キャリアアップコラム vol.16
決断力と説得力

生きていると様々な決断をしなければならない場面が多いものです。ときにはその決断が他人を説得しなければいけないことに繋がることもあります。 さて、今回のケースは、コンピュータネットワークシステムの提案営業マンとして長年勤めた会社に行き詰まりを感じ、現状打破のためには転職しかないと考え、行動を開始したT氏についてのお話です。

T氏と初めてお会いしたのは、昨年の、真夏の暑さ厳しい頃でした。営業職として今まで常にTOPクラスの成績を残してきているという事前情報があったため、ある程度は予想していたことではありましたが、T氏の堂々とした態度には頼もしさを感じたのを記憶しています。

さて、そんなT氏から持ちかけられた相談内容はといいますと、

"今の会社ではそれなりに実績も出してきており、一定の評価を頂いているという実感もあります。でも、会社のTOPの方針についてゆくのに限界を感じ始めてきているんです。今までよく我慢してきたなというのが正直な気持ちです。"という答え。

そんな彼の表情はまさに苦しそうでした。現在までの10年間以上にわたり各種コンピュータシステムやネットワークシステムのインフラ系の営業で高い実績を残してきているT氏なので、彼を必要とする会社は結構あると確信し、私は早速具体的な求人案件をT氏に説明することにしました。

何社かお勧めする中で、T氏が最も興味を抱いた某外資系のシステムインフラ構築系のB社への応募を依頼され、早速アクションを開始することに。書類提出後まもなく、企業から書類選考通過のお知らせがあり、その後3度にわたる面接を無事に終え、遂に内定が出ました。条件面でも当初の予想を上回る好条件で、仕事内容も含め、まず文句なしに合意される条件が整ったことになります。順調に事が進み、T氏も一安心していることだろうと思っていました。早速、その旨ご本人にお伝えしたところ、当然T氏も素直に喜びを表し、是非このB社に無事入社できるよう、現在の会社での退職手続きにかかりますと力強い言葉を残したのでした。

それから週末を挟んで数日間が過ぎ、その後の退職手続きの状況を確認しようとT氏に電話とメールを入れるも、一向に返信なし。なんとなく不安がよぎりました。ようやくT氏から連絡がありました。こういうときの予感に限って当たるのは実に不思議なものです。

T氏の電話での声は心持ち暗いというか、すっかり元気がなく明らかに落ち込んでました。

"すみません・・"とT氏。 "どうされました?"と恐る恐る確認する私。

"実は、退職の意思を上司に伝えたところ、頑として受け入れてもらえないんです"

私は、こういうことはよくある事で、一度や二度の慰留説得に負けては転職などできないという事を経験上知っている私としては、

"Tさん、それは当然ですよ。今まで会社に大きな利益をもたらして来たTさんをそう簡単に会社が手放すようなことはしないでしょう。でも、それを乗り越えないと転職はできませんよ"と落ち着いてキッパリとお伝えしました。電話で話していてもなんですので、近日中にお会いする約束をして、とりあえず、この場は一旦電話を切ることにしました。

そして数日後、T氏がご来社されました。最初にお会いした時の颯爽とした風貌が別人かと思われるように沈んだ面持ちで、私も、これは相当参っているなと思いました。 "Tさん、結構辛そうですね。"

"はい、そうなんですよ・・・。あの後も再度上司に退職について切り出そうと試みたのですが、全く話を聞く耳すら持ってくれなくて、どうしたらいいのか。"

"Tさん、今までお世話になった今の会社に対する気遣いのお気持ち、すごくわかりますよ。また、一緒に仕事をしてきた上司にとってもかなりショックなんだと思います。そりゃ引き止めはしますよね、当然。" 更に私は続けて、"でも、今の会社がTさんを一生面倒見るという保証はありませんし、Tさんの進みたい方向はTさんにしか決められないはずだと思いますが、いかがでしょうか?" T氏は、"確かにその通りだと自分でも思います。ただ、何度も自分の意思を伝えようとしても、一向に話を聞いてもらえない状況にほとほと疲れてしまいました。"

採用この時点で、Tさんは明らかに諦めモードに入っているのを私は悟り、見た目にも本当にお疲れのご様子で、なんだか気の毒にさえ思えてきました。これ以上私が強く押すことは、Tさんを苦しめ追い込むことになるだけのような気がして、最後に、"Tさん、こうしましょう。最後にもう一度だけよくお考えいただき、もし今回のご縁がご自身にとって本当に選択すべき道だと信じるのなら、もう一度上司に強い意思をもって臨んでみてはいかがです?これを最後の努力として、ダメならご辞退ということにしましょう。"Tさんは、少し気が楽になったのか、かすかに明るい表情を取り戻し、"是非それでお願いします。"

数日後、T氏からご辞退の連絡が入ったのは予想通りでした。その後のT氏がどうされているかは全くわかりません

今回の教訓&アドバイス

今回のケースでは、今の会社に限界を感じ、転職を決意して活動を始め、見事希望の企業から内定が出たものの、最後の大仕事である退職という作業を乗り越えられずに転職を断念したケースです。結果的にT氏にとって良かったのか悪かったのかはわかりません。それはもっと後になって本人がどう感じるかという問題だと思います。ここで、言いたいことは、自分の人生を自分で決めていくのか、他人に決めてもらうのかという、自分の"意思"についてクローズアップしてみました。さて、読者の皆様は自分の人生を常に自分で選択しているといえますか?

このコラムを書いたコンサルタント
コンサルタント
奈良 元生
エグゼクティブポジション全般、オーナー系中堅成長企業。新規立ち上げ、事業企画系実績も多数あり。 プロフィールをみる

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