと思います。我々が関わる不動産領域は大きな可能性を秘めており、まだ誰も手がけていない問題に挑戦していく面白さがあります。

巨大な不動産業界のインフラとなるプロダクトを作り業界をアップデートすることは、そこで仕事をするテナント企業の価値向上にもつながります。社会の価値を最大化させたいという熱い気持ちをお持ちの方はぜひ一緒に事業をつくりましょう。


構成:山下 和彦
撮影:波多野 匠

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