経営陣は、CXO採用に本気でコミットしているか
CXO採用がうまくいく会社とそうでない会社を分ける最も重要なポイントは、経営者、経営陣が本気でCXOをはじめとする幹部採用に取り組んでいるかどうかにかかっています。
前回のコラムでも触れたように、ほとんどの会社が「採用は経営の最重要課題」といいますが、その言葉の実行には大きな差があります。
経営者が本気でCXO採用に取り組んでいる会社は社長もしくは採用担当の役員が、候補者との面接に貴重な時間を使って直接話をするのはもちろん、我々人材紹介会社とのミーティングにも熱心です。
例えば当社が採用のお手伝いをしているある会社では、毎月1回開催される我々とのミーティングに毎回、各事業領域の執行役員クラス以上の経営陣が10名以上参加されます。
このミーティングでは採用活動に関する我々からの進行状況報告や最新の市場動向の情報提供、先方からの「各分野で今、こういう人材が必要になっている」とのニーズ提示等が行われます。
執行役員以上という非常に忙しい人たちがなぜ、これほどの時間と労力をかけるのか。それは我々に対しプレッシャーをかける意味もありますが、何よりCXO採用に対し経営陣が本気でコミットしているからです。その結果、この会社には当社の紹介で入社し、執行役員以上になっている人材が4人います。
また、長年に渡り私たちとお付き合いのある別の会社では、退任された方も含めると10人の子会社社長が当社の紹介から誕生しています。こちらの会社も非常に熱心にCXO採用に取り組んでいます。
CXO採用に本気で取り組まない会社の裏側
CXO採用に経営陣が深くコミットしている会社は、採用力の高い会社が成長していくことを経営陣がよく理解しています。見方を変えれば、経営陣が本気で会社を成長させようとしている、ともいえます。
一方、「採用は経営の最重要課題」といいつつ、あまり実行が伴っていない会社は、我々とのミーティングに経営陣が参加することはありません。そもそもミーティングもあまり開催されず、「いい人がいたらお願いします」と人事担当者から依頼されて終わりだったりします。
「いい人がいたら」という依頼の場合、経営課題、募集背景、どのようなポジション・権限で何をお任せしたいのかが分からない為、アトラクトのストーリーも作れず、口説くネタも十分ではないので、結果的になかなかご紹介にも繋がらないという展開になりやすいです。
こうした会社は突き詰めると、本音では経営陣が会社を成長させたいとはそれほど思っていないのかもしれません。
また、CXOが務まるような優秀な人材が入ってくると、自分のポジションが脅かされる可能性もあります。「今せっかくいいポジションにいるのに、後から入ってきた人に追い越されたらどうしよう……」と不安になるわけです。
このような思考に経営陣が陥った会社では、せっかく優秀な人材が応募してきても積極的に採用しようとはしません。つまり、自分たちより優秀な人は採用しなくなるのです。こうなった会社は成長が難しくなります。
どの程度努力すれば「本気」と言えるのか?
「本気でCXO採用に取り組んでいるのに、なかなかうまくいかない」と悩む経営者もいます。しかしその本気がどの程度の水準かは、客観的に見直してみるとよいと思います。
あるスタートアップの経営者が、採用力の強さで知られる企業の社長にこんな相談をしたことがありました。
「CTOを採用したいがなかなか採用できません。どうしたらよいでしょうか」
「どのくらい候補者に会っていますか?」
「この1か月で5人会いました」
「全然足りません。まず50人会って下さい。私から見たら何もやっていないに等しいです」
本当に会社を成長させたい、変革したい。そのためのキーファクターは人材であると本気で思っている社長は、ここまで努力を惜しんでいないのです。この強烈な「本気」を知ると、経営者はCXO採用を人事任せにしている場合ではないことがわかると思います。
(2025年6月5日)