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INTERVIEW

INTERVIEW 001

2017 Nov 22

高い志や夢を抱くことが、テクノロジーに新たなブレイクスルーを生む。

株式会社ニューズピックス
取締役/CTO
杉浦 正明氏氏

杉浦氏(ニューズピックス)のプロダクトマネージャーインタビュー

PROFILE

株式会社ニューズピックス
取締役/CTO
杉浦 正明氏氏

大学卒業後、日立ソリューションを経て、Simplex Consulting, Inc.へ入社。大手証券会社向けプロジェクトのマネージャを歴任し、高速為替取引システムの開発リーダーとしてアーキテクチャ設計に従事。2012年にトークノートに取締役CTOとして参画し、サービスの拡大に貢献。2014年にユーザベースに入社、2016年にユーザベースから分社化したNewsPicksの取締役CTOに着任。

INTERVIEWER

及川卓也 プロフィール

及川卓也 プロフィール

MicrosoftにてWindowsおよびその関連製品の開発を担当した後、Googleに転職し、ウェブ検索やGoogleニュースのプロダクトマネジメントやGoogle Chromeのエンジニアリングマネジメントに従事。その後、Qiitaの運営元であるIncrementsに転職。独立後、プロダクト戦略やエンジニアリング組織作りなどで企業への支援を行うTably株式会社を創業。2017年よりクライス&カンパニー顧問。

及川卓也について READ MORE

コメント機能やライブ配信機能を備えた、新しい経済ニュースアプリを開発。

及川

まずは杉浦さんがCTOを務められるNewsPicksについてご紹介いただけますか。

杉浦

NewsPicksは経済情報に特化したニュースサービスです。いちばんの特徴はニュースにコメントができることであり、特に「プロピッカー」と呼ばれる専門家のコメントが読めるのが評判です。
 
経済ニュースというのは、専門的な内容に通じていないとその背景までわからないことが多いと思いますが、ひとつのニュースに対して多面的な考えを提示し、読み手の理解を促そうというのがNewsPicksのコンセプトです。

及川

NewsPicksを運営されるにあたって、技術的に工夫されていることはどのようなことでしょう?

杉浦

やはり課題としては大きいのは負荷軽減ですね。朝昼晩のピークタイムには一気に負荷がかかるので、それをどう分散するか。NewsPicksはそのサービスの特性上、キャッシュヒット率が下がるんですね。
 
ニュースだけならキャッシュすれば返せるんですが、リアルタイムでどんどんコメントがつきますし、最近は経済ニュース番組のライブ配信もスタートしたので、なかなかキャッシュできずどうしても負荷が高まってしまう。
 
そこでニュース、コメント、ライブ配信それぞれにキャッシュレイヤーを設けて負荷分散を図っています。また、高速性が求められるアドサーバーは内製しています。瞬間的に負荷が上がっても5ミリ秒以内でレスポンスできるよう、そのへんは技術的にかなり頑張ってますね。

及川

NewsPicksはユーザーからのコメントをランキングされていますよね。その機能はどう実現されているのですか?

杉浦

良いコメントはなるべく多くの方に見てもらいたいので、アルゴリズムでコメントをスコアリングする工夫をしています。とはいえ、どんなコメントが良いのかという判断はなかなか難しく、アルゴリズムを日々改善しているところです。

及川

ユーザーからのコメントで、コミュニティが荒れるケースもありますよね。それを技術的なアプローチからも解決されようとしている?

杉浦

技術とコンテンツの両側のアプローチを常に考えて、ひたすらユーザーの役に立つ質の高いものを提供していこう、というのが我々の基本的な思想です。
 
たとえばプロピッカー制度も賛否ありますが、コメントの質を高めるにはどうすればいいかという課題があり、その解決策として専門家の意見をたくさん集めようという施策をみんなで議論して実践したもの。編集者やデザイナーもエンジニアも関係なく、設定された課題に対してチームで解決していくのが当社におけるサービス成長の基本スタイルです。

及川

コンテンツと技術を分けないというのは、いわば“サービスデザイン”の発想ですね。あと、個人的に知りたいのはNewsPicksがどのような技術スタックで構成されているかということですね。

杉浦

インフラはAWSを使っていますが、最近スタートしたLivePicksというニュース番組のライブ配信はMicrosoftのAzureを活用しました。

及川

Azureを選択したのはどういった思想からですか?

