Facebook
登録 (無料)
CXOキャリア・転職支援を申込む (無料)

決定者の声 株式会社カインズ
執行役員 CSO(最高戦略責任者) 兼 経営企画本部長
山田 英輔 氏

「自分経営」を常に意識して行動する。
それがCSOとして活躍するための近道。

公開日:2024年3月15日

株式会社カインズ<br>執行役員 CSO(最高戦略責任者) 兼 経営企画本部長<br>山田 英輔 氏

Profile

山田 英輔
1996年に日立製作所に入社。半導体事業における営業企画、経営企画、業務改革プロジェクトに従事。2004年、米国サンダーバード国際経営大学院にてMBA取得。2007年からの10年間は、スターバックス コーヒー ジャパンで、経営企画部長、業態開発部長、経営企画本部長として、ストラテジー、ファイナンス、新業態開発、新規事業開発を主導。2018年よりカインズに入社。

インタビュー写真1

Related articles

人々の暮らしを文化的で意義深いものにしたい。
そんな私の人生のビジョンを実現できる場を求めて。

カインズに入社されるまでの山田さんのご経歴をお聞かせいただけますか。

私は新卒で日立製作所に入社し、主に経営企画に携わっていました。その間に、米国に留学してMBAを取得し、10年ほど勤務した後にスターバックスコーヒージャパンへ転職。入社当時、ちょうど日本のスターバックスが創業10年を迎えたタイミングで、第二次成長をつくるという大きなテーマがあり、経営企画やファイナンスに関わって収益性の大幅な改善に貢献しました。その後、さらなる成長を目指して、新業態開発などを通したブランドのイノベーションを推進。最終的には経営企画本部長のポジションを務めました。そうしてスターバックスにも10年ほど在籍し、カインズに移っていま6年ほど経過しています。

スターバックスからカインズに移られた時、山田さんは40代前半だったかと存じますが、なぜ再び転職をお考えになられたのでしょうか。

スターバックスコーヒージャパンで10年間、経営企画や業態開発をリードするなかでスターバックスのブランドも完成形に近づきつつあり、ある程度成果を残せたという実感もあって、次のキャリアを考え始めました。また、グローバル基準での戦略づくりやブランドづくり、それを実現するためのファイナンスや組織設計なども優秀な経営陣のもとで学ぶことができ、40歳を過ぎた今、それを社会に役立てていくことが、これから自分が果たすべき責任ではないかと。また、私に大きな影響を与えたのが、スターバックスコーヒージャパンの創業者の角田雄二さんや、あるいは親会社のサザビーリーグの創業メンバーの方々。どんな志でスターバックスやアフタヌーンティーといったブランドを日本に持ち込み、それを広めるためにどんな挑戦をしてきたのかいう話を折に触れてうかがい、大いに触発されていました。私も先輩方のように、新たなブランドを作ったり、カインズのような将来に向けてブランドの伸びしろがあるような企業で自分がリーダーとして貢献していくことが、これからの10年で自分がやるべきことだろうと漠然と考えていたところ、クライス&カンパニーのコンサルタントの棚澤さんからカインズをご紹介いただいて入社に至りました。

カインズという企業のどこに魅力をお感じになられたのでしょうか。

端的に言えば、私と価値観が似ていたということでしょうか。最初の転職で日立製作所を離れる時、世の中を効率化すること、便利にすることを事業の目的とした仕事はもうやらない、と決めたんですね。単に自分の性格として興味が持てない。留学から帰国した後にそんな思いが強くなってきて、MBAホルダーが進みがちなコンサルティング業界などにもあまり興味が持てず、私がやりたいことは何だろうと思案を巡らせていたところ、それは人々の暮らしを効率化することではなく、文化的にして意義深いものにすることだと。スターバックスコーヒージャパンはそこにかなう企業でしたし、カインズも同じだと思ってます。

