採用コラム

Column Vol. 14

3.11が企業経営に与えた影響とは何か?

先日、『論語』の勉強会に参加してきました。これは昭和政財界人の精神的指導者だった人物として知られる陽明学者の故・安岡正篤氏の孫が講師を務める塾で、朝7時から銀座で開催されるという少々参加のハードルが高いものです。ところが早朝のスタートにもかかわらず多くの参加者を集め盛況でした。

会場を見回してみたところ老若男女さまざまな人たちが参加しており、なかでも30歳代の男性が多く、女性も参加者の3割くらいを占めていました。MBAのように直接業務やスキルアップに役立つような勉強ではなく、わざわざ朝7時から論語を通じいかに生きるべきかを学びに来る人たちがこんなにもいるのだと感じた次第です。

東日本大震災以降、日本ではいろいろな面で変化が起きていますが、とりわけ人々の価値観の変化を痛感します。それはビジネスや会社経営においても例外ではありません。成長志向オンリーで勢いに任せて人を採用し規模の拡大に夢を抱く経営者より、世の中に対しどのように役立っていこうとしているのか、あるいはどんな価値を創出していこうとしているのかというビジネスの本質に立脚し、そこから社員をモチベートして組織を活性化しようとしている経営者が、少なくとも私のまわりでは増えているように感じています。

経営者が自分たちのあり方を見直し原点に立ち返ろうとする動きは日本だけではありません。京セラ創業者で現日本航空会長の稲盛和夫氏が主宰する盛和塾に参加している私の知人経営者によると、盛和塾はいまや中国でも開催されていて多くの中国人経営者が参加しているそうです。猛烈な勢いでお金持ちになった中国人経営者も経済的な成功だけでは心が落ち着かず、救いを探して稲盛哲学と出会う。すると中国では経営者と労働者の間には明確な一線があり自分と同様に従業員を幸福にするといった考え方は一般的ではないため、頭を殴られたような衝撃を受けるそうです。

少し前までは欧米流のグローバル資本主義が世界を席巻しましたが、リーマン・ショックに代表される経済の不安定化や格差の増大などを目の当たりにするにつけ、市場競争に対する過信はどうも間違いだったのではないか、という疑問が強まったように思います。

もちろんビジネスですから競争は非常に大切なのですが、その前に自分たちは何を目的として仕事をしているのか、もっといえば何のために生きているのかといったビジョンをきちんと考える必要があるのではないか。そんな潮流がリーマン・ショックの後から強まるようになり、3.11で決定的になったというのが現在の状況ではないかと私は感じています。すなわち、考え方や人格、心のあり方が重要視される時代に入ったのです。

こうした動きは転職市場にも影響を与えており、経営者は候補者がビジネス人生を賭けるに足るビジョンの提示と実践をできるかどうかが問われるようになり、一方で候補者も能力やスキルだけでなく人格や心を磨く必要が増してきています。

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採用フォローは内定を出した後に行うものと考えている人事担当の方が少なくありません。このように面接は企業が候補者をジャッジする場と思われがちですが、本当は並行してフォローも行う「ジャッジ&フォロー」の場です。

たとえば一次面接で人事課長が候補者とお会いしたとき、ジャッジしながら「この人は良い」と判断したらフォローも織り交ぜていきます。面接中のフォローとは、相手の興味に合わせた形で自社の内容をお伝えし候補者がシンパシーを感じる場面をつくり出す、あるいは候補者の質問に対し相手が知りたい方向性で丁寧に深掘りして答えていく、といったことです。次の二次面接、最終面接でも同様に人事部長や社長がジャッジ&フォローを行い、候補者の気持ちを高めていくことが重要です。

もし1時間の面接なら、30分である程度のジャッジはできるでしょう。当初はジャッジ8割、フォロー2割くらいの気持ちで面接に入り、良いと思えばジャッジ5割、フォロー5割くらいに気持ちの配分を変え、最後はジャッジ2割、フォロー8割くらいで終えるのが人事担当者の正しいあり方です。選考が終わり、採用が決まったら、配属部署で同僚になる予定の人たちと面談したり、トップや幹部社員と会食したりといったフォローをしていくことになるのが通例ですが、相手によっては逆にトップとの会食から採用プロセスが始まる場合があります。それは、転職市場にはめったに出てこないクラスの人材を採用するようなケースです。

以前、当社で大手メーカーの情報システム担当執行役員の方を、ある上場企業に紹介したことがあります。この候補者のように地位も高度な能力もある人は、通常のプロセスで採用するのは困難です。「面接を受けるということはジャッジされるということ。故に自ら応募はしたくない」という心理を持っているからです。そこで私はまず、経営幹部を求めていた上場企業社長との会食をセッティングしました。この社長は一代で上場企業を育て上げたワンマン経営者で、最初の会食で両者は意気投合。「この人が欲しい」と考えた社長はその後、社内のさまざまな部署の社員を同席させて会食を数回行い、最終的に採用が決まりました。会食が終わるたびに、社長は同席した幹部社員に「彼はどうだ?」と確認していたそうです。つまり、この社長は会食の形を取りながら候補者をジャッジ&フォローしていたのです。

私たちはこの事例のように、候補者によってはいきなりトップとの会食や社外での面談等をお願いすることがありますが、人事担当者のなかにはそれを嫌がる人もいます。でも、それではこの候補者のような人材は採れません。人事担当者の方が嫌がる理由はたいていの場合、セッティングした相手が社長の眼鏡にかなわないと後で怒られるからです。しかし、企業の将来に直結する採用は他のどの仕事よりもトップが優先すべき仕事です。「良い人がいたら無駄撃ちになってもいいから会わせろ、俺がジャッジ&フォローするから」というのが社長のあるべき姿で、それを実践していたのがリクルートの創業者、江副浩正さんでした。

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