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Turning Point 転機をチャンスに変えた瞬間~ビジネスの現場から~

75歳まで、第一線で活躍する。そのスタートを、40歳で切る。 : 東京大学大学院経済学研究科 教授 柳川 範之氏 75歳まで、第一線で活躍する。そのスタートを、40歳で切る。 : 東京大学大学院経済学研究科 教授 柳川 範之氏

Special Interview
政府の国家戦略会議「フロンティア分科会」の報告書内で提言された「40歳定年制」。世間でも大いに話題となり、ご記憶の方も多いだろう。この大胆な制度改革案を掲げたのが、東京大学教授の柳川範之先生だ。この「40歳定年制」には、いまの30代40代の方々が今後のキャリアを考える上で重要なサジェスチョンがある。今回は、「Turning Point 特別編」としてクライス&カンパニー代表丸山貴宏が、柳川氏にお話をうかがった。

クライス&カンパニー
代表取締役社長 丸山 貴宏氏

大手就職情報会社の人事採用担当を約7年経験後、クライス&カンパニーを設立。前職からの候補者面談者数は10,000名を超え、その経験と実績に基づいたカウンセリングは業界でも注目されている。単に企業情報の提供に留まらず、「候補者の根っこのエネルギーを発掘する作業が我々の使命」がモットー。 1963年生まれ。

東京大学大学院 経済学研究科
教授 柳川 範之氏

1988年、慶應義塾大学経済学部卒業。1993年、東京大学大学院経済学研究科博士課程修了、博士号取得。慶應義塾大学経済学部専任講師、東京大学大学院経済学研究科助教授、准教授を経て、2011年より現職。研究分野は金融契約、法と経済学。主な著書に『日本成長戦略 40歳定年制』、『法と企業行動の経済分析』、『元気と勇気が湧いてくる経済の考え方』などがある。

40歳で、その後長く活躍できる
人材になるスキルを再び身につけるべき。

まずは、柳川先生が「40歳定年制」という考え方を提唱された背景をお聞かせいただけますか。
「40歳定年制」は、私自身、以前からずっと考えていたことです。その前提には、日本の将来に対する問題意識があります。そもそも私が関わった「フロンティア分科会」というのは、2050年に向けて日本がどんな社会であるべきかを検討し、将来像を示すことが主たる目的でした。我が国の未来を考えると、少子高齢化が進み、人口が逆ピラミッドになり、支える側が減って支えられる側が増えていくのは疑いようのない事実です。生産人口が減ると日本の国力が低下していく。それを回避するためには、高齢になっても皆が生産性高く働き続けられるような社会に変えていくしかない。しかし、企業が定年延長で支えていくのは構造的にもはや不可能。では、誰もが75歳まで元気に働けるようにするためには、どうすればいいのか。そうしたビジョンのもとに導き出されたのが、この「40歳定年制」なのです。
東京大学大学院経済学研究科 教授 柳川 範之氏
では「40歳定年制」の本来の意図はどこにあるのですか。
75歳までアクティブに働き続けるためには、時代の変化に合わせて、それに対応できるスキルをどこかのタイミングで身につけていかなければなりません。ですから、40歳ぐらいでそうした新たなスキルを獲得できるステージを設けるべきだというのが私の意見です。「定年」という言葉を用いたことでセンセーショナルに取り上げられましたが、これは40歳前後のタイミングで、その先30年40年と活躍できる人材になるための学びの機会をあらためて得られる社会にしようというのが、根本的な考え方なのです。

やはりこれからの時代は、40歳ぐらいで新たなスキルを身につけなければ生き残れないということなのでしょうか。
我々を取り巻く環境はこれからドラスティックに変化していくと思います。その最も大きな要因のひとつが、テクノロジーの進化。昨今、人工知能が急速に発展しており、これまで人間がやっていた仕事が、かなりの割合でコンピュータに置き換えられていく。相当な領域の仕事で、従来価値があると思われていたスキルが陳腐化していくと考えられます。テクノロジーの影響で、雇用にも大きな変化が起こる。ですから、今後はスキルを「ストック」ではなく「フロー」として捉えるべきなのです。たとえるなら、スキルというのは食事と同じで、食い溜めはできない。定期的に必要なスキルを摂取していかなければ、健康なキャリアを維持することは望めないのです。10年前20年前にきわめて高度なスキル教育を受けたからといって、それがいまも通用するような時代ではない。残念ながら、我々はその変化のスピードについていくしかないしかないんですね。時代遅れのスキルに固執して、その領域では能力が高まっているにも関わらず、気がつくと発揮する場が社会から失われていた、という事態も充分あり得る。それはあまりに哀しいことだと思います。