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INTERVIEW

INTERVIEW 035

2025 Aug 21

ユーザーを徹底的に観察して埋もれた課題・価値を洞察。
個人がお金の悩みから解放される、そんなプロダクトを創る。

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PROFILE

株式会社スマートバンク プロダクトマネージャー 稲垣 慶典 氏

新卒でDeNAに入社。ソーシャルゲームのプロデューサーからキャリアをスタートし、ヘルスケア領域の新規事業の立ち上げなどを経験。その後、医療系スタートアップを経て、2024年1月にスマートバンクに入社。現在、「ワンバンク」の家計管理に関する領域を担うミッションチームの事業責任者を務めるとともに、プロダクトマネージャーとして新たなサービスの開発にも力をふるう。

既存の金融サービスの高解像度で捉え、まだ手が届いていない課題を解決。

及川

まずはスマートバンクという企業についてご紹介いただけますか。

稲垣

スマートバンクは、かつてフリマアプリの「フリル」を開発したメンバーが2019年に立ち上げたスタートアップで、フィンテックのスマートフォンアプリ「ワンバンク」を提供しています。この「ワンバンク」は、簡単に言えばコンシューマー向けに家計管理や決済、あと払いなどの金融サービスを提供するアプリです。2025年の3月まで「B/43」という名称でしたが、より多くの人に馴染んでいただけるよう、大規模なアップデートのタイミングで「ワンバンク」というわかりやすいサービス名に変更しました。

及川

スマートバンクの現在の組織や事業の規模についてお伺いしてもよろしいですか。

稲垣

現在、正社員で70名弱、その他の雇用形態の方も含めると80名ほどの組織です。スタートアップのフェーズとしては、2024年にシリーズBの資金調達を実施し、次のシリーズに向けて動いています。事業の規模感についてご説明すると、「ワンバンク」はリリース3年で100万ダウンロードに到達しました。その後も順調に伸びていてそろそろ200万ダウンロードが視野に入っています。この「ワンバンク」は決済サービスも提供していますが、毎月二桁億円のトランザクションが生まれており、めきめきと利用額が増加している状況です。

及川

コンシューマー向けのフィンテックの領域は競争が激しく、特に「ワンバンク」のような機能を提供している競合プレイヤーは多々存在しています。そんななかで「ワンバンク」の強みはどこにあるのでしょうか。

稲垣

おっしゃる通り、この領域は競合プレイヤーが多数存在しています。しかし、それぞれの領域を少し解像度を上げて捉えてみると、実はまだ解決されていない課題や捉えられていないニーズが多く存在しています。そうした課題やニーズを見つけて価値を生み出すことに、我々のプロダクトの特異性があると考えています。たとえば決済の領域で言うと、我々が提供する主力プロダクトのひとつに「ワンバンク ペアカード」があるのですが、これは一つの口座に対して二枚の専用プリペイドカードを発行し、二人でこのバーチャルな財布を共有できるというもの。この説明では、いわゆるクレジットカードの家族カードをイメージされるかもしれませんが、実は家族カードの多くは婚姻関係がなければ発行できなかったり、あるいはカードの契約者しかアプリを閲覧できなかったりするんですね。一方、我々が提供する「ワンバンク ペアカード」は、婚姻関係がなくても利用可能であり、二人とも同じアプリを見ることができます。まさに同じ財布を使う感覚で、お金の出入りも透明なので、同棲されているカップルの方々に支持いただいています。

及川

御社の特徴がよく理解できました。それでは、稲垣さんご自身の自己紹介もお願いできますか。

稲垣

いま私はスマートバンクのひとつのサービス領域の事業責任者と、この領域でのプロダクトマネージャー(PdM)を務めています。「ワンバンク」は一個のアプリですが、実はその中で先ほどお話しした「ペアカード」のようなサービスを複数展開しており、サービス領域ごとにミッションチームという事業体を設けています。私は「家計管理」の領域のチームを率いつつ、プロダクトマネジメントも担っています。
スマートバンクに入社する以前の経歴をお話ししますと、新卒でDeNAに入社し、ソーシャルゲームのプロデューサーからキャリアをスタートしました。そこでプロダクトマネージャー的な仕事を経験し、他の領域でも同じような動きで新しいサービスを開発してみたいと、社内異動してヘルスケアの領域に関わることに。そちらで新規事業開発などに携わり、ゼロから事業を起ち上げる面白さに魅せられ、医療系のスタートアップに転身してPdMや事業責任者を経験した後、スマートバンクに参画しました。

