面接官の本音 vol.128   株式会社Mellow

株式会社Mellow

公開日:2019.03.11

ビルの空きスペースと個性豊かなフードトラックをマッチングし、シェフのこだわり料理が気軽に楽しめる日本最大級のフードトラック・プラットフォーム「TLUNCH」など、モビリティの機動力を生かして「必要なサービスを」「必要な時に」「必要な場所へ」お届けするプラットフォーム事業を展開する同社。同社の創業メンバーであり、2018年11月より代表取締役を務める森口拓也氏にお話を伺った。

株式会社Mellow 代表取締役 森口拓也氏

Contents

【インタビュアー】コンサルタント 松永 拓也

自分の「やりたいこと」はいずれ変わっていくものだが、「嫌なこと」はあまり変わらない。

Q

まず初めに、森口さんが面接で感じていることについてお聞かせいただけますか?

森口

自分の「やりたいこと」を探している人が多いですね。それに対し、自分が「嫌なこと」って何だろう?という視点が抜けていると感じます。好きなことややりたいことは人生の中で変わっていくものですし、会社でできることもフェーズによって変化していくため、すべてが重なっていればもちろん最高ですが、そこにズレが生じていくと後でご本人が苦労することになります。そのため、面接では「ストレスを感じたのはどんな時ですか?」と聞くようにしています。恐らく苦手なことや嫌いなことは、そんなに変わらないものだと思うためです。

Q

なるほど。貴社の選考フローについても教えてください。

森口

当社の選考はかなり特殊かもしれません。まず初めのスクリーニングは外部に委託しており、今の当社のカルチャーに馴染んでいくプロセスの中で、周りを傷つけるコミュニケーションを取る可能性があるかどうかをその段階で判断しています。その後、雇用契約前のタイミングでオン・ボーディングに進み、スキルやカルチャーについてすり合わせをしていくという流れです。その後は、雇用形態(フルタイムが良いのか、週3日勤務が良いのか、アルバイトが良いのか等)を話し合って決めるという形ですね。

Q

そういったソフト面を判断するのは難しいのではないでしょうか?

森口

そうですね。分かりやすい例を挙げると、コップの水が半分入っているときに「もう半分しか無い」と捉えるのかどうか。物事を0か1でしか捉えられないタイプの方か、周りに不安を与えるコミュニケーションを取る方かどうかなどを見ています。そのジャッジは我々ではなく外部のエキスパートにお任せしていますが、その方がストレスを感じたエピソードを深く掘り下げて聞いています。今はまだ16名の組織なのでその条件も厳しく設定していますが、いずれ組織が大きくなってくるとその条件も緩和されると思います。

Q

現在の選考フローに行き着くまでには様々な紆余曲折があったのではないかと想像しますが、どのようなプロセスがあったのでしょうか。

森口

確かに、当初は通常の選考を行っていて、当社のカルチャーやスキルに合っているかどうかのジャッジをしていました。ただ、徐々に我々が求める要件を要素分解してケース分けをしっかりできるようになり、組織コミュニケーションが重要だという結論にたどり着いたのです。全社員で1.5時間のコーチングを11回受講する、ストレングスファインダーを活用する等、お互いの価値観を理解する取り組みを進めてきました。入社前のタイミングで1時間くらいの長い自己紹介をしてもらうというのもそのひとつです。その人の表面だけではなく、人生のコンテクストを知ると優しくなれるんですよね。これらの取り組みを2018年12月に体系化して、このように話せるようになりました。創業時から共に歩んできたエンジニア出身のメンバーと一緒に内容をブラッシュアップして、「これだ!」というものができあがったところです。

株式会社Mellow

「面接官」としてではなく、その人の人生にとっての幸せな選択について共に考える。

Q

森口さんにとって、面接とはどんな場ですか?

森口

「その人の人生にとっての幸せな選択が何なのか」を考える場ですね。

Q

実際の面接ではどんなことを聞いていらっしゃいますか?

