採用コラム

Column Vol. 34

日本は大学成績に対する信頼感の低さが「大学生は学業に力を入れても報われない社会構造」になっている

なぜ大学生が勉強しない状況が、20年以上も放置されたまま続いてきたのでしょうか?これがここ数年の新しい現象であるならば、問題の根っこはそれほど深くない可能性もあります。ですが、20年以上も続いているとなると、どうも構造的な問題が潜んでいる可能性が濃厚です。問題の根っこは、どこにあるのでしょうか?

日本の大学教育に問題があることは、これまでも多くの方が指摘してきました。それらは、誰を「悪者」にするかという点で、大きく3つのパターンがあります。

1つ目は、大学生自身を悪者にするパターンです。
「ゆとり世代でやる気がない」
「大学進学率が高すぎて全体のレベルが落ちている」
などが代表的なもので、メディアがよく言う批判です。

2つ目は、大学を悪者にするパターンです。
「大学の先生は社会に出たことがないから現実がわかっていない」
「きちんと教える気がなく、ただレジュメを読み上げているだけ」
などが代表的なもので、こちらは主に大学生が持っている不満でしょう。

3つ目が「就職活動」、ひいては企業を悪者にするパターンです。
「就職活動が、大学教育を邪魔している」
「就職活動の早期化が学業を妨げている」
などで、これは大学の先生が好む批判です。

これらはいずれも、確かに物事の一面をとらえています。ですが、全体を見通せていない「偏った意見」だと言わざるをえません。

私は、日本の大学教育の問題は、学生・大学・企業の三者がお互いに影響を与え合う「構造」そのものにあると考えています。以下で、この「構造」について説明していきましょう。

 1.企業としては、大学の成績はあてにならないので、採用の参考にしません。
 2.学生としては、マジメに勉強しても「得」がありませんから、簡単に単位が取れる授業を選びます。
 3.先生としては、教育に真剣に取り組むと、自分の講義を選択する学生が減ります。それよりは、簡単に単位を与えるようにして、
   自分の研究に力を入れるほうがメリットがあるし、楽です。
 4.学生としては、簡単に単位をくれる授業も多いし、卒業だけなら簡単にできます。 
   やっぱり、マジメに勉強しても「得」がありません。
 5.(=1.)企業としては、大学の成績はあてにならないので、採用の参考にしません。

いかがでしょうか?見事な「負のスパイラル」が完成しています。
当事者全員が自分の利益を最大化した結果、「勉強しない大学生」が生み出されているのがわかると思います。

日本では20年以上前から、この負のスパイラルが「勉強しない大学生」を量産し、日本の国力を落としているのです。

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経団連の発表より就職活動の解禁時期が16年卒の学生から「大学3年生の3月」になります。

就職活動のスタートを遅らせることで学生が学業に専念する十分な時間を確保し、より学業に向き合ってもらうためなのですが、 果たして大学生は勉強や研究に力を入れるようになるのでしょうか?

皆様もご存知の通り、日本の大学生は勉強をしないと言われていますが、海外の学生と比べて具体的にどれくらい勉強時間が違うのでしょうか?

日本とアメリカの大学生の、1週間の「授業に関連する学習時間」を比較してみましょう。日本の大学生ですが、いちばん多いのが「1~5時間」で57%、次に「6~10時間」で18%です。驚いたことに、まったく勉強しない「0時間」の人も10%程度いますので、全体の85%が1週間に10時間以下の勉強時間ということになります。

一方アメリカの大学生は、日本と異なり、まったく勉強しない人はほぼ皆無です。また、日本では大多数だった10時間以下しか勉強していない人も約4割ですので、全体から見ると少数派です。逆に言うと、6割近くの学生が週に11時間以上、「授業に関連した」勉強をしていて、約2割の学生は21時間以上も勉強に費やしています。

日本の大学生が勉強に費やす時間が短いのは、どうやら間違いなさそうです。

でも、勉強の成果は、費やした時間だけで測れるものではありません。
私は、勉強の成果は、以下の掛け算で表すことができると考えています。

勉強の成果=①費やした時間×②授業の質×③真剣度

今までのお話は①費やした時間の国別比較でした。

次に②授業の質について見てみましょう。
首都圏の有名大学(一橋、早稲田、慶應、立教、上智)に通う3、4年生に、実際にどのような授業があるのか聞き取り調査をしてみたところ、以下のような回答が得られました。

首都圏の有名大学に通う3、4年生に聞いた授業内容の例
・毎回先生が教壇で自分の教科書を読んでいるだけ
・シラバスの内容とは関係のない自分の好きな話題をただ話している
・出席だけすれば60%の成績がもらえるのでただ座っていればいい
(単位が取得できる最低限の成績が60%)

もちろんきちんとした授業をしている先生もおられますが、こういった授業が首都圏の有名大学においてでさえあることもまた事実なのです。

最後に、③真剣度について見ていきましょう。同じ授業を受けていても、学生が真剣かどうかで、勉強の成果は大きく変わります。日本の大学生は、どれくらい真剣に授業を受けているのでしょうか。こちらも上記と同じように聞き取り調査を行ったところ、学生からこのような返答をもらいました。「授業の間6~7割の学生はスマートフォンをいじり、授業を真剣に受けている学生は前の方に座っている1割以下ではないでしょうか。」

以上の3つより今の大学教育と大学生の実態をご覧頂けたと思います。
しかしこれは今に始まったことではないのです。
皆様の大学時代を思い起こして頂ければご想像がつくでしょう。
大学生が勉強しない状況は、20年以上も前から続いているのです。

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