杉浦

ひとつはAzureはAIに力を入れていたからです。LivePicksでは字幕起こしや検索インデックスづくりにAIを活用していく予定で、Azureが持つ機能がまさにフィットしました。
 
また、AWSはIaaSから始まったのでサービス志向が薄いところがあるのですが、Azureは当初からそれが強く意識されていて、ライブ配信のようなサービスをクリックひとつですぐに実現できるような世界が築かれている。
 
特にLivePicksは準備期間がきわめて短かったので、こうした外部のクラウドサービスを使わないと物理的にもまず実現できませんでした。

及川

スタートアップの場合、内製するものと外部のリソースを使うもののバランスが難しいと思いますが、その判断基準はどこにおいていますか?

杉浦

最初から内製化を決めていたのはアドサーバーです。これはメディアの収益構造につながる重要な機能であり、自らマネタイズをコントロールできないと収益化できず、結果としてサービスの改善も果たせない。ですから、アドサーバーだけはコストをかけても内製化しようと判断しました。

及川

なるほど、アドサーバーは命綱なので、他社に任せるわけにはいかないと。

杉浦

ええ。一方、LivePicksのような新しいサービスはヒットするかどうかも不確実なところがありますし、動画の生配信は我々にとっても初めてのチャレンジだったので、そこは他社からノウハウを借りてまず立ち上げることを優先しました。

及川

そのほか、NewsPicksで使われている技術を教えていただいてよいですか?

杉浦

AWSの上ではJavaでアプリケーションサーバーを構築しています。

及川

Javaを採用したのはどのようなお考えからですか?

杉浦

私も含めて社内にJavaに通じたエンジニアが多かったというのが正直なところです。まあ、VMの処理性能も早くて信頼性も高いですし、Java8以降は文法も柔軟で、昔ほどストレスを感じないので、トータルで評価してJavaを採用しています。
 
あと近々新しいアプリをリリースする予定ですが、そこではサーバーサイドKotlinの開発にチャレンジしています。KotlinはJavaとの親和性も高く、我々がいままで蓄積したノウハウをうまく組み合わせながら開発を進めています。

ベンチャーに飛び込み、エンジニアとしてのスタンスが大きく変わった。

及川

杉浦さん自身の経歴についてもおうかがいしたいのですが、学生時代はどのように過ごされていました?

杉浦

中学生の頃、ちょうどWindows95が登場してコンピュータに興味を持ちました。まさに2ちゃんねらー世代で、中高生の頃はネットにどっぷり浸っていましたね(笑)。そのなかでちょっとしたプログラムも書いていて、将来はコンピュータに関わる仕事がしたいと考えていたのですが、私はどちらかといえば人見知りで、その欠点を何とか補わなければと思ったんです。それで、まず人の心を理解できるようになろうと、大学では心理学を専攻しました。

及川

心理学を学ばれていたのですね。それは意外でした。大学時代もコンピュータには触れていた?

杉浦

ええ、アンダーグラウンドな世界でいろいろとやっていました。ネットで変なスクリプト拾って実行したり、Linuxにも興味が湧いていろいろと弄ってました。
 
その頃、Debianの“sid”を使うのがカッコいいという風潮があって、GUIではなくCUIで2ちゃんねるを見たり……まあ、中二病をこじらせてましたね(笑)。
 
また大学の研究では、当時はコンピュータで人の心理を表現できるか、また逆に人間心理的にわかりやすいコンピュータは何かを模索する流れがあり、Webユーザビリティという概念が出始めた時期で、心理学の面からそうした領域にアプローチしていました。そこでデザイン思考などについて少し理解したように思います。

及川

社会人になられてからは、どのようなキャリアを歩まれてきたのでしょう?

杉浦

新卒で入社したのは日立ソリューションズです。
 
大企業を一度経験してみようとそちらを選んだのですが、結局、水が合わずに1年で辞めました。その後、金融系のシステムソリューションを手がけるシンプレクスに転職し、FXのパッケージの開発を担当。
 
そしてシンプレクスに8年在籍した後、当時、創業したばかりのベンチャーで、社内SNSを開発するトークノートにCTOを務めました。そこでは経営の難しさを肌で感じ、ビジネス感覚が大いに鍛えられましたね。
 
そして2014年にユーザベースに参画し、2016年からNewsPicksでCTOを務めています。

及川

これまでの転職にあたって収入にも変化があったと思いますが、そのへんはいかがでしたか?

杉浦

シンプレクスは高待遇で年収も良かったのですが、トークノートに転職して一時収入がダウンしました。でも役員を務めていたので事業が軌道に乗るにつれて報酬も上がり、かなり貰えるようになってきたところでNewsPicksに移りましたが、このときは正直あまり収入については気にしなくなっていました。

及川

そうなのですね。待遇の良かったシンプレクスを辞めるときはどんな心境だったのでしょう?