森口

これまでの人生におけるすべての意思決定場面については、かなり深く聞いていますね。ただ、その決定に善し悪しは無いということはこちらからもお伝えしています。イケてる、イケてないというのは別に無いですよ、と。

Q

このコンテンツは「面接官の本音」ですが、森口さんのスタンスとしては「面接官」ではないということですよね(笑)。

森口

はい。皆さん大体初めは通常の面接とかなり違うようで動揺されますが、面白いと感じてくれるケースが多いです(笑)。

Q

過去にお会いされた方の中で、「この人はとても良かった」という例はありますか?

森口

これはお断りされたケースですが、人生について色々と考えた結果、プライベートな理由で関西に行くことに決めたという方がいて、自分としてはこの人といつか必ず一緒に働くだろうなと思えたことがありました。その方も他の企業であればこの理由を伝えようとは思わなかったそうですが、とことん向き合ったコミュニケーションを取ったことで、自然に伝えようと思えたそうです。オファーは断られたものの嬉しかったですね。今後、当社が関西進出することがあれば、ぜひその方に声をかけたいと思っています。

Q

素敵なお話ですね。それはつまり、その方との関わり方ということなのでしょうね。

森口

そうですね。しっかり双方のコミュニケーションが取れて、納得して結論が出せた時は嬉しく感じます。

Q

今の森口さんがどのようにして形成されたのか、非常に興味があります。

森口

以前から自分が理想とする会社をつくっていきたいと思っていて、レバレッジに対する強い執着が根底にあります。1やったことを100にも1000にもしたい。チャットアプリの会社をつくったときは、事業を効率良く成長させるためにはデータサイエンス領域を学ぶことが最適解だったのですが、Mellowでは業態が飲食という全くの別物であり、データ分析の知見をそのまま使うことはできませんでした。その時に色々と考えた末、人の思考に向き合い、様々な習慣をシェアすることが最もレバレッジを効かせられるのではという結論に行き着いたのです。組織オペレーションの最適化や、良いカルチャーをつくることが事業成長につながるということですね。
また、周囲のスタートアップの話を見聞きする中で、会社の成長と個人の幸福がリンクせずに不幸になるケースが多いと感じています。私はそこまで達成欲求が強い方ではなく、過去起業した会社がM&Aされたり、作ったアプリが数百万ダウンロード規模に成長したりもしましたが、それ自体に対して強烈な満足感を得るタイプでは無いんですね。それよりも関わる人達が幸せに生きられる組織をつくるとか、バリューを確立して長期的に社会に貢献していくとか、そういった「じんわりずっと嬉しい」みたいな価値観の方が合っているのだと思います。

Q

最後に、この記事を読んでおられる方にメッセージをお願いします。

森口

冒頭のお話と重なりますが、やりたいことだけでキャリアを探そうとするのではなく、自分の嫌なことと検討している会社でやっていくべきことが重なり過ぎていないか?という視点を増やした方がいいですね。それから、企業に入社することをゴールだと思わないで欲しいです。点から点への移動、つまり特定の企業から別の企業に移るという現在の転職の在り方に違和感があります。例えば今の仕事を少し見直したいなと思った時に、退職して他の企業に移るのではなく、週3日勤務に切り替えて他の日は別の環境で働いてみる。そしてその新しい環境が合っているなと思ったらそちらに移ってもいいし、やっぱり今の環境も良いなと思ったらそのまま残るといった柔軟な選択ができれば良いと思います。これは当社だけで変えられる話ではありませんが、そういう時代になっていくべきだと考えて仕組みづくりをしています。点から点への移動しかなく、転職がここまで重い意思決定になってしまっている現状で、苦しい思いをしている人は多いと感じているので、ぜひご自身にとって心地よい環境を見つけていただき、無理のない幸せな人生を送って欲しいですね。

インタビュアー / コンサルタント 武田 直人、コンサルタント 松永 拓也

構成: 神田 昭子

撮影: 出島 悠宇

※インタビュー内容、企業情報等はすべて取材当時のものです。

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