及川

ヘルスケアの領域から、まったく毛色が異なるフィンテックの領域に転身されたのは、どのようなお考えからですか。

稲垣

実は私自身、事業ドメインにものすごくこだわりがあるわけではなく、どちらかと言えば多様な領域でプロダクトづくりに挑戦してみたいタイプです。私の原体験は新卒で経験したゲーム開発を通じた「ものづくり」であり、それを非ゲーム領域で生かしてみたいという思いがあります。これまではヘルスケア領域でその思いをかなえてきましたが、今度はフィンテック領域を手がけてみたくなったという感じでしょうか。

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サービス領域ごとのミッションチームが、パーパスに沿ってプロダクトを開発。

及川

先ほど、御社ではサービス領域ごとにミッションチームを設けられているとのお話でしたが、そこではどのような体制でプロダクトを創っていらっしゃるのか、稲垣さんがリードしている「家計管理」のミッションチームを例にとってご紹介いただけますか。

稲垣

私が率いている「家計管理」のミッションチームは、現在の当社の主力であるため少し大所帯になっており、ミッションチームの枠組みの中に2つの開発チームが包含される形になっています。その2つの開発チームにそれぞれPdMが存在し、ひとつは私が兼任しています。そして各開発チームにサーバーサイドエンジニアやモバイルエンジニア、そしてプロダクトデザイナーが所属する体制になっており、他領域のミッションチームも同様です。同時にミッションチームはある種、事業組織に近い概念で機能しているため、プロダクトマーケティングやプロダクトPRのメンバーもチーム内に所属をしています。

及川

プロダクトの開発の進め方についても教えていただけますか。

稲垣

ミッションチームの中で引かれたロードマップに合わせて、開発チームがそれぞれさらにミッションを持ち、そのミッションに基づいてPdMがロードマップを引いて開発しています。特にいまは「家計管理」という領域を急速に立ち上げているフェーズなので、およそ1.5カ月から2カ月ぐらいのサイクルで企画、実装、リリースしていくサイクルをぐるぐる回しています。

及川

わかりました。ちなみにスマートバンクにおけるミッションチームは「家計管理」の他に何があるのでしょうか。

稲垣

「家計管理」の他に、ローンやあと払いに関わるサービスを創るミッションチームと、新規事業立ち上げを担うミッションチームがあり、この3つがいわゆる事業系のミッションチームになっています。これに加えて、カスタマーサポート(CS)と連携しながらユーザー体験を高めていくミッションチームと、決済に関する不正対策を行うミッションチームがあります。

及川

いまのお話を伺うと、御社は組織がきちんと分かれていて機能的である一方、全体の足並みを揃えるのが難しいのではないかという印象もあります。どのようにプロダクト開発の整合性をとられているのでしょうか。

稲垣

確かにそれは難しいポイントであり、まだ試行錯誤している段階です。まずはプロダクト全体が3~5年後に目指す方向性を弊社のCXO(Cheif Experience Officer)のtakejuneがビッグピクチャーとして描き、それをある種のノーススターとして各チームで目指します。それに加えて、各ミッションチームに所属するPdM、プロダクトデザイナー、エンジニアが、職能ごとにミッションチームをまたいで横串で情報共有を密に行うことで全体の整合を図っています。

及川

質問が前後したかもしれませんが、そもそもスマートバンクはどのようなミッション、ビジョンを掲げていらっしゃるのでしょうか。

稲垣

ミッションは「お金を『使う』『貯める』『増やす』を誰もが当たり前にできる未来をつくる』ことであり、さらにその上位概念として「人々が本当に欲しかったものをつくる」というパーパスを掲げています。私たちが携わる金融領域では、解像度高く「ユーザーが本当に欲しいものはなんだろう」ということを突き詰めると、まだまだ拾いきれていない課題や埋もれてしまっている価値がたくさんあります。
それを見つけ出してプロダクトをつくり、多くの人々への価値提供につなげていきたいという思いが根本にあり、それがこのパーパスに表現されています。

及川

御社のPdMのなかには金融未経験者の方もいらっしゃるのでしょうか。

稲垣

はい。当社にはいま私を含めて6名のPdMが在籍していますが、最近入社した1名を除き、私も含めてみな金融未経験です。ある種、新参者の視点で本当の価値を捉えることに挑んでいるPdMチームだと言えるかもしれません。

及川

みなさん金融のドメイン知識はどのように獲得されているのでしょうか。

稲垣

社内のほとんどのメンバーは金融未経験ですが、実は金融を究めている専門家も抱えておりまして、そうしたメンバーを中心にドメイン知識を根付かせていく取り組みを継続しています。必要な知見を得るためのドキュメントの整備や、独自の研修プログラムなども設けてキャッチアップをサポートしています。