杉浦

シンプレクスを辞めたのは、これはよくあるパターンだと思うんですけど、要は自分の作りたいものが作れなかったからです。
 
前職は金融機関からの受託開発だったので、自分たちでプロダクトの方向性を決められるわけじゃない。別に受託のモデルを否定しているわけではありませんが、私としては、自分の考えたものを自分の責任で提供したいという想いがあって、それで転職を考えるようになりました。

及川

そして、最初の転職先にトークノートを選ばれた。ここにはどんなきっかけがあったのですか?

杉浦

これは「縁」ですね。実は転職を考えるようになってから、エンジニアとしてちょっと箔を付けておこうと、いろんなハッカソンイベントに参加しまくっていたんですね。
 
ハッカソンにはちょっとしたコツがあることがわかってきて、時間が限られているのでキャッチーで先進的でエッジがあるものを作ると、結構優勝できてしまったりするじゃないですか。

及川

私もハッカソンの審査員を務める機会があるので、いま杉浦さんがおっしゃったことはとてもよく理解できます。ハッカソンというのは、ベンチャーのスタートアップや新規事業の立ち上げと似てるなと。まず期限内にMVP(Minimum Viable Product)を作ることが重要で、審査をしていると、どうでもいいところに時間をかけて肝心なものが動いていないというケースをよく見受けられる。
 
だからいま杉浦さんがおっしゃった「コツ」というのは、実はビジネスを起こす上で普遍的な能力なんじゃないかと思います。イベントで勝つという目的を通じて、杉浦さんはそれを知らず知らずに体得されていたのかもしれませんね。

杉浦

それで、あるハッカソンのマッチングイベントに参加した際、トークノートと出会って「CTOを探している」と声をかけていただき、折角のご縁でしたしお世話になろうかなと。

及川

杉浦さんは以前シンプレクスにいらっしゃった時、マネジメントの経験はお持ちだった?

杉浦

はい、シンプレクスでは最大で30名ほどのチームをマネジメントしたことはあります。

及川

エンジニアは、どちらかといえばマネジメントを嫌がる傾向にあると思うのですが、杉浦さんは人の管理などコードを書く以外の仕事が増えることついてはどうお考えでしょう?

杉浦

正直、シンプレクスにいた時は「自分がコードを書いたほうがパフォーマンスを出せるのに」と思っていました。でもトークノートに移ってから考え方が変わりましたね。
 
ヒト・モノ・カネに乏しいなかでサービスの価値を最大化していかなければならない。そうなるともう手段などこだわっていられない。いまこの瞬間、ベストを尽くすため何をすべきかをゼロベースで考える姿勢が身につきました。NewsPicksに入ってからもそうです。
 
いまやるべきは「ビジネスパーソンに質の高い正しい情報を届ける」ことに尽きるわけで、そのためには何でもやるというスタンスに立っています。私一人でできることに限界があることもわかってきたので、優秀なメンバーに任せたほうが目指す世界にいち早く近づけるといまは思っています。

明治時代に福沢諭吉が成し遂げたことの「21世紀版」をこれから創りたい。

及川

前職でCTOという立場にいながらも、敢えてNewsPicksに移籍された。このあたりの経緯を教えてください。

杉浦

端的に言えば「自分が本当にやりたいことが実現できそうだ」と強く思ったからですね。実はシンプレクスに在籍していた時から、ずっと個人的に感じていたことがあったんです。
 
私がシンプレクスに入社したのはちょうどFXの黎明期で、メディアが「FXは儲かる」と囃し立て、普通の主婦の方などが大金を投資して損をする場面をたびたび目にしてきました。あまりに情報が一方的で偏っていて、こんな状況はおかしいと。
 
その後、SNSが台頭し、個人が情報を発信できるフェアな世界が訪れるかと思ったのですが、先の米国大領領選でフェイクニュースが飛び交ったように、実はSNSも危ういことがわかってきた。
 
いまの社会には、中立で正しい情報、多面的な情報を提供する場がないという問題意識をずっと抱いていて、NewsPicksはまさにそれを解決することを目指しているように見えた。ここなら自分のやりたいことを重ね合わせられるんじゃないかと、NewsPicksへの参画を決心したのです。

及川

社会に対して抱かれていた問題意識を解消する場として、NewsPicksへの参画を決めれられたということなのですね。
 
では、いま杉浦さんが担っているCTOというポジションについても話をうかがいたいのですが、CTOの定義は企業によって異なるように思います。杉浦さんが考えるCTOとはどのようなものでしょう?

