ホーム >  TURNING POINT トップへ >  山田 博 / 株式会社 森へ (Vol.11)

produced by Kreis & Company

Turning Point 転機をチャンスに変えた瞬間~ビジネスの現場から~

「感じたこと」を大切に生きる。 そんな志が、人生に力を与えてくれる。 「感じたこと」を大切に生きる。そんな志が、人生に力を与えてくれる。 : 株式会社 森へ 代表取締役 山田 博氏

株式会社リクルートに17年間勤務した後、プロのコーチとして独立し、その後、家族関係をテーマにしたNPO法人を立ち上げたり、自然と触れ合う体験を提供する事業を営むなど、ユニークな活動を数々繰り広げている山田氏。こうした生き方を選択したその背景と、これまでのターニングポイントを振り返っていただいた。
株式会社 森へ 代表取締役 山田 博氏

山田 博氏

1987年、東北大学教育学部卒業、株式会社リクルート入社。採用広告・教育研修の企画営業などに従事。自らが受けたコーチングで、人生の方向性を見出せたことをきっかけに、コーアクティブ・コーチングを習得。2004年、プロ・コーチとして独立。活動を始め、2005年に家族がお互いを育み合う関係を支援するNPO法人ファミリーツリーを設立。2006年からは、自然の中で自分を見つめ、感じる力を解き放つ「森のワークショップ~Life Forest~」を始める。2011年、人と自然、大地とのつながりを思い出し、ずっと先の世代までこの地球ですべての生命と共に平和に暮らす、という願いを込めて、株式会社 森へ を設立。ビジネス・リーダーや転機にある個人が自分の原点にふれる「森のリトリート」を開催している。

幼少期の経験が、いまのキャリアに大きく影響している。

山田さんは40歳を目前にリクルートから独立され、現在、コーチングの専門家として活躍される一方、家族関係を支援するNPO活動や、森と触れ合う体験を提供するビジネスを手がけられるなど、多彩な活動を繰り広げていらっしゃいます。山田さんはもともと昔から、こうした取り組みに興味をお持ちだったのでしょうか。
振り返ると、私にとって「家族」と「自然」というのは根源的なテーマだったと思います。私の実家は都内で小さな町工場を営んでいたのですが、小学校低学年の頃、オイルショックのあおりを受けて倒産してしまって……それで東京で暮らせなくなり、両親と兄弟3人の家族5人で栃木県の那須に移り住んだんです。そこから田舎暮らしが始まるのですが、生活も急に苦しくなって、学校でもかなりいじめられました。でも両親は生活のために必死に働いていて、私をかまう余裕などなかった。それで「お父さんお母さんが自分のことを守ってくれない」という絶望的な気持ちになって、身体を壊して半年ほど学校を休んだことも……当時は本当に辛かったです。両親に対する恨みのような気持ちも湧いてきて、関係もずっと冷めたままでした。が、30歳を過ぎて長男が生まれ、私も家族を持つとそうした心の傷も癒え、両親との関係も修復。やはり家族は安心できる居場所であってほしいという思いをずっと抱いていて、かつての自分のように家族関係で悩む人々の力になれればとNPO法人を立ち上げたのです。
幼少期の経験が山田さんのキャリアに大きく影響されているのですね。
はい。あともうひとつ、子供の頃の私を救ってくれたのが「自然」でした。先ほどもお話ししましたが、一時期身体を壊して学校に通えなくなっていた時、那須の大きな自然が自分を包み込んでくれました。森や林の中に入ると、何だかほっとしたんですね。親もかまってくれない状況だった私にとって「森の中は自分の居場所」という感覚でした。活火山で煙を吐いていた那須の山々の雄大な光景は、いまの自分の心の中に深く刻まれていて、思い出すたびに元気が出てきます。サラリーマン時代はそうした感覚が封印されていたのですが、30代の後半に再び「自然」に対する強い思いが湧き出してきて、森でのワークショップ活動などに取り組み始めました。
その後、学生時代はどのように過ごされたのですか?
小学生の頃は本当に辛い毎日だったんですが、私を見かねた父親が地域の子供を集めて野球チームを作ってくれまして、それがきっかけで立ち直りました。中学は野球しか記憶にないほど打ち込んでいましたね。あと、高校に入ってからは古典に興味を持って、「平家物語」や「徒然草」「方丈記」など日本の中世文学を読み漁りました。そこに描かれていたのは、無常の世界。私たちを取り巻く世界は常に変化していて、同じ状況はない。そんな中で人間はいつも生きてきた。だから、いまが良いからといって有頂天になっても意味がない。逆に良くないことも永遠に続くわけではない。今思えばそういう考え方が、子どもの頃からの経験もあいまって知らず知らずに私の心に沁みたんですね。
幼い頃に辛い思いをされて、そこから立ち直った経験をされているだけに、そうした無常の思想がより山田さんに響いたのかもしれませんね。
おっしゃる通りだと思います。結局、人生なんて良いこともあれば悪いこともある。であればいまこの瞬間にベストを尽くすしかない、という思想は今の私の生き方に大きく影響しています。