カインズに入社してから、山田さんは経営企画としてどのような取り組みをされてきたのでしょうか。

入社当時、カインズが関わるホームセンター市場は4兆円規模で頭打ちになり、日本の人口も消費も縮小傾向で、もはや従来の延長線上では成長を作り出せるフェーズではなくなりつつありました。小売業界内での競争もますます激化し、また、社会のデジタル化でお客様との接点も変化する中、とにかく懸命に改善やコストダウンして売上・収益性を維持するのが精いっぱい、という状況でした。そこで私は、現社長の高家と一緒に新たな中期経営計画において大胆な戦略を打ち出すことを掲げたんですね。平たく言えば、次代に向けてお客様の支持と競争力を作るために、いったん収益性を落としてでも大きな投資をしようと。その投資のターゲットは3つあって、店舗を改装しリブランドすることと、デジタル投資をして新たなリテールモデルを構築することと、新たな商品を生み出してカインズらしい品揃えを充実させていくこと。この3つの戦略にお金を張り、それを実行するための組織体制づくりもリードしました。また、そのようなカインズの変革が一定の軌道に乗り、更なる成長に向けた打ち手として、東急ハンズのM&Aにも戦略の組み立てや買収交渉から携わりました。
さらに、これも私の中では大きな成果だと思っているのですが、カインズのコーポレート部門を改革したんですね。法務や総務、財務といったコーポレート系の部門は、当時は、諸々管理するだけの事務屋だと社内で見られていて、本人たちもそう捉えていた節がありましたが、それでは会社の成長は作れない。単なる管理機能から、各部門発信で戦略や仕組みを作り、会社の発展に寄与していく機能だとコーポレート部門を再定義して、組織機能の拡充を図りました。現在は、もう自分が指揮しなくても、おのずとモチベーション高く行動する組織ができあがっており、私としてもうれしい限りです。

インタビュー写真2

Related articles

経営企画は、課題解決戦略の起案実行でしか成果を出せない。
現場の声から戦略を編み、経営陣を動かすストーリーを作る。

山田さんは、最初からCSOのポジションを確約されていたわけではなく、結果を出して評価されていまの立場に就いていらっしゃいます。経営企画というのは、なかなか成果が見えづらいと思うのですが、どうすれば評価を得られるのか、今後CSOを志す方々のためにもお考えを聞かせていただけますか。

シンプルに言えば、経営企画は文字通り、良い経営を企画することで成果が表れます。そこで認められないのは、経営企画の本分を果たしていないから。リアルな現場を想像すると、経営企画の業務の8割ぐらいは事務作業や会議運営に追われているのではないでしょうか。それを仕事だと思っていたら、成果と言えるのは出来上がった美しい会議資料以上でも以下でもない。本当に求められている経営企画というのは、その名の通り、現在の経営環境、顧客や競合の状況を捉え、見つけた課題に対してどのような手を打つべきかを起案することであり、そこが最も付加価値が出せるところだと思います。

そして、立てた戦略をいざ実行しようとすると、たいていお金が足りないとか、人がいないとか、いろんな問題があって、それを克服するために経営リソースを再配分しなければならない。そのためにファイナンスや組織をどう組み立てれば良いのかを考え、実際に社内を動かしていく。この戦略立案と戦略実行の2ステップに対してアクションしていなければ、当然成果など上がらず評価されないという話だと思いますね。
まだ若い方ですと、社内への影響力も乏しいので、そこにたどり着くのは難しいとは思いますが、いま経営企画のようなポジションにいらっしゃるのであれば、ぜひ果敢に戦略を起案して発信してほしい。若くても、現場の声を聞いて問題提起することは十分できると思いますし、経営陣もきっとそれを望んでいるはずです。

いま経営企画は「起案力」と「実行力」が求められるというお話をいただきましたが、外から入って社歴の長い経営陣が気づかないような課題を見出すのは、なかなか困難なようにも見受けます。山田さんはどうやって、それを見つけられているのでしょうか。