杉浦

CTOには“テックリード”と“プロダクトオーナー”と“エンジニアリングマネージャー”の3つの役割があると考えています。
 
本来はそれぞれに責任者を置いて3名体制で臨むべきだと思いますが、いまは私がその3つを行ったり来たりしているのが実情です。当社の場合、たとえば新しいサービスを立ち上げる時など、エンジニアや編集者、デザイナーなどによるタスクフォースを組み、そこでいちばん想いの強い人間がプロジェクトをリードする感じです。

及川

御社の場合、タスクフォースが事業を動かすキーになっているのですね。どのようにプロジェクトが進められているのか、何か具体的な例を挙げて説明いただいてもよいですか?

杉浦

たとえばアドサーバーを内製した時は、私とSPEEDA(企業・業界情報プラットフォーム)を開発した竹内(秀行氏)のテックリード2人で2カ月間、シェアオフィスに籠って作り上げました。
 
また最近、LivePicksを立ち上げた時は私がプロダクトオーナーを務め、編集長の佐々木や動画クリエイター、デザイナー、そしてエンジニアたちとタスクフォースを結成。みんなで「どうすれば面白い経済ニュース番組が作れるか」という議論を重ねて1か月半で作りました。
 
そこから得たナレッジをもとに、少ないリソースでもプロジェクトを成功させられるような体制を今後築いていきたいと考えています。

及川

ナレッジマネジメントが今後のテーマだというわけですね。言語化できないナレッジを社内にどう展開していくか、なかなか難しい問題です。

杉浦

おっしゃる通りです。
 
たとえばPDCAを回して抽出した具体的な課題に対し、解決策を出すのはエンジニアはみな得意なのですが、一方「いままでにない面白い経済ニュース番組を作る」という抽象的な課題を解くのは、けっこう苦手な人が多い。
 
それを切り拓く力になるのは、我々が掲げる「経済情報で、世界をかえる」というミッションにどれだけ共感しているかいうこと。現状のメディアに対して素直に「ここがおかしい」「こうすればユーザーのためになる」と思う気持ちが新たなサービスを生み出す源だと思いますし、それを社内で大切にしていきたいですね。

及川

新しいエンジニアの採用にもいま力を入れているとうかがっています。御社はどのようなエンジニアにとって魅力を感じられる環境とお考えでしょうか?

杉浦

先ほど触れた「経済情報で、世界をかえる」というミッションに共鳴いただける方であれば、本当にやりがいのある仕事を堪能できると思います。
 
もともと我々の事業はニュースアプリからスタートしていますが、最近では“アカデミア”という「リーダーの教養」をコンセプトにした新しい有料サービス(月額5000円)もスタートしていますし、またビジネスパーソンに向けた求人サービスも展開しています。
 
一見するとばらばらのようですが、「経済に特化している」という軸はぶらさないという点と、我々がよく引き合いに出すのは、これは「福沢諭吉の3大事業」に通じているということです。
 
福沢諭吉は、時事新報というメディアを作って情報発信し、慶應義塾大学という教育機関を作ってリーダーを養成し、さらに交詢社という社交場を設けてビジネスパーソン同志を引きあわせるなど、こうした偉大な事業を通して明治時代の発展の礎を築きあげました。その「21世紀版」を我々は立ち上げていきたいのです。
 
デジタルで新たなニュースメディアを作り、アカデミアという常に知識をアップデートでき、ビジネスパーソンにとっての教養を育む場を作り、そして身につけた知識を活かせる新たな就業機会も求人サービスを通して提供していく。
 
こうした取り組みによってビジネス界全体をさらに活性化させたいというのが我々の意志であり、そこに共感してくださる方をぜひ仲間としてお迎えしたいですね。

及川

お話をうかがっていると、本当に壮大なミッションを掲げていらっしゃるのですね。

杉浦

ミッションが大きいほうが、技術的な困難を乗り越えられると思うんです。
 
かつて人類は月に到達しましたが、その夢をかなえるために当時の技術者たちはロケット技術を究めた。けっしてロケット技術があったから月に行こうと思ったわけじゃない。実現したいことがあって、そのスケールが大きければ大きいほど、達成するためにいろいろなことを必死で考える。
 
ミッションを追い求めることで新たなブレイクスルーが起こると思うんですね。たとえばいまVR・AR、AIなどの新しいテクノロジーが注目されていますが、単にそれをキャッチアップしようとするだけではブレイクスルーは生まれない。まだ世の中にないモノを創り出すためには、やはり高い志や夢を抱くことが大切だと思っています。

及川

心に響くいいお話です。ビジョン・ミッションの実現に軸足を置き、テクノロジーと向き合いたい方にとって、御社はとても刺激的でイノベイティブな環境だということが良く理解できました。本日はどうもありがとうございました。

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