採用コラム

Column Vol. 11

転職エージェントの採用フォローテクニックとは?

採用フォローの重要性をお伝えすると「人材は頼み込んで来てもらうものではない」とおっしゃる経営者もいます。もちろんそれは正しい意見ですが、候補者をきちんとジャッジし良いことも悪いことも伝えた上で「一緒にやろう!」と本気を伝える採用フォローの重要性と矛盾するものではありません。「候補者に甘い顔をするとなめられる」という方もいますが、採用フォローは候補者へ甘い顔をすることではないのです。

バブル経済の夜明け前、私たちの世代が新卒で就職活動をしていた頃は、内定を出した学生を祇園の料亭に連れて行く会社がありました。そこまでやるのは行き過ぎで何の意味もありませんが、どれだけ企業側が相対的に強い時代でも、本当に優秀な候補者は数社で奪い合いになります。そういう人を本気で採用したいのであれば、「ぜひ採用したい」という情熱を伝えるフォローを経営者、人事の方にお願いしたいと思います。

一方、私たち人材エージェントでも候補者に対しきめ細かい採用フォローを行っています。複数の会社からオファーを受けて迷ったり、オファーが出たものの決断がつきかねていたりする候補者の背中を押してあげるには、いくつかのテクニックがあります。その方法を今回は二つご紹介しましょう。

(1)原点に立ち戻る
転職活動を間近でたくさん見ていると、意外と目先の事情に振り回される方が少なくありません。「給料が高い」「家から近い」「大企業だから」……。原点を忘れ、そんな目先のことを決定の理由にしてしまうのです。そんなとき、私はこう声をかけます。「ちょっと待ってください。そもそもあなたはなぜ、転職をしたかったんですか?」そして「今はやりたいことをやれない」「会社の将来性が疑問」など転職活動をはじめた原点に立ち戻った答えが返ってきたら、こう畳みかけます。「その視点から見て、今回の選択はいかがですか?」

(2)視界を広げる
目先の事情で振り回される候補者が多いと言いましたが、とくに給与の影響は大きく、他の条件に大差がない場合、A社が年俸500万円、B社が550万円の年俸を提示するとすぐB社に傾く方が多いのが現実です。しかし、給与は高くても転職活動の原点とずれている場合もありますし、生涯賃金で比べるとA社のほうが有利な場合もあります。また、給料には「見える給与」と「見えない給与」の二種類があります。前者はお金の報酬、後者はその仕事に就くことで身に付くスキルやネットワークを指します。「見えない給与はどちらが高いですか?」そう聞いて、候補者が見落としている要素に目を向けてもらうのも私たちの仕事です。要するに、候補者の方が本来の目的にかなった意思決定を行うための支援を私たちは行っているわけです。

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前回、ネットを使った機械的な「情報処理採用」によって候補者をフォローしない、魂のこもらない採用活動が広まっている現状について触れました。しかし候補者を入社に向けて本気で口説くフォロー活動なくしてよい採用はできません。情報処理採用と対極的な採用活動に、出身大学OBによるリクルーター制度があります。これはOBが出身大学の有望な学生に声をかけ、強力にフォローして採用していくやり方です。露骨に言えば、入社したい人より会社が採用すべき人を先輩・後輩の力関係を活用し、場合によっては他社からさらってでも採用するというもの。

その最たる例はバブル期の野村證券でした。メーカー志望の学生が野村證券に入社するということはありませんでしたが、当時の住友銀行や三和銀行など大手銀行を志望していた学生がOBに三日三晩口説かれ、野村證券に志望を変えたということがよくありました。リクルートの内定者が野村證券にさらわれたこともあります。証券不祥事を起こして以降は大きく採用手法を変えましたが、野村證券ではそうやって採った「採用すべき人」が今、幹部クラスに昇格し始めています。リーマン証券の買収という大胆な決断をやってのけたのはそうした人たちでした。このような採用活動の歴史を振り返って、採用フォローの重要性がよくわかります。

もう一つ、私自身が関わった採用フォローの強烈な実例について紹介しましょう。現在は株式を上場したある技術系ベンチャー企業A社が創業したばかりの頃、私は一人の人材を紹介しました。この方は当時、外資系金融機関勤めの30歳で、すでに名の知られた他のITベンチャーB社からもCFO候補としてオファーが出ていました。A社は高度な技術を保持していましたが、まだ社員は5名で業績も赤字。それでもA社の社長は「成長のためにどうしても必要な人材」と判断し、熱心にフォローをはじめました。「最先端の施設を見学に行こう」「東大の教授と面会するから一緒に行こう」などと週に一度は会う機会をつくり、その後は焼き肉屋へ行って酒食を共にしながら事業にかける夢を語りかけました。

また、B社からのオファーが年俸600万円で、自社の出す条件とはかけ離れていることを知ったA社の社長は会長と相談し、自分たちの役員報酬をそれぞれ100万円ずつ削って600万円にアップしたそうです。会社の実績やネームバリューを比べれば、当時はB社のほうがずっと上でした。しかしここまで熱心に口説かれた候補者の方は大いに悩み、3週間考え続けた結果、A社への入社を決断しました。それから3年後、A社は株式を公開するまでに急成長しました。候補者の方も社長の期待通り活躍し、今やCOOとして経営陣の一角を担い、次期社長候補の1人と目されています。

もし書類に書かれた条件だけで判断したら、この人は決してA社には入社していなかったでしょう。ところがA社の社長が何度も会って事業にかける情熱を伝え、自分の報酬を削ってでもオファーを出し、本気で必要としていると伝えたことで判断が変わったのです。経営者が強い情熱をもってフォローすれば、現在の身の丈とはかけ離れた人材でも採用できる。この事例はその証左になるでしょう。

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