ひとつは、これまでの経験から、本質的な経営課題を見出すセオリーというのを自分なりに確立していて、非常にオーソドックスではあるのですが、ちゃんと顧客視点や競合視点で何かをやるべきかを考えるとか、そこから自社の課題をどう導き出すかというMBA的なアプローチは徹底するようにしています。それに、前職のスターバックスでグローバル基準の成長企業の経験から学んだ経営論を組み合わせて、いま事業に臨んでいます。
そういう基礎はありますが、やはり、課題を見つけて戦略を立てる上で最も大切なのは、他の経営メンバーや現場の声を聞くこと。『ここをこう変えればもっと会社が良くなる』という意見は誰もが持っていて、それを引き出して分析整理すると、おのずと3つぐらい大きな柱となる案が出てくる。私は人と話すのがとにかく好きで、現場のみなさんとコミュニケーションを重ねていくと、どの部署にも「事業をこう変えるべきだ」という自分なりの答えを持っている人がいて、そうした思いを持っている方々を仲間として信頼し膝詰めで話し、同志としてモチベートしていくことを心がけています。

戦略を実行していく上ではさまざまな制約もあると思いますが、それはどう乗り越えていらっしゃるのでしょうか。

確かに理想と現実のギャップに直面する事態は往々にしてあり、たとえばカインズにおいても、新たな中計を掲げるまでは、大型の投資は認められないという空気だったんですね。ただ、コストを切り詰めて事業を運営しているなか、経営メンバーにも「現状を打破する攻めに転じるべきではないか」と考えていた方はいらっしゃいました。でも、短期業績と中長期の成長のジレンマもあり、そのギャップをなかなか乗り越えられなかった。そこで、きちんと経営課題を特定して、それに対する戦略を立案し、必要な資金や組織をストーリー立てて提示することで、経営陣の合意や意思決定を後押ししたという感じでしょうか。戦略と組織、ファイナンスを有機的なストーリーとしてつなぐことを私は常に意識しています。戦略を戦略だけで終わらせず、組織やカネまでをつなぐストーリー化が、戦略を成果につなげる鍵だと認識しています。

インタビュー写真3

Related articles

大切なのは「自分を経営する」こと。ビジョンやミッションを明確にし、
それに沿って仕事に挑むことで、キャリアが豊かで楽しくなる。

山田さんは、ご自身が志していらっしゃった「人々の暮らしを文化的で意義深いものにする」ことを、まさにカインズで実践されています。山田さんのように自分の価値観に合った企業に巡りあうためには、どうすればいいのでしょうか。

その前提として、普段から「自分を経営する」ことをきちんと意識しておくべきだと思いますね。それは企業の経営と同じで、まずビジョンとミッションを掲げ、そのために行動を起こしていく。若い方々のなかには、それが明確になっていない人も多いように見受けられます。ビジョンやミッションを持たないまま、何となく世の中をサーベイして条件を細かく比較検討した結果、転職したはいいものの、まだ自分に合っていないという気持ちのまま、という状態では、十分な成果はだせないと思います。やはり、良い仕事をするための鍵は「自分経営」であり、その一歩目としてビジョン、ミッションをきちんと定めていれば、自分と価値観に合う企業の情報にはおのずと目が向くと思いますね。

いまお話のあった「自分経営」についてもう少し深くおうかがいしたいのですが、若い方はもとより、CXOを目指している方にとっても自分を経営することは重要なのでしょうか。

ええ、メンバーにもよく言っているのですが、自分を経営していない人に会社を経営することはできないと思っています。「自分経営」というのは、自分のビジョンの実現に向けて戦略を作り、そのための計画を作り、自分のエネルギーや時間、お金などを適切に投資して実行していくこと。それができる人は、「こんな世界を作りたい」という自分のビジョンを会社の中でも掲げるんですね。そのビジョンがあるからこそ、いまの会社が抱える問題点がクリアに見えてくる。ビジョンがある人のほうが、持っていない人よりも問題点がよく見えると思いますし、それを解決したいという動機も働いて、他の人よりも本質的な課題に挑む熱量が上がる。その会社のトップや株主からしてみれば、経営環境が激変している昨今、ただ足元のビジネスを改善するだけではなく、自分発信で「こんな問題があるからこんな戦略を作ろう」とか「ここに大きなチャンスがあるからこんなビジネスに挑戦しよう」と旗を揚げて経営に関与していこうとする人にやはりCXOを託したいでしょうし、その土台を築くのが「自分経営」だと思っています。

