多くの経営者が注目している「視座の高さ」
将来、経営者になりたいと考える方は少なくありません。弊社の登録者の中にも、「経営者を目指すために今から準備しておくべきことは何ですか?」というご質問をよくいただきます。
このテーマは、クライアント企業との会話でも頻繁に話題にのぼります。今回は、私が実際に幹部候補の面接に同席した経験をもとに、経営幹部に求められる資質について、特に「視座の高さ」という観点からお話を進めさせていただきます。
幹部候補の面接では何が見られているか
幹部候補の面接は、通常の面接とは異なり、経歴やスキルの詳細確認よりも、「どのような視点で物事を捉えているか」が重視されます。簡単な自己紹介の後は、候補者が自身の業界や事業について語り、そこからディスカッションが始まります。過去の苦労話や現在のチャレンジ、業界の構造的課題など、テーマは多岐に渡ります。
そして、ディスカッションの中で、経営者が特に注目するのが「視座の高さ」です。単なる業務視点ではなく、企業全体、さらには業界全体を俯瞰できるかどうかがポイントです。
面接に同席していても、候補者と面接官(経営者)の間で対等なディスカッションが展開され、話が盛り上がる場合は高確率で次のステップへ進みます。一方で、面接官(経営者)と比較するとやや会話の視点が低いかなと感じると次に進みません。
では、この視座の高い話が出来るようになるためにはどうすれば良いのでしょうか。
孫正義氏から学ぶ「視座の高さ」
経営者を目指す方にとって、「視座の高さ」は避けて通れないテーマです。
一つの事例ですが、先日、ソフトバンクの孫社長のお話を聞く機会があり、やはり孫社長は見ている世界が違うと感じました。
以下、実際のお話をもとに、視座の高さとは何かを考えていきます。
「最近、弊社はメディアで、タクシー配車アプリの会社を買い漁っていると書かれることがあるが、メディアは全く理解が出来ていない。我々がやろうとしていることは世界の交通インフラを押さえること。そして、世界の人の動きが分かるビッグデータを押さえることである」
「ビジョンファンドは10兆円の規模で、これはグローバルの全VCのファンド規模を超える。我々はベンチャー投資ではなく、世界のトップ企業に投資し、グローバルで連携させる。これからは群戦略である」
「ARM社の買収額は高すぎる言われることがあるが、この買収の意味はきっと数十年後に理解されるだろう」
プラットフォーム全盛の時代となり、winner takes all(勝者総取り)と言われるようになりました。孫社長には常人では見えないものが見えていて、未来を予測し、大胆な意思決定をされています。孫社長は日本を代表する稀代の名経営ですが、視座の高さが圧倒的に違うと感じます。
視座を高めるためにできる具体的アクション
話を戻すと、視座の高さを養う為には、目の前の仕事に忙殺されていてはなかなか鍛えられるものではありません。少し引いて俯瞰的に物事を考える癖をつける。海外に行って日本との違いを肌で感じる。本を読む。歴史を学ぶ。そして、本物の経営者との接点をたくさん持つこともとても有効だと思います。経営者になる為には、ファイナンス、マーケティング、マネジメント、人事・組織など、所謂実務的なスキルを高めることも大事ですが、それ以上に、最近は“視座を高く持つ”というのがとても大事だと思っております。
(2018年9月20日)