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独自の「Think N1シート」によってユーザーリサーチドリブンを徹底。

及川

スマートバンクにおけるプロダクト開発について、もう少し詳しくおうかがいします。どのようにプロダクトが起案され、どのようなプロセスで形になり、ユーザーの手元に届くまでの一連の流れを、何か具体例を挙げてご紹介いただけますでしょうか。

稲垣

いま私が手がけている「家計管理」の領域を例にお話しします。
まずはターゲットを細かく定義し、そうした人たちに向けた半年後実現したい体験を考えます。それに向けてロードマップベースで重点テーマを設定し、テーマごとに1.5~2カ月のサイクルで開発を実行しています。
具体的な事例として挙げられるのが先日リリースした「AI支出チェッカー」です。プロダクトのミッションとしては、家計管理があまり得意ではない人、過去に家計簿アプリに挫折してしまった人に向けて価値提供していくことを掲げています。
家計管理によく見られる傾向なのですが、自分の支出状態の良し悪しを、設定した予算内に収まったか否かの0か1で判断しがちなんですね。家計管理の初心者の方が最初から目標予算内にきれいに収めることはなかなか難しいでしょうし、予算オーバーが続くことで挫折してしまう。
こうしたユーザーの心理や行動をリサーチして把握し、たとえ予算を超えても挫折しない、ポジティブに受け入れられるような体験はないかというテーマ設定のもと、プロトタイピングを重ねて開発したのが「AI支出チェッカー」です。
これは、ユーザーの価値観で、自分に本当に必要なものであればGood、自分にとって無駄遣いであったものはBadと評価し、それをAIが学習することで、ユーザーの価値観に合わせて支出状態の良し悪しを判断してくれるというもの。こうしたユーザーの挫折ポイントを克服するような機能を、仮説と検証を繰り返して次々と形にし、実現すべき価値提供を追求しています。

及川

いま御社でPdMの方々が共有されているプロセスや、あるいは共通して使用されているフレームワークやツールはございますか。

稲垣

それに関しては特徴的なものが2つありまして、ひとつはユーザーリサーチドリブンでプロダクトを創るというプロセスを重んじていることです。そして、もうひとつが当社独自のツールである「Think N1シート」を必ず作成してプロダクト開発に臨むことです。「Think N1」というのは我々のバリューの一つであり、「対話と分析を重ねて、本当に重要な課題を発見しよう。大きな成功から逆算して、チャレンジを続けよう。」という意志を謳ったものです。それを体現するためのツールが「Think N1シート」で、リサーチから要件定義を行うフェーズにおいて、解決課題と提供価値を言語化するための穴埋めフォーマットが用意されており、必要事項を記入することで課題仮説と価値仮説を立てることができます。これらの仮説をユーザーインタビューを通して検証し、実現すべきことを明確にしたうえでプロトタイピングに入っていきます。
(「Think N1シート」について詳しくはhttps://blog.smartbank.co.jp/entry/thnink-n1

及川

プロダクト開発の方法論もユニークでいらっしゃいますが、御社はそもそもの着想も素晴らしいと感じています。冒頭にご紹介いただいた「ペアカード」も斬新であり、これに類するようなサービスがいま次々と生み出されているかと思いますが、既存の金融事業者が考えつかないサービスを発想するために、企業として大切にされていることは何ですか。

稲垣

やはりユーザーのことを徹底的に観察して深い洞察を持つことが、とても重要だと思っています。「ペアカード」のアイデアが生まれたきっかけも、もともとは1枚のプリペイドカードで提供していたサービスに対して、ユーザーから「もう一枚発行できないか?」という声が結構寄せられたからなんです。なぜそんなニーズがあるのだろうと、ユーザーの普段の生活スタイルを詳しく観察していくと、そこに埋もれていた課題が見えてきました。ユーザーのもとに深く入り込んでいくことが、いままでにない発想につながるのであり、我々はそうした姿勢を何よりも重視しています。

及川

稲垣さんはスマートバンクに入社される前、一社目のDeNAでもユーザーを知ることに徹底的にこだわって、新たなインサイトを得られていたのでしょうか。

稲垣

はい。当時のDeNAのゲーム開発の現場でも、ユーザーの声を聞きながら仮説を持つことを重視しており、ユーザーリサーチの環境も整っていました。その時に感じたのは、単に「面白い」「面白くない」という表面的な感想を聞いているだけでは、どこまでいっても良い体験を創ることはできないということです。そのユーザーがどんな価値観を持っていて、どこに刺さるポイントがあって、そもそもの価値観は何に起因しているのか。その人の普段の暮らしぶりから深く追求しないと良い体験を創れないと切に感じ、それが私のプロダクトマネジメントの基本姿勢になりました。新たなプロダクトを発想できるのは、別に先天的な才能など関係なく、打席にたくさん立つことができれば、自然と身についてくる能力だと思っています。