自分のビジョンやミッションを明確に掲げ、それを事業に即して実行していく「自分経営」というのは、普通の人にはなかなかハードルが高いようにも思います。

いえ、みなさん会社のなかで経営から下りてきたテーマに対して、「来期はどうするのか」と戦略や計画を考えていらっしゃると思うんですね。それと同じテンションで自分の人生を考えるということです。ビジネスを進める上では、きちんと戦略や計画を立てて遂行している優秀な方も、「自分経営」に関してはあまり意識せず、「これからのキャリアをどうしようか」「私の人生はこれでいいのか」とモヤモヤしている方が少なくない。会社にとってもその方の人生にとってももったいないことです。

優秀な方ほど、多くの仕事を任されて忙しく、なかなか自分のことを考える時間がないというジレンマも抱えているようです。

私は逆だと思うんですね。よく、仕事が忙しくて自分の将来考える時間がないという人がいらっしゃいますが、逆に考えてないから忙し過ぎるまま時間が経っているのではないかと。これは自戒も込めて言いますが、自分のビジョンをしっかりと考えて軸に据えていないと、やらされ仕事が増えるんです。自分のビジョンに沿ってやりたいことを発信すれば、上司から仕事を振られる前に自らイニシアチブを取って仕事を進めることができ、早く始めるから、結果として時間を作ることができる。自分で仕込んでいるので、この人とこの人にも一緒に協力してもらおうという組み立てもできるので、要は楽になるんですね。
それに、ちょっと損得勘定の観点でお話ししますが、社内での評価もやはり旗を揚げた人に集まってしまいがちです。その人の下で一生懸命実行しただけでは、努力した通りに報われないケースも多い。実際、会社に対して大きな付加価値をもたらすのは良い戦略を立案実行した人で、だから同じ仕事時間でも高いリターンを得る。そのように考えると、忙しさを言い訳にせず、「自分経営」で行動したほうが楽だし、ROIも高いというのが私の持論です(笑)。

ありがとうございます。それでは最後に、山田さんをご支援させていただいたクライス&カンパニーについて、どう評価されているかご意見をいただけますか?

これまでの私の話とつながると思いますが、クライスの棚澤さんは「志」や「価値観」という軸で私とカインズをマッチングしてくださったんですね。他の一般的なエージェントは、私がこれまで培ってきた経験やスキルをもとに企業を紹介いただくケースがほとんどで、実は他のエージェント経由で某有名アパレル企業などからもオファーをいただいていました。確かに素晴らしい企業で、好待遇で迎えていただけるとのことでしたが、正直、私としては心躍るオファーではなかった。というのも、スターバックスと同様にその企業もほぼ完成されていて、私のビジョンに沿った「ブランドを作り、伸ばしていく」という経験はできないように感じたのです。そんな折、棚澤さんからカインズをご紹介いただき、まさに私が望んでいたフィールドだと入社を決意しました。棚澤さんは、私との対話と通じて志や価値感をしっかりと理解していただき、その上で敢えてカインズをご紹介いただいたのと思います。それまで、カインズという選択肢は私の視野にはなく、棚澤さんとお会いしていなければこの縁もなかったので、本当に感謝しています。

構成:山下 和彦

撮影:波多野 匠

  • ※インタビュー内容、企業情報等はすべて取材当時のものです。

CXOのキャリア構築と転職を支援します。

CXOキャリア・転職支援を
申込む