企業力を超える経営幹部を採用するには
コンサルタント 入江 祥之
公開日:2020年3月20日
スタートアップにおける経営幹部採用の重要性
このコラムを読んでいただいている方は経営幹部の方やポストコンサルの方が多いですが、このカテゴリーの方々はご自身のキャリアだけでなく、自社採用に課題を感じられている方も多いと思います。また、弊社では最近スタートアップベンチャーからの引き合いが多く、数年後のIPOやその後の更なる飛躍に向けて、COO、CFO、CTOをメインとした経営幹部の求人が増えております。また、スタートアップベンチャーは幹部の採用により事業成長のスピードを加速することができますし、逆に採用を誤ってしまうと会社全体に悪影響を及ぼすこともあるため、非常に重要な意思決定になります。今回はこのテーマについて、一つの事例を交えてお話させていただきます。
成功事例に見る経営幹部採用のプロセス
ある日、A社の創業者より連絡がありまして、10億程度の資金調達を終え、いよいよ本格的にIPOを目指すフェーズに入りましたので、ぜひ経営幹部の採用を手伝って欲しいという依頼がありました。同社は既に取締役が3名いらっしゃいましたが、本当に素晴らしい人材であればCOOとして迎え入れたい、ということでした。
同社の事業モデルや求人要件を聞いた時に私は真っ先に頭に浮かんだ方がいました。その方(Bさん)はA社の経営陣よりご年齢が一回り以上、上の方でした。しかし、大企業でのマネジメント経験に加え、直近ではIPO前のベンチャーで役員を勤められていて、ご経歴だけでなく、お人柄面も含めて自信を持ってお奨めできる方でした。
A社の創業者にBさんをご紹介したところ、非常に高い関心を持たれました。初回面談から取締役3名全員でお会いされることになり、A社の本気度が伝わってきました。
面談後にA社の創業者より電話がありまして、「Bさんは想像以上に本当に素晴らしい方で、是非経営幹部としてお迎えしたく、Bさんであれば社長やCOOのポジションを用意することも検討したいです。また、自分の株の一部を保有していただき、短期ではなく、本気で中長期でコミットしていただきたい。イメージとしては、グーグルは若き創業者2名(ラリー・ペイジ、セルゲイ・ブリン)での経営体制から、エリックシュミットをCEOに迎え入れて事業を飛躍させましたが、弊社のエリックシュミットになっていただきたいです。」とのことでした。
Bさんにも面談後の感想を聞いてみると、以下のフィードバックをいただきました。
「まず、面談後の即日にこのような連絡をいただけることがとても嬉しいです。また、今日は経営陣のビジョン、お人柄、事業のこだわりなどを聞かせていただき、非常に好感度は高く、今回の活動でセッティングしてもらった面談の中で、こんなに気持ちの良い1時間はなかったです。みなさん、とても真っすぐで、この経営メンバーと一緒に働くのはいいな、と素直に思いました。」
初回面談を経て、お互いに惹かれ合っていましたので、後は条件が折り合うかどうかが焦点でしたが、A社の経営陣で真剣に協議された結果、報酬に関してはBさんのご希望に合わせますので、Bさんに決めていただきたい、ということになりました。
Bさんはご自身の年収を決めるにあたり、同社の経営状況、事業計画などを詳細にヒアリングされました。外資系のマネジメント時代はA社の経営陣の4〜5倍の年収でしたので、ご自身の年収を決めるのに相当を悩まれましたが、最終的には現経営陣の2倍程度の年収+普通株(生株)、ポジションは取締役COOでサインされることになりました。
先日A社の創業者とBさんの3人で飲みに行かせていただきましたが、その数時間の中でも次々と新しい事業アイディアが飛び交い、将来の夢を語り合っておられました。
経営幹部採用がもたらす「夢」と「成長」
私は人材紹介の仕事をしていて、つくづく、経営者にとって採用は「夢」を与えるものだと感じております。特に経営幹部の採用はその後の経営に対するインパクトが非常に大きいので、採用の意思決定には覚悟とリスクが伴います。ただ、リスクのないところに飛躍的な成長もないと思います。
採用に「答え」や「絶対」はないですが、今後もこの奥深い採用に向き合っていきたいと思います。
(2020年3月20日)