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社外取締役というキャリアについて

コンサルタント入江 祥之

日々、経営幹部層の方々とお話ししていると、「これまでの経営経験を活かして社外取締役として貢献したい」「将来的に社外取締役のキャリアに関心がある」といったご相談をいただくことがあります。これまでの企業経営において一定の成果を残し、その知見を次世代や他の企業に還元したいという発想です。特に知名度のある企業での経営経験をお持ちであれば、自然と社外取締役や顧問として声がかかることも少なくないでしょう。
ただし、社外取締役という立場は一見華やかに映るものの、実際には「取締役」という肩書きが示すとおり、責任とリスクを背負うポジションです。その前提を踏まえたうえで、社外取締役というキャリアをどう捉えるべきかを整理してみたいと思います。

社外取締役に期待される役割

社外取締役に最も求められるのは、「経営アジェンダにおける問いを立てる力」です。経営会議の場で、経営陣が気づいていない論点を掘り起こし、「なぜ今それをやるのか?」「他に選択肢はないのか?」といった問いを投げかけることで、意思決定の精度を高めていく。ここに社外取締役の存在意義があります。
社内取締役はどうしても短期的な数値や現場対応に意識が向かいます。一方で、社外取締役はあくまで外部の立場から、高い視座とこれまでの経営経験を活かし、議論に深みを与えることが期待されるのです。

社外取締役に求められる経験・スキル・トラックレコード

もちろん、専門分野の知識やスキルは重要です。M&A、デジタル/DX、グローバル展開、法務、ファイナンスなど、それぞれの企業が直面する課題に応じて期待される専門性は変わります。
ただし、それ以上に大切なのは「経営の現場を担ってきた確かな実績=トラックレコード」です。単なる肩書きや年数ではなく、「この方なら自社の課題に対して本質的な問いを立ててくれるだろう」と周囲に信頼してもらえるキャリアであることが重要です。

具体的には、
• 大きな事業の立ち上げや再建に携わり、結果を残した経験
• 海外展開やM&Aなど、企業の将来を左右する局面での判断と実行力
• 財務・法務リスクに直面し、難しい意思決定をリードした経験
• 多様なステークホルダーと対話し、合意形成を図ってきた経験
こうした「修羅場をくぐってきた実績」が、社外取締役としての発言の重みを裏付けるのだと思います。

加えて、ガバナンス上は独立性と倫理観も必須です。経営陣と適切な距離を保ちつつ、株主や社会の目線で率直に意見を言える勇気が求められます。

リスク面も理解しておく必要がある

一方で、社外取締役は責任の重い立場でもあります。会社法上の義務に基づき、経営判断への関与は法的責任や評判リスクを伴います。特に昨今はコーポレートガバナンス・コードの強化により、社外取締役の責任は年々重くなっています。
実際、不祥事が起きた際に「社外取締役は何をしていたのか」と厳しく問われるケースも増えています。損害賠償を請求されるケースもあります。名誉職ではなく、自らの知見を真剣に投じる覚悟がなければ務まらないポジションだと言えるでしょう。

社外取締役を目指す方へのアドバイス

社外取締役は、経営幹部としてのキャリアの延長線上にある選択肢でありながら、「社会に知見を還元する」という責任を背負う役割でもあります。専門知識やスキル以上に、経営の修羅場を通じて培った問いを立てる力、そして信頼される実績がものを言うポジションです。

もし将来的に社外取締役を目指すのであれば、今のうちから「問いを立てる習慣」を意識して磨き続けることが大切です。さらに、自分ならではの専門性を軸にしながら、経営の現場で確かなトラックレコードを積み上げていく。そうすることで、「ぜひこの方にアドバイスをいただきたい」と自然に声がかかる存在になっていくのだと思います。

結局のところ、社外取締役というキャリアは「人から選ばれるキャリア」です。これまでの実績と人間性の積み重ねがそのまま評価されます。だからこそ、日々の意思決定や振る舞い一つひとつが、未来のキャリアに繋がるのではないかと思います。

(2025年9月22日)

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