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PdMの「業務マップ」を策定し、体系的・段階的に成長をサポート。

及川

PdMの育成についてもお伺いします。御社に転職されてこられる方が、こちらでPdMとして成長していくための仕組みがあれば教えてください。

稲垣

入社される方のご経験にもよりますが、toCのプロダクト開発を熟知されている人であれば、当社の方法論に則って自由に仕事をしてくださいというスタンスです。そうではない方に対しては、入社後のサポートはかなり手厚く行っており、初期段階ではメンターのPdMが伴走しながら成長を支援しています。さらに、toCのプロダクトマネジメントはやるべき業務が多岐にわたっているので、最初からそれらをすべてマスターしてもらうのではなく、スコープを定めてキャッチアップしていく体制をとっています。当社ではPdMの「業務マップ」なるものを策定し、プロダクトの企画からリリース後までの一連のフェーズを横軸とし、各フェーズでPdMがやるべきこと列挙して明確に図式化しています。これをもとに体系的、段階的に経験を積んでいただくことで、toCプロダクトのPdMとして自走できるまでサポートしています。
当社は「ワンバンク」というひとつのアプリの中で、さまざまな金融ドメインのサービスを生み出して提供していく形態をとっているので、PdMとしては0→1、1→10、10→100のフェーズにすべて関われますし、またドメインもそれぞれ奥が深いので、ひとつの会社にいながらいろんなタイプのプロダクトマネジメントが経験でき、非常に充実したキャリアを形成できる環境だと思います。こうしてPdMとして大きく成長した先のキャリアとしては、ミッションチームを率いて事業責任を持つポジションへのパスもあれば、もちろん組織全体のマネジメント職に就くパスもあります。
(「業務マップ」について詳しくはhttps://blog.smartbank.co.jp/entry/2023/03/28/110000

及川

それでは、御社がPdMを採用するにあたって、どんな資質や能力を重視されているのか教えていただけますか。

稲垣

大きく二つあって、ひとつはプロダクトの価値最大化のために、いろんなことに果敢にチャレンジする姿勢を持っていることです。toCのプロダクトというのは、単純に機能開発を通じて価値を創るだけではなく、それをユーザーのもとに届けて、さらに市場の中で価値を拡大して収益につなげていくことが重要であり、広義のプロダクトマネジメントが求められます。だからこそ、マーケティングやマネタイズ、さらにはアライアンスを含めてプロダクトの価値を高めていく、そういった幅広いアクションに果敢にトライできることを期待しています。もうひとつは、我々が掲げるバリューである「Think N1」に共鳴し、それを体現していくことにやりがいを感じられるかどうか、この二つの観点からPdMの採用に臨んでいます。
当社の採用プロセスは極めてシンプルで、一次二次面接と最終面接で選考しています。最初の一次面接でPdMとしてのスキルやポテンシャルを確認させていただき、そして二次面接では当社へのカルチャーフィットをしっかりと時間をかけて見極めています。

及川

では、最後にこのポッドキャストをお聴きのみなさんへ、スマートバンクのPdMの魅力をあらためてお伝えいただけますでしょうか。

稲垣

我々が実現したいことは、個人がお金の悩みから解放されて、自分らしい人生を送ることができる、そんな方を一人でも多く増やしていくことです。
現状の金融サービスは、いろいろな機能がバラバラに最適化されて断絶されており、確かにそれぞれは便利ではあるものの、取りこぼしている価値も多い。その断絶を解消して、誰もが自然とお金を増やしていけるような世界をもたらしていきたいと考えています。それをかなえる金融サービスをこれから次々と生み出し、それらを接続させて、まだ誰も経験したことのないプロダクト体験を創っていく。
そうした未来を見据えると、現状のPdM組織ではまったくPdMが足りません。これからどんどん立ち上がっていく新たな金融サービスを、一国一城の主として裁量もって形にしていく。そして、それを多くの人のもとに届け、それが人々の生活に大きな影響を与えていく、まさにtoCプロダクトど真ん中の環境で力をふるっていく、そんなチャレンジを望む方がいらっしゃれば、ぜひ応募いただければと思っています。

及川

スマートバンクの魅力が大いに伝わるお話だったかと思います。稲垣さん、本日はどうもありがとうございました。

構成:山下 和彦
撮影:波多野 匠

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※インタビュー内容、企業情報等はすべて取材当時